表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/94

第43話 揺れる王太子

 公開審問の告知が出た翌日から、王宮の空気は変わった。


 廊下で交わされる視線が、重い。


 以前は露骨な敵意だった。

 だが今は違う。


 ――様子見。


 それが、最も厄介だった。


「殿下」


 側近の一人が、慎重に声をかける。


「公開の場で、どこまでお立ちになるおつもりですか」


 レオンハルトは、書類から目を上げなかった。


「立つとは」


「ヴァレンシュタイン公爵令嬢の弁明を、

 王家として全面的に支持されるのか」


 その問いは、単純ではない。


 再編は王家の名で進められている。

 だが実質の設計は、アリシアだ。


 責任の所在。


 それが問われる。


「……再編は、王家の決断だ」


 レオンハルトは、ゆっくりと答えた。


「だが、批判は彼女に向かっている」


 側近の言葉は、現実だ。


 悪役令嬢。


 その名は、盾であり、的でもある。


 会議室では、別の声が上がっていた。


「王太子殿下は、ヴァレンシュタインに依存しすぎているのでは」


 アルベルトの発言は、あくまで穏やかだ。


「私は再編の成果を否定しない」


 必ず一度、肯定を挟む。


「だが、王家の主導権が曖昧だ」


 それは、痛いところを突く。


 レオンハルトは、静かに言い返した。


「主導権は、王家にある」


「ならば、公開の場で明確に示すべきですな」


 柔らかい圧力。


 逃げ道はない。


 夜。


 執務室で、レオンハルトは一人立っていた。


 窓の外には、整然とした王都の灯り。


「……守るのか」


 自分に問う。


 再編は正しい。

 だが政治は、正しさだけでは動かない。


 もし公開審問で支持を明言すれば、


 ・反動派を刺激する

 ・教会を敵に回す

 ・王家の中立性を失う


 もし距離を取れば、


 ・彼女を孤立させる

 ・契約を裏切る

 ・自分の決断を否定する


 扉が静かに開いた。


 アリシアが入る。


「顔色が悪いわ」


「当然だ」


 率直な返答。


「公開審問は、私の立場も問う」


「ええ」


 アリシアは、否定しない。


「あなたの覚悟が、試される」


 レオンハルトは、彼女を見た。


「お前は、平然としているな」


「平然としているように見えるだけ」


 珍しく、少しだけ柔らかい声。


「怖くないのか」


「怖いわ」


 即答だった。


「でも、逃げない」


 沈黙。


 レオンハルトは、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。


「私は……」


 言葉が続かない。


 王太子として。


 男として。


 政治家として。


 何を選ぶのか。


「私は、王になりたい」


 ようやく出た言葉は、本音だった。


「だが王とは、誰を守る存在だ」


 アリシアは、静かに答える。


「契約を守る者」


 それが、彼女の基準。


「私を守る必要はない」


 はっきりと言う。


「守るなら、再編を守って」


 それは、個人ではなく理念。


 レオンハルトは、目を閉じた。


「……厳しいな」


「ええ」


 アリシアは、わずかに微笑む。


「甘い政治は、もう終わったでしょう」


 その言葉は、彼の成長を認めている。


 廊下では、噂が飛び交う。


「殿下は距離を取るらしい」

「いや、全面支持だ」


 どちらも、確証はない。


 だが一つだけ確かなことがある。


 公開審問は、

 ヴァレンシュタインだけでなく、


 ――王太子の“王としての資質”を試す場でもある。


 夜は、長い。


 整えられた王都の下で、


 王太子は、初めて本当に揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ