1.ふられました
初めましてお久しぶりです高槻です。
お前書き途中のあんだろゴルァって言ってくれる方がいらっしゃるかどうか…。
あっちをもやもや考えつつ、月光に足伸ばしてましたごめんなさい。
とりあえず、気付けば書いていたTSものです。
折角書いたので、投下します。
あっちも書きつつこっちも書きつつになると思われますが、お付き合いいただければ幸いです。
「ごめんね、いっちゃんは好きだけど、そういう対象には見れないの。」
中学の卒業式の日。俺は一世一代の告白をして、見事に振られた。
■ ■ ■
夏川琴美と和田喜成、そして俺―――遠峯樹の三人は、幼稚園からの幼馴染だ。
クラスが離れることはあったが、家が同じ町内にあったからかずっと仲良く過ごしてきた。いつも一緒、何をするのも一緒。それぞれの親もみんな自分の子のように接したため、まるで兄妹のような、家族のような結びつきがあった。
けれど、俺は琴美が好きだった。
厳しいけど優しくて、弱さを自分で克服する強さを持っていて。格好良くて、とても可愛い。だから皆に好かれていてよく告白されるんだけども…。
出会ってからわりとすぐに、俺は琴美を好きになっていたのだった。
この想いは、喜成にも相談したことがある。
同性という気安さもあって、中学に入ってからは琴美より近い存在だった彼も、とてもモテる。
160を超えたばかりの俺より10センチは高く、眉目秀麗・文武両道を体現しており、告白は日常茶飯事だった。
…どうしてこんな二人と平凡な俺が、幼馴染として長年一緒にいられたのだろう。とはよく考えたものだが、それを零すたびに二人から叱責だの慰めだのをもらい、とにかく二人には好かれており、俺も二人の事を好いているから一緒にいる。それで良いじゃないかと開き直ることもしばしばあった。
二人が誰とも付き合わなかったのも原因だと思う。
そう、二人は誰とも付き合わないのだ。
二人に、どうして告白を断ってばかりいるのか聞いたことがある。もちろん、琴美の内心を探るためだ。そうしたら二人とも、「まだ三人でいたいから。」と言ったのだ。かなり嬉しかったのを覚えている。
しかし、俺が琴美を好きなことを告げれば、この関係は崩れてしまう。でも好きだ。
悩んで悩んで、一つの事に思い当った。もしかしたら、喜成も琴美を好きかもしれない。そうすれば美男美女のお似合いカップル。俺に勝ち目はない。
そのことを含めて喜成に相談した。
喜成は複雑そうな顔で、「俺は琴美のことをそういう対象には見ていない。」と言った。ひとまず安心した俺に、爆弾が投じられた。
「俺には好きな人がいる。」
初耳だった。
そのことを掘り下げたいような気もしたが、喜成はそれ以上触れて欲しくないようだったのでやめた。
笑顔で「応援するよ。」と言われたので、それからもちょくちょく相談に乗ってもらったのだった。
そして今日。中学生最後という節目の日に、俺は琴美に告白し、振られたのだった。
■ ■ ■
「よしなり~~!ふられちゃったよおおお!」
「よしよし。」
自室で落ち込んでいた俺の見舞いに来た喜成を見た瞬間、ダムが決壊したかのように涙が出てきた。
「これからも三人、良い幼馴染でいたいな。」そう言った琴美の、困ったような笑顔が瞼の裏から離れない。
「存分に泣け。そしたらすっきりするだろうし。」
喜成の胸を借りて、背中をあやすように叩かれながら、俺はその言葉に従って久しぶりに泣いた。
「おさまったか?」
「うぅ…。ありがと…。」
「ん。」
鼻をかんで目を擦ると、目の前にスポーツドリンクのペットボトルを差し出された。
「水分補給、必要だろ?」
「買ってきてくれたの! ありがとう。」
お礼を言って、早速飲む。乾いた体に染みわたるようで、すぐに飲みほしてしまった。
「目ぇ真っ赤。明日は腫れるだろうな。冷やして寝ろよ。入試結果見る前から泣き顔とか、お前も恥ずかしいだろ?」
「う…、それは恥ずかしい…。」
ベッドの上で座りなおして、俺はぼそりと零した。
「俺、今までみたいに琴美と話せるかな。三人でいつもみたいにいられるかな…。」
俺のせいで、いつもの幸せが崩れてしまった。だめだ、また泣きそう。そう思った瞬間、頭を優しくぽんぽんと叩かれた。
「暫くは難しいかもしれないけど、俺もいるからさ。お前はお前で、ゆっくり傷を癒せば良いよ。」
「…うん。ありがとう、喜成。」
「どういたしまして。じゃあ、俺帰るな。今日はゆっくり寝ろよ? 明日は一緒に結果発表見に行こう。」
「うん。じゃあね。」
布団に入った俺は、ぐるぐると悩んだ。琴美に振られたこと、これからの三人のこと、琴美に振られたこと、明日の結果発表、琴美に振られたこと。
琴美はどういう人が好きなんだろうか。
喜成みたいな格好良い人? それとも逞しい人?
どちらにせよ、平凡な俺では駄目だろう。
もっと俺が格好良かったら。
いっそ、逆に女だったら、こんなに悩むことは無かっただろうに。
女だったら―――。
そこで俺の意識は眠りに落ちた。
■ ■ ■
カーテン越しの朝日で目が覚めた。
昨日冷やしたおかげか瞼は少し腫れぼったいが、開けないほどじゃない。
ベッドの上で上体を起こして伸びをする。なんだか体が重い。瞼よりも、その違和感の方が大きい。
まだ夜は冷えるし、風邪でも引いたかな。喉は痛くないし、そこまでひどくはないようだけど。
そんなことを考えながら、立ち上る。なんだか目線がいつもと違う様な…?
階段を下りて、洗面所に入る。歯を磨いて、顔を洗い、いつものようにコンタクトを付ける。
そして固まった。
「え…? …ええっ?」
鏡の中には喉を押さえた自分がいる。自分だとは分かる。
だけど違う!
身長が昨日より5センチは低い。
髪が肩にかかるくらいまで伸びている。
喉仏が無い。
声が高い。
そして腕に当たる柔らかい感触…。
「なに、これ…。」
懐かしい声変わり前の様な高い声を耳で聞きながら、自分に起こった変化に付いて行けないでいた。