おまけの小話『帰り道』
「リューリックは何をお願いしたの?」
星祭りからの帰り道はチャキアを背負って歩いた。
途中までは手を繋いで歩くことができた。
しかし徐々にチャキアは眠気に負け始め、足元がおぼつかなくなった。
私はチャキアを背負うことにした。
2時間ほど寝てから星祭りに行ったが、久しぶりに仲の良い村娘達に会ったチャキアはとてもはしゃいでいた。
疲れで眠くなって当然だ。
「いや。していない」
星が強く輝く夜は、月明かりは期待できない。
だが、夜道を照らすガス灯やランタンが無くとも私は夜目がきくので、不便は感じない。
ここまで視えるとは……変化が進行しているな。
もはや人間とは言い難い。
私のこの身体は。
便利なんだか不便なんだか……微妙だな。
「え? どうして?」
「生涯一つしか叶わないんだろう? もっと考えてから、願うことにする」
「ふ~ん……」
今のところ。
私は星にすがるほど、願い渇望するものなどない。
「チャキア。……Я люблю тебя」
全てを元に戻したいという気も無い。
「なあに、それ? おまじない?」
「まじない? ああ……まぁそんなものだ。さぁ、寝る前に風呂に行こう。頭を洗ってやる」
私は満たされている。
充分に。
「わぁ~い! リューリック、大好き!」
「風呂での決まりは守るんだぞ?」
星に願わなくても。
「うん! わかってるよ~、れでぃーはお風呂でお膝にのっちゃだめなんだよね!?」
「おい、それ以外にもあるだろうがっ。まったくお前は……よし、風呂に着くまでに試験をする。12項目全て暗唱出来なかったら1人で入れ」
「えぇ~!?」
昼も夜も。
今日も明日も。
私は君の側にいられるのだから。
*イラストは『やえ様』の作品です。