開幕
痛い............。
周平の体全体に突き刺さる視線の矢。
(涼稀の野郎! ぜってェ許さねェ! )
現在俺は、学校に向かって歩いて通学中だ。涼稀と自転車で駅まで行き、電車に乗って駅で降りる。駅から学校までは歩いて行く。ごくごく当たり前のことだ。しかし、学校に近づけば近づくほど、周囲からの視線が痛くなる。
きっと、いや、絶対原因は隣の美少女だと確信する周平。
「あの、青影先輩。そろそろ手をつなぐのはやめませんか」
「周平くんは、私と手を繋ぐのイヤ? 」
「うっ......」
顔は良いのだが、無愛想で顔見知りなため、女の子と手をつなぐことなんぞ初めての周平に、青髪美少女の上目遣いの目線はよく効いた。
「い、嫌ではないですけど......」
やっとのことで一言返すのが精一杯な周平。
「じゃあ問題ないね〜。ほら行こぉ〜?」
秘都美は周平の右腕を掴んで半ば引きずるように歩いて行く。
(......しょうがない、今日はこのまま学校まで行くしかないか。どうせあと数分だけだし)
数分後。周平は、段々と強くなっている視線の矢(主に男子から)に耐えながらやっとの思いで学校にたどり着いた。
「じゃあ先輩。ここでお別れですね。それじゃあ」
「周平くん何だか嬉しそうだね。ヒドイよ」
と言いながらも秘都美は周平から手を離す。
「それじゃあ、またあとでね」
「はい、それじゃあ」
あとでね?
周平は秘都美の言葉に違和感を感じながらも、自分の教室へ歩いて行く。
まだ教室には誰もいないようだ。しかし、周平が教室に入ろうとするとう後ろから声がかかる。
「ヨッ! 周平。大丈夫だったかい」
急に現れた涼稀が周平の背中をたたく。
振り返った周平の目に映るのは、やけに口元が緩んだ涼稀の顔。
「大丈夫なわけねぇだろ。つうか、お前何か知ってんのだろ!」
「当然だろう。入学式で新入生代表挨拶をした、あの金糸雀くんが、全校でも1、2位を争う美女と一緒に手を繋いで登校するなんて。ほっといても学校の噂話......いや、今日のトップニュースになるさ!」
周平の詰問に待ってましたとばかりに満面の笑みで答える涼稀。
「てめえ、なんか嬉しそうだな......いや、んなことはどうでもいい。
俺が知りたいのは、俺が青影先輩と一緒にこなくちゃ行けなくなった理由を、なんでお前が知ってんのかってことだ」
「あら」
廊下に新たな人影が現れる。ついさっきまでは、なかったものだ。
「......なんでここにいるんですか?」
小さな周平の声。
「『こなくちゃ行けなかった』とは心外ね〜。せっかく手を繋いで登校したのにそんなこと言うなんてぇ」
「......青影先輩。どうやってここに......?」
語尾はもうほとんど聞き取れない。それでも気を取り直して最も疑問に思っていたことを聞くことにした。
「......先輩は、なんで俺なんかと一緒に学校にくることにしたんですか」
「それは、あながが可愛かったからよ」
自信満々に答える秘都美。
「............告白ですか? 」
周平が、一気に冷めた目線で秘都美を見る。
「冗談よ冗談。そんな目で見ないいでよ~。まあ、これは真利奈が考えたことだからね。優しい先輩を困らせた罰だそうよ。真利奈せんぱいも、面白こと考えるはよね。まあ、“せいぜい頑張ってくれたまえ”だってさ」
秘都美は、その顔に似合わない怪しい笑顔を周平たちに向ける。
「ひと姉。もしかしてそれ、おれも入ってます? 」
涼稀が、不信に思って秘都美に聞く。
「もちろんよ。“いい機会だから、2人のコンビネーションがどれだけすごいか見せてもらう”んだって。真利奈せんぱいが言ってたわ。それじゃ頑張ってね~」
と言って青影先輩は後ろを振り返り消えた。
そう、消えた。
空いた口のふさがらない周平に涼稀が言った。
「その顔は、周平知らなかったんだね。ひと姉は、瞬間移動が使えるんだよ」
「......まじか」
特に話すことのなくなった2人は教室に入る。
(そうなのか...。思念波といい、瞬間移動といい、この学校には、珍しい魔法を持っている人が多いんだな)
少しずつ人が増えてきた教室で、周平は密かにそう思うのだった。




