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とらいあんぐる おあ へきさごん  作者: 高槻
にぎにぎしい あき
38/51

28.ちがうもん

 文化祭の出し物は、うちのクラスは水ヨーヨー釣りに決まった。私は売り子のみの役割だったので、それほど仕事がない。絵心ないからポスターも描けないしな……。


「あ、忘れるところだったー。これ配って終わりなー」


 LHRもそろそろ終わるという時間、あぶねーあぶねーと言いながら文化委員が配布したのは、「西高美少女コンテスト☆投票用紙」と書かれた紙だった。

 そこには、自分の名前と推薦する生徒名を書く欄があった。説明書きによると一人一票で、上位五人が予選通過、文化祭最終日に外来を含めて投票してもらって、ミス西高を決定するらしい。


「昇降口前ロビーに投票箱が設置されてるから、今週中に投票してくれー」

「おい、お前どっちにいれる?」

「それが問題だ」


 深刻そうな顔で、男子が相談している。うちの学校は一年から三年まで可愛い人多いからなあ。悩むのもわかる。まあ、私は琴美一択なんだがな!




「なぜだ」


 その日、私は昇降口前ロビーで愕然とした。そこには「美少女コンテスト☆予選通過者」とデカデカ書かれたパネルが出ていて、どう考えても隠し撮りとしか思えない顔写真が五枚貼られていた。

 どうして隠し撮りだってわかったかって? だって、どれもこれも視線がどっか向いてるし、何よりなぜか私の写真が貼ってあったんだもの。


「あれー……私、撮られた覚えない……」

「ふふふ、私もだよ? ちょっとシメとこうか」


 今現在黒い笑顔を振りまいている琴美の写真ももちろんあって(これは可愛い、斜め上からの写真)、よく見ると私と一緒にいるときに撮った写真のようだ。


「わぁ肖像権侵害。やっちゃえ琴美。……じゃなくて! なんで私の写真まであるの!? 何、No.3って!!」

「本当よね。いっちゃんはNo.1一択だよね」

「ちがうううう! そういうことを言いたいんじゃないのおおお!!」


 なんで私が予選通過なんてしてるの!? 訳がわからない!!


「だってねぇ、いっちゃん可愛いし。私いっちゃんに入れたし」

「はい!?」

「先輩はもちろんいっちゃんに入れたろうし、よしくんも入れたよね。ね、よしくん」

「えっ!?」

「ああ、樹に入れた」

「ちょっ、なっ、なんでッ!?」

「なんでって、樹が一番可愛いからだけど」

「なッ!?」


 可愛い? 可愛い!? 一瞬あの花火大会のことを思い出して、ぼっと顔が熱くなった。

 混乱して何がなんだかわからなくなったけど。はっと思いつく。


「わかった! 琴美にほとんどの票が入ったから、身内票の私でも予選を通過してしまうという事態が発生したんだ! 得票数は少ないに違いない!」

「いっちゃーん、ここ見て。いっちゃんの得票数、九十八票って書いてある」

「うそだあああああああ!!」


 頭を抱えるも、琴美によって指し示された数字は確かにその通りで。


「なんなの……、どういうことなの……」

「だーかーらー、いっちゃんが可愛いって皆が認めてるってことだよ」


 はっはっはー、どうしても頭が理解することを拒否してやがるんだけど、私としては永遠に理解しなくていいと思うの。だってだって、中学生のころは非モテだった男と、ほぼ変わらない顔をしているんだよ? その顔が選ばれるわけないじゃない。


「いっちゃん、今の頭の中で考えてるつもりかもだけど、口からダダ漏れだよ。そしていい加減に諦めなよ。いっちゃんは昔から美少女顔なんだよ」

「はぅあッ」


 私、琴美により撃沈せらる。

 くっ……、今の一撃は効いたぜ……。

 で、でもでも、全然美少女じゃないから! そこだけは譲れないから!



 あ、ちなみに琴美の得票数は四一三票で、ダントツ一位でした。



 ■ ■ ■



 文化祭は二日に分けられる。初日は学内だけでの文化部の研究発表会と合唱コンクール。そして二日目の今日は、外来もOKで模擬店や各種イベントも行われる、世間一般で考えられるような文化祭だ。

 クラスTシャツに身を包んだ私たちは、最終打ち合わせのために一般立ち入り不可にされている待機教室に集まった。


「じゃあ売り子の持ち回りは決めたとおりに、間違っても遅刻すんなよ!」


 委員長の言葉に男子の幾人かが「お前がな!」と返して笑いが起きる。模擬店を出すのは初めてだし、なんだかワクワクするのは確かだ。

 楽しみになってきたなーと顔をほころばせていたら、思いっきり気分が落ちることが発生した。


「あっ、コトちゃんと樹ちゃんはこれ!」


 はい、と文化委員の女の子が手渡してきたのは、「ミスコン予選☆三位」と書かれた襷。


「……」


 ちなみに琴美の襷には「ミスコン予選☆一位」と書かれている。☆が憎らしく感じるのは私だけだろうか……。


「本選は外来からも票とるからね、いっぱい宣伝しなきゃ!」

「そうそう、ポスターにも『一位と三位がいる店』って書いといたから!」

「二人共可愛いもん、絶対賞とるよ!」


 女子から応援と期待の篭ったキラキラの瞳で見つめられて、凄く不本意な結果なのに表面ではにこやかにお礼を言うしかできず、凄くフラストレーションが溜まってしまった。


 琴美は絶対一位だよ。

 だけど私は圏外でいいから!

難産やった……

全校生徒数720人程度の高校を想定しています。

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