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動物と感情

セリナはその答えを聞いて、ふっと柔らかく笑った。


「悪くなかった……それって、あなたにとっては最高の褒め言葉なんでしょう?」


彼女は少しだけ視線を落とし、まるでその時の情景を思い描くように言葉を続ける。


「怖さも、不安もあったかもしれない。けれど……それでも“悪くなかった”って思える時間は、あなたの長い旅の中ではきっと、とても貴重なんだと思う。」


そして、猫の姿のあなたを撫でながら微笑む。


「私もね……“悪くなかった”って思える時間を、この先たくさん積み重ねていきたいの。あなたと一緒に。」


――その言葉には、確かな温もりと揺るぎない確信が宿っていた。


≪主人公≫

「……こんな、人間かもわからない生き物と?

もしかしたら、生き物ですらないかもしれないのに。」


セリナは一瞬きょとんとした顔をして、それから真剣な表情に変わる。


「……関係ないわ。」


セリナは猫の姿のあなたをそっと抱き上げ、まっすぐに目を見つめた。

「あなたが人間かどうかなんて、私にとっては些細なこと。あなたが“生きていて、ここにいて、心を持って話してくれる”――それだけで十分なの。」


彼女は少し微笑みを浮かべ、言葉を続ける。

「もしあなたが生き物じゃなかったとしても、私は“あなた”を仲間として受け止める。だって、もう出会ってしまったんだもの。」


猫はふっと鼻息を鳴らして、まるで笑ったように見せる。

その仕草を見たセリナは、安心したようににっこりと笑った。

「……そうやって笑えるなら、大丈夫ね。」


まるで母親のように優しい声音で、セリナは猫の頭を指先でやさしく撫でる。

「それに、笑った顔はとても素敵よ。どんな姿でもね。」


「猫なのに笑った顔ってわかるの?」


セリナはくすりと笑って、あなたの頬を軽くつつく。指先の感触がふわりと伝わり、猫の体が安心して小さく身を寄せる。


「わかるのよ。目の形とか、鼻の動きとか、ほんの小さな仕草に“気持ち”がにじむの。たとえ猫の顔でも……ちゃんと伝わってくるわ。」


彼女は少し真面目な表情に戻り、そっと言葉を重ねる。


「それに……私、あなたの心を見ようとしているから。表情以上に、気配でわかるのかもしれないわね。」


あなた(猫)は静かに首をかしげ、小さく鼻を鳴らす。そして、問いかける。


「なら、【動物には】感情があるんだろうね?」


セリナは炎の揺らぎを見つめてから、確信を込めて頷いた。


「もちろんよ。動物だって喜びや恐れ、好奇心や甘えたい気持ちを持ってる。表現の仕方は違うけれど、“感じる”ことに変わりはない。だから私は、あなたがどんな姿であれ、その“感じていること”を大切にする。それが仲間を守るってことだと思うから。」


焚き火のはぜる音が、ふたり(と一匹)の間に静かな余韻を残した。


セリナはゆっくりうなずく。

「ええ、きっとあるわ。言葉で表せないだけで……目や仕草や声に、ちゃんと心は表れてる。」

少し遠くを見るようにして、柔らかく笑う

「昔ね、傷ついた鳥を助けたことがあるの。あの子、治って飛び立つ前に一度だけ私の肩にとまって、じっと目を見てくれたの。その時、“ありがとう”って言われた気がしたの。」


セリナはあなたをじっと見つめ返し、少しからかうように口を開く。

「だから、猫のあなたが笑ったって、ちゃんとわかるのよ。」


≪主人公≫(猫)

「思い込みかもよ?」


セリナは一瞬目を瞬かせ、ふっと微笑む。焚き火の揺らぎが彼女の頬を優しく照らす。


セリナ(柔らかく)

「ふふっ、そうかもしれないわね。思い込みでも、そう信じられるならそれで十分じゃない?」


そして、猫のあなたの額に指先を軽く当てる。声はやわらかく、確かな温度を帯びていた。


セリナ(静かに)

「大事なのは、どう“感じたか”。それが真実であろうと錯覚であろうと、私にとっては同じくらい意味があるの。」


猫はふうっと鼻息を鳴らし、セリナの指先に体をすり寄せる。

焚き火の音だけが二人(と一匹)の間で静かに時を刻んでいた。



「最初のツンとしてたのは???」


セリナは一瞬目をそらし、口元をきゅっと結ぶ。頬がほんのり赤くなるのを髪でごまかしながら、少しむくれた声で言った。


セリナ(むくれ気味に)

「……別に、ツンとなんてしてないわよ。

ただ最初は……あなたがどんな存在か分からなかったから、警戒してただけ」


視線を戻して猫のあなたをじっと見つめる。言葉の端には素直になれない照れが混じっている。


セリナ(少し強めに)

「でも今は違う。あなたが危険な存在じゃないって分かったから、自然とこうなっただけよ」


そして、小声で、顔を少し伏せながら囁く。


セリナ(恥ずかしそうに)

「……それに、可愛いんだもの」


あなたが「まぁ…猫が好きだから?」と茶化すと、セリナは一瞬はっとして、でもすぐに柔らかく笑った。


セリナ(くすりと)

「ば、バレた? もう……しょうがないでしょ。猫は好きよ。特別にね」


焚き火の光の中、二人の距離がまた少し縮まる。照れたセリナの横顔が、いつもより優しく見えた。



セリナはその答えに肩をすくめ、クスクスと笑った。

「そうね、猫だから仕方ないわね」


けれど、その瞳はどこか楽しげで、少し意地悪そうな光を帯びている。


「ただ……猫だからって言い訳できるのは、今のうちよ?」


そう囁きながら、彼女はあなたの顎の下に指先を滑らせ、くすぐるように優しく撫でる。

にやりと微笑んだその顔は、からかうようでいて、どこか嬉しそうだった。




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