表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲームで冷酷な男と組んだら、なぜか俺だけ守られている  作者: しゃとーぶりあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/18

第7話 腕の中で

 



桐生蒼真が自身に指定された個室の前に立つと、


廊下の照明がわずかに明るくなった。


扉の横には小さな電子パネルがあり、


そこに**「ROOM 07」**と表示されている。


ゆっくりとノブに手をかける。


ギィ……


重たい音を立てて扉が開いた。


中は、思った以上に狭かった。


六畳あるかないかほどの四角い部屋。


壁はコンクリートむき出しで、


灰色のざらついた表面がむき出しになっている。


塗装もされておらず、


所々にひびや汚れが見えた。


天井には一本だけの蛍光灯。


白く冷たい光が、


部屋全体を無機質に照らしている。


わずかにチカチカと瞬くその光が、


落ち着かない空気を作っていた。


右側の壁には――


簡易ベッドが置かれている。


金属パイプで組まれた安っぽいフレーム。


その上に薄いマットレスが一枚敷かれているだけだった。


表面の布地はくすんだ灰色で、


長く使われているのか小さな毛玉が目立つ。


ベッドの横には、小さな机があった。


金属脚に合板の板を乗せただけの粗末な作り。


引き出しを開けると、


ファーストエイドキットが入っていた。


消毒液に包帯――


少々の怪我なら対応出来そうだ。


(殺される可能性が高いこの状況じゃ、


ただの気休めだな……)


机の上には――


プラスチック製のコップや、


水の入ったペットボトル。


ビニール袋に入った簡単な非常食。


それだけだった。


壁際にはもう一つ、ロッカーのような細い収納棚が立っている。


扉はなく、中の棚板がそのまま見えていた。


そこには、折り畳まれた薄い毛布、タオルが数枚置かれている。


まるで避難所の備品のような簡素さだ。


蒼真は部屋の奥まで歩く。


ガラス扉で仕切られたユニットバスが見えた。


床はコンクリートのままで、冷たい感触が靴底越しに伝わってくる。


そして――


ベッドから正面の壁。


そこに取り付けられていたものを見て、蒼真は足を止めた。


黒い球体の監視カメラ。


天井の角に設置され、レンズがこちらをじっと見下ろしている。


赤い小さなランプが点滅していた。


つまり――


ここでも見られている。


「はぁ……これじゃ囚人だな」


蒼真はゆっくりと落胆の息を吐いた。







おぞましいゲームの会場となっている廃墟の夜は、


驚くほど静かだった。


監視カメラ付きとはいえ、


一人きりの空間を手に入れたからだろう。


蒼真は、部屋の扉をそっと開けて廊下に出た。


白い蛍光灯だけが天井に並び、


無機質な光が長い通路を淡く照らしていた。


目がさえて、眠れなかった。


ベッドに横になっても、頭の中には昼間のゲームの光景が繰り返し浮かぶ。


悲鳴。


血。


もう動かない身体。


そして――


神崎の冷たい目。


掴まれた腕。


蒼真は廊下の壁にもたれ、静かに息を吐いた。


「……」


こんな場所で、眠れる方がおかしい。


その時だった。


足音が聞こえる。


規則正しい、迷いのない歩き方。


蒼真は顔を上げる。


そして、すぐに分かった。


「……神崎」


暗い廊下の向こうから現れた男は、


やはり神崎蓮だった。


光沢のある黒いシャツの袖を軽くまくり、


相変わらず無表情のままこちらへ歩いてくる。


コートは部屋に置いてきたようだ。


神崎は蒼真の前で足を止めた。


「何してる」


低い声。


「……眠れなくて」


蒼真は苦笑した。


神崎はしばらく蒼真を見ていたが、


特に驚いた様子もない。


まるで、こうなることが分かっていたかのようだった。


「……お前、寝ないと死ぬぞ」


「いや、さすがに寝ないくらいで死なないだろ」


「ここでは、弱った奴から死ぬ」


淡々とした言い方だった。


蒼真は少しだけ肩をすくめた。


「神崎ってさ」


「なんだ」


「なんでそんな冷静なの?」


神崎の視線がわずかに動いた。


「普通さ……」


蒼真は廊下の床を見ながら言った。


「もっと、怖くなるだろ。


いきなりこんな、ひとが死ぬ……メチャクチャな状況…………」


沈黙。


静かな空気が二人の間に流れる。


遠くで機械の低い音が響いていた。


神崎はゆっくりと壁にもたれた。


蒼真のすぐ隣。


距離は、腕一本分もない。


蒼真は少しだけ驚いた。


神崎は普段、


必要以上に近づかない男だったからだ。


「……怖いと思ったら死ぬ」


神崎が言った。


「え?」


「このバカげたゲームは、迷ったら終わりだ」


その声は、妙に実感がこもっていた。


()()()見てきたような。


蒼真は横目で神崎を見た。


整った横顔。


長いまつげ。


そして、どこか疲れているような目。


この男は、いつも周囲を警戒している。


ほんの少しの音でも反応する。


他人の動きもすぐに読む。


まるで――


幾年も戦場で戦っている人間みたいに。


(もう、()()()()()()()してる……ってのか。


それとも、やっぱり黒幕――)


「神崎」


「……」


「さっきさ」


蒼真は言葉を探した。


「助けてくれたよな」


神崎は答えない。


蒼真は少しだけ笑った。


「ありがとう。


……ってまだ、言ってなかったよな」


その瞬間だった。


神崎の視線が、蒼真に向いた。


灼けるような眼で、ほんの一瞬だけ。


そして、すぐに逸らされた。


「……勘違いするな」


「え?」


「お前が死ぬと他の奴と組まされる。


まだ御しやすそうなお前の方がマシってだけだ」


冷たい言い方だった。


でも。


蒼真はなぜか、嫌な気はしなかった。


「そっか」


「……」


「でもさ」


蒼真は小さく笑う。


「それでも助かった」


その時だった。


突然、強い力で腕を引かれた。


「——っ!?」


視界がぐるりと回る。


次の瞬間、蒼真の背中は壁に押しつけられていた。


そして。


目の前には——神崎の顔。


「声を出すな」


低い声だった。


神崎の手が蒼真の口を覆う。


「んぅっ」


大きな手が、殆ど目まで塞いでくる。


蒼真の心臓が跳ね上がる。


距離が、近すぎる。


神崎の体が蒼真に覆いかぶさるように迫っていた。


片腕が蒼真の肩を抱き込むように、


壁へ押さえつけている。


(いきなり何だよ!?ってか近い近い近い!)


青ざめつつ蒼真は息を止めた。


神崎の体温が、服越しに伝わってくる。


温かい。


そして、細身なのに思ったよりずっと力が強い。


押さえつけられた蒼真は少しも動けなかった。


完全に、神崎の腕の中に閉じ込められている。


数秒後。


廊下の奥から、複数の足音が聞こえてきた。



ざっ、ざっ、ざっ——



蒼真の体が強張る。


他の参加者だ。


こんな時間に、複数で動いている。


ここはかろうじて彼らからは死角になってはいるが——、


神崎は蒼真の頭を自分の胸へ押しつけた。


「動くな」


蒼真の視界は、神崎の黒いシャツで塞がれた。


顔が胸に押しつぶされる形になる。


鼓動が聞こえた。



ドクン。


ドクン。



それが誰の心臓なのか、蒼真には分からなかった。


自分なのか。


神崎なのか。


足音は、すぐ近くを通り過ぎた。



「…でさ、…」


「……あいつらまだ……るのか」


「次のゲームの情報……らしい」


「マジかよ」


「そんで……」



きれぎれに、低い会話が聞こえる。


蒼真の体は神崎に抱き込まれたままだった。


逃げ場がない。


腕は背中に回され、完全に囲われている。


神崎の顎が、蒼真の頭の上に触れていた。


髪に、わずかに息がかかる。


蒼真は思った。


近い。


近すぎる。


神崎の匂いがする。


少しだけ甘い血みたいな、鉄のような匂い。


胸の奥が、妙に落ち着かない。


足音が遠ざかっていく。


しばらくして、廊下は再び静かになった。


神崎の腕がゆっくり緩む。


蒼真は顔を上げた。


すぐ目の前に神崎がいる。


呼吸(いき)が触れそうな距離。


蒼真の喉が鳴る。


「……」


神崎はしばらく蒼真を見ていた。


その目は、いつもの冷たいものとは少し違っていた。


何かを確認するみたいに、静かだった。


「……大丈夫か」


蒼真は頷く。


でも、心臓はまだ速かった。


神崎の腕はまだ蒼真の背中にあった。


完全には離れていない。


蒼真は気づいてしまった。


この腕の中は。


意外と……安心する。


(いやいやしっかりしろ俺!


単なる吊り橋効果だ。


こいつは黒幕かもしれない。


しかも、滅多にいない美形だとしても男同士だ!


これは恐怖のあまりの動悸だ)


「……今の人たち」


内心の葛藤に必要以上に疲弊した顔つきの蒼真がごく小さく言う。


「なんで隠れなきゃいけないんだ。危なかったの?」


「……ああ」


神崎は短く答えた。


()()()見つかったら面倒だった。


目をつけられてる。潰すなら、弱い奴からだろ」


蒼真は苦笑する。


「俺そんな弱そう?」


「弱いだろ」


即答だった。


蒼真は少し笑う。


でも、次の言葉は出なかった。


神崎の手が、まだ背中に触れている。


その体温が、妙に意識される。


蒼真は視線を逸らした。


なぜか落ち着かない。


神崎はそんな蒼真を見て、わずかに眉を寄せた。


「……どうした」


「いや」


蒼真は言葉を探す。


「……近いなって」


「…………」


神崎はゆっくり腕を離した。


でも。


その手は一瞬だけ、蒼真の肩を軽く掴んだ。


まるで存在を確認するように。


「……部屋に戻れ」


蒼真は頷く。


でも歩き出す前に言った。


「神崎」


「……」


蒼真は少し笑う。


「今のも。……助けてくれたんだよ、な?」


神崎の表情は変わらない。


「違う。合理的な判断だ」


蒼真はくすっと笑った。


「はいはい」


蒼真は歩き出す。


でも数歩進んで、ふと振り返った。


神崎はまだそこに立っていた。


蒼真を見ている。


その視線は、どこか強かった。


まるでもう二度と失いたくないものを見るように。


蒼真は胸の奥が少し熱くなるのを感じた。


どうしてかはまだよく分からない。


でも。


神崎の腕の中にいたとき、


ほんの少しだけ安心したのは。


——この男のそばなら、生き残れる気がする。


蒼真はもう少しだけこの男を信じたいと思った。










まあやっとこの「デレまも」(下書き用テキストファイル名)も


ちょっとはBのLっぽいシーン入れられたかなーって思ってます。


こっからもうちょっとBL色が満艦飾すぎて恥ずかしい、


そんな展開を目指しますw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ