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断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


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第24話 選べない王国

 国王は、玉座に座っていた。


 だがそれは、支配者の姿ではない。

 重い衣をまとった、沈黙そのものだった。


「……状況を」


 王太子レオンハルト・アルヴェインの声が、静かに響く。


 報告は淡々と続く。


 南部の物流停止。

 東部の治安悪化。

 王都周辺の流入民増加。

 商会は条件提示待ち。

 軍は現状維持限界。


 どれも、もう新しい話ではない。


「切り捨て案は?」


 レオンハルトが問う。


 老貴族グスタフ・ヘルマンが、一歩前に出た。


「準備は整っております」


 書類が差し出される。


 地方行政の縮小。

 支援停止。

 税の一時免除という名の放置。


 文字だけ見れば、合理的だ。


「実行すれば、王都は守られるか」


 レオンハルトの問いに、即答はなかった。


「……一定期間は」


 グスタフは、言葉を選ぶ。


「“一定期間”とは、いつまでだ」


 沈黙。


 国王が、初めて口を開いた。


「……それで、国は保つのか」


 声は老いていた。

 だが、核心を突いている。


 誰も答えられなかった。


 切り捨ては、延命策だ。

 再生策ではない。


「では……」


 国王は、ゆっくりと続ける。


「他に、選択肢はあるのか」


 誰も、前に出ない。


 調整官席は空いたまま。

 責任を集める場所が、存在しない。


 レオンハルトは、拳を握りしめた。


 選ばなければならない。

 だが、選べない。


 ここで切れば、地方は見捨てられる。

 切らなければ、王都も崩れる。


 どちらを選んでも、

 自分が“王太子として失格”であることは変わらない。


「……時間をください」


 その言葉が、口をついて出た。


 国王は、ゆっくりと息を吐いた。


「時間は、もう使い切っている」


 その一言が、重く落ちる。


 だが、それでも――

 決断は下されなかった。


 会議は、再び「継続審議」となった。


 廊下に出た貴族たちは、互いに視線を交わさない。


 誰も、責められたくない。

 誰も、選びたくない。


 王都の街では、異変が表に出始めていた。


 市場での小競り合い。

 野営地での盗難。

 兵士と民の言い争い。


 まだ暴動ではない。

 だが、“秩序の前提”が揺らいでいる。


「王は、何をしている」


 誰かの呟きが、消えずに残る。


 一方、地方都市の宿。


 アリシア・フォン・ヴァレンシュタインは、

 マティアスの報告を最後まで聞き、静かに目を伏せた。


「……国王も、王太子も、選べなかったのね」


「はい。

 切り捨て案は、決裁されませんでした」


 アリシアは、小さく頷く。


「これで、不可逆点を越えた」


 マティアスは、息を呑む。


「……もう、戻れませんか」


「ええ」


 彼女は、淡々と答える。


「“選ばなかった”という選択は、

 最も重い決断だから」


 窓の外では、夕暮れが街を包んでいる。


「国家とはね」


 アリシアは、静かに言った。


「選び続ける装置よ」


 選べなくなった国家は、

 ただの土地の集合体に過ぎない。


「彼らは、もう国じゃない」


 その宣告に、感情はなかった。


 王都では今、

 王がいて、王太子がいて、

 命令も制度も残っている。


 それでも――

 **誰一人として、未来を選んでいない**。


 選べない王国は、

 ゆっくりと、

 しかし確実に、

 終わりへと歩み始めていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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