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IKAZUCHI  作者: 雪 渓
序章
2/65

先輩?

事件の発端はある日の昼休み

 国立帝徳学院高等学校。第五室内練習場。


 「練習場」とは、この高校に所属する生徒が、実技魔法の練習を行うことのできる専用の教室である。校内に七つ備えられた練習場のうち、ここ「第五室練習場」は一定の範囲を狙って魔法を発動する、いわば射的技能向上のための練習場である。

 

 その特別な教室の中で、一人立っている少年がいた。

 そして、何の気なしに挙げられた右腕が特殊加工された射撃対象物に向けられた、その瞬間とき


 白い閃光が一直線に的を突き抜け、とてつもない爆発音が部屋に響いた。


 残ったのは、跡形も無く消し飛ばされた目標の破片と、爆発の「余波」によって破壊された器具たち。そして、仏頂面の少年。


「チェ、やっぱまだ無理か」


 少年吐き捨てるようにそう言うと、自分のやった――練習場に準備されていた的をすべて修復不可能の状態まで破壊した――ことには何の関心も抱くことなく、その破片を背に練習場から出て行こうとする。


 学校の備品を破壊すれば後でどんな「面倒事」が起きるのか、彼は理解しているのだろうか。いや、単にそれがやってくるのが早まっただけなのだろうか。


 少年は無造作に、鍵の壊れたドアを開けた......のだが、そこには180cmを優に超える大柄な男子生徒が目を細めていた。無論、そのまなこは少年を射抜くように見つめている。


「あ~えと。先輩? どうしたんですか、そんなに怒って?」


(......またやってしまった)


 初めてあった人に、このような口の聞き方してしまう自分の性格を恨みたくなる少年。


「じゃなくて、先輩どうしてこちらに?」


 周平は、あわてて言い直す。さらに、男の胸にあるバッジには「Ⅲ-Ⅰ」とある。少年はこのことに嘆いた。徳帝高校において、Ⅲ-Ⅰと言えば特別な意味を持つのだ。

 対して、先輩の口から出されたのは、呆れと怒りが合わさったような声だった。


「『どうしてこちらに』だと」


 一拍おいて、深く、力強い声は続く。


「防音設備の供えられた練習場からあんなでかい音をだしておいて、よくもぬけぬけとそんなことがいえるな」


 周平が懸念していた通りだった

 この学校におけるすべての練習場は、車同士が真正面からぶつかったとしてもほとんど音が室外に漏れないような設計になっている。ちなみにこれは、少年の持つ数少ない情報で、あらかじめ渡されていた電子型パンフレットに書いてあった。


「で、金糸雀かなりあ。どうする気だ」

「へい?」

「片付けどうするのかって聞いているんだ」

(......正直、そこまで考えてなかった)


 自身のあまりにも愚かな思考力に、少年は再び自分のやりたいことが見つかると周囲が見られなくなるという性格を恨んだ。

 そもそも魔法の練習がしたくてここにきただけだし。あの練習用の的を小さな破片になるまで破壊する気は無かったし......などという無駄な言い訳は心にしまいこむ。


 何やら一人でブツブツやっていると、例の先輩の方からお達しがあった。


「まあいい、ここの片付けは放課後お前がやれ。今日はこの部屋は使えないようにしといてやる」

「分かりました。放課後に片付けにきます」


 ちゃんとやっとけよっといって先輩は、部屋を出て行った。

 一人になった少年。


「面倒くさいけど、しょうがないよな......さっさと済ませて家に帰るか......」


 そんなことをつぶやいて彼は部屋をあとにした。







 拙作に目を通していただきありがとうございます。

 もしよろしければ、評価・感想等いただけると嬉しいです。



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