↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【BL】冷酷な最終兵器は俺にだけ執着する ーFalling into E.D.E.N ー  作者: 雨森ユキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/153

第23話 分断

 



 背中に、視線を感じる。


 振り返ればきっとまたあの黒い眼が、こちらを見ている。


 だが蒼真は振り返らなかった。


 動揺に目を見開いたまま、前を見続ける。


「……それ、どういう意味なんだ」


 そう言って、再び歩き出した。


 迷宮の奥へ。


 その背中を見ながら、神崎は静かに呟いた。


「言葉通りだ。……最後の一人になるまで、足掻け」


 暗い迷宮の空気に、言葉が溶ける。


 足元ちかくにある非常灯が、ジジ、と音を立てて瞬いた。


「もし今回もそれを諦めたなら────……」


 珍しく神崎が言い淀んだ刹那、




 がり……


 ……がりがり……がり




 ……先の通路の奥から、微かな音がする。


 何かが床に擦れるような音。


 複数の、はげしい呼吸音。


 誰かいる。


 蒼真の心臓が急に速くなる。


 迷宮の奥から、足音が近づく。


 ずしん、と床が揺れるほど、重い。


 人間の体重で出せる足音ではない。


 床のコンクリートを一歩ごとに踏み砕いている。


 影が、通路の奥で揺れた。


 現れたのは────、やはり異様な巨体だった。


 全身、特に上半身の筋肉が異様に膨れ上がった男。


 血管が皮膚の下でどす黒く浮き上がっている。


 目は赤く、呼吸が荒い。


 どう見ても、普通の人間では勝てそうにない。


 巨体の男は、ゆっくりと通路を進んでくる。


 歩みは遅いがとっくに二人を認識していて、次の獲物と定めたようだ。


 わずかな後ずさりすら、赤い目が追い掛けてくる。




 がり……がりり……




 その時、それがなにを引きずっているかが漸く目に入った。


「……ひと?」


 思わず呟いたが、確信は持てなかった。


 なぜならそれは、非常に乱雑に────ひ(・)と(・)ま(・)と(・)め(・)にされていたからである。


「……三人か。もう死にかけてるが、まだ生きてるな」


 こん棒のような形にまとめてぎ(・)ゅ(・)っ(・)と潰された……人のなれの果てだった。


 いつでも呆れるほど冷静な神崎の声に、蒼真は我に返る。


 逆側の腕を見ると────、わずかに、曲がっている。


(……あ、こいつ食堂で絡んできた……)


 見た目は元の顔面の判別が付かないほどの変貌を遂げていたが、曲がった腕を見ていると誰だか分かった。


 以前神崎に腕を捻りあげられていた男だ。


「迷宮(ここ)のどこかに、ああいう薬物が配置されてたんだろう。……あるいは、既に俺たち以外の全員が狂(・)化(・)されているか」


 後半は低く呟かれたせいで聞き取れなかったが、神崎は顔色ひとつ変えていない。


「……ほんっとに落ち着いてんな」


「適正の高いヒトの補充もそれほど容易じゃないだろうに、向こうも焦ってる証拠だ」


「……?どういう事……」


「蒼真。さっき言ったこと、覚えてるな」


 ふいに冷たく光る眼できつく見据えられ、蒼真は驚いた。


「え」


「目の前の奴らと俺たちを除けばあと四人。殺(・)す(・)権(・)限(・)が(・)与(・)え(・)ら(・)れ(・)て(・)な(・)い(・)お前じゃ厳しいが────、」


「分(・)か(・)る(・)筈だ。ここの罠(トラップ)でもなんでも使え。全員下して、最後の一人になれ」


 矢継ぎ早に言うと、神崎は蒼真を自分と化け物とは反対側の通路へと強く押し出した。


「ちょ、それお前はっ、」


 倒れそうになったところをなんとか立て直して言いかけた瞬間。


 床が、きしんだ。




 みしぃっ……  、ばんっ!





 乾いた音。


 神崎の拳が、床の仕掛けごと辺りを砕いた。


「行け」


 床がわずかに沈む。


 次の瞬間────。




 ガゴゴゴゴゴッ────!!





 轟音と共に、通路の壁が横に滑る。


 壁の仕切りが一瞬で閉じた。


 ちょうど神崎と化け物、そして蒼真の間に、重い、コンクリートの石壁。


「……は?」


 蒼真は呆然と壁を見る。


 神崎たちの姿はその向こうに消えている。


 通路は完全に分断されていた。


「おい!」


 蒼真の拳が壁を叩く。


「神崎!!」


 返事はない。


 分厚い隔壁のようなコンクリートの壁は、もはやわずかな物音も通さなかった。


 蒼真の周りに、不気味な静寂が満ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。