第15話 交錯
金属音と、悲鳴。
だれかの笑う、声────。
そして。
慌ただしい足音。
徐々に近づいてくる。
蒼真と神崎の視線が同時に通路の奥へ向く。
暗闇の中から、一人の若い男が現れた。
笑いながら息を切らしている。
目は血走り、焦点が合っていない。
ふと、男が顔を上げた。
三人の視線がぶつかる。
そして男の目が変わった。
恐怖。
それが、すぐに別の感情へ変わる。
殺意。
首を傾げる。
「さっきさ」
にたりと笑う。
「二人殺したんだよね」
蒼真の眉が寄る。
「……」
男は続ける。
「最初は怖かったけどさ……、」
「すぐに慣れるね!」
シャアッと呼気を吐きながら、男は腕を振りかぶる。
「次はァ────、お前らだァ!!」
男の手にはごつごつとした大きなサバイバルナイフが握られていた。
刃先まで含めて黒いナイフなので分かり難いが────、
その全体は、どろりとした液体で汚れている。
蒼真が小さく呟く。
「……血」
神崎は一歩前に出る。
男が叫んだ。
「どけぇ!!」
ナイフを振り上げ、突っ込んでくる。
蒼真が息を呑む。
とっさに銃を構えようとするが間に合わない。
次の瞬間。
神崎が動いた。
速い。
肘で軽くナイフを捌き、男の腕を掴む。
それほど力を込めているようには見えないのに、明らかに掴んでいるその腕がひしゃげた。
ばきりと、骨が鳴る。
男の悲鳴。
だが神崎は止まらない。
そのまま、男の体を壁へと叩きつけた。
ドゴォッ!!
轟音。そして──、
コンクリートの壁に、放射状に亀裂が入る。
破片が、パラパラと落ちた。
がら・ん…………
男が握りしめていた黒いナイフが音を立てて落ちる。
神崎の目が冷たく光った。
「神崎っ」
蒼真は思わず声をかけた。
止めるつもりだったのか、どうか。
自分でもわからなかった。
神崎は振り返らない。
落ちたナイフを拾い上げ、男の喉元に押し当てている。
そのまま、静かに言った。
「殺し合いは」
声は低い。
「もうとっくに始まってる」
言いながら、神崎はあっさりと黒い刃を引いた。
間欠泉のように噴きあがる男の血の向こうに、神崎の横顔が隠れる。
口元だけ見えたその白い顔は────、
うっすらと、嗤っているように見えた。




