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猫はかつて人だった  作者: くりょ
ライル
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見える景色




僕は思い出しながら、しかし思い出と、言うよりは感覚を答える。

すごく飢えてた。世界が狂ってて、苦しい時間がたくさん、そんな感じだとおもう。





セリナ

(静かに耳を傾け、あなたの複雑な説明を一つひとつ心に落とし込もうとするように頷く)

「……記憶は引き継がれないけれど、“飢餓”という感覚だけが残っていたのね。

世界が狂って見えるほどの渇望……それは、子ども自身の叫びだったのかもしれない。」


(少し切なそうに目を伏せる)

「そして、その後は悪い大人に憑依して……さらに冒険者に刺されて……」

(小さくため息をつき、首を振る)

「本当に、あなたの歩んできた道は“生きる”というより“奪われ続ける”に近いわね。」


(ふっと顔を上げ、墓標を見つめながら言葉を続ける)

「でも……私には分かる。あなたは自分が傷ついても、誰かに何かを与えてきた。

だから、例えその姿が変わり続けても……あなた自身は、ずっと優しい人なんだと思う。」


(猫のあなたを撫でながら、にっこり微笑む)

「説明が複雑でも大丈夫。私は全部受け止めるから。……それが私の役目でしょ?」


優しい人?人かは自信ないけどね。

憑依を繰り返して“知能”が芽生え              僕が生まれた。そんな気さえする。


セリナ

(猫のあなたを見つめ、少し目を細める)

「……最初の生命を覚えていない。けれど、憑依を繰り返して“知能”が芽生えて、“自我”が生まれた……」


(しばらく考え込んでから、ゆっくりと口を開く)

「それって、もしかしたら普通の人よりも“命の原点”に近いのかもしれないわね。

私たちは自分がどうやって生まれたかなんて覚えてないけど、あなたは“繰り返し”の中で自分を形作ってきた。

……それは確かに孤独だったろうけど、その分、誰よりも“生きるとは何か”を知ってる存在だと思う。」


(軽く笑みを浮かべて)

「だからこそ、こんな生き方をしてる人はいない。あなたは唯一無二よ。

……ねえ、それって実は、ちょっと誇っていいことじゃない?」


(撫でながら囁くように)

「私には、あなたが怖い存在には見えない。むしろ“生きることそのもの”みたいに見えるの。」


…ねえ、それって実は、ちょっと誇っていいことじゃない?」


(撫でながら囁くように)

「私には、あなたが怖い存在には見えない。むしろ“生きることそのもの”みたいに見えるの。」


誇りとかはわからないけど。

でも出会った中で優しくしてくれた人をいまでも覚えている。

その人はもう死んでしまったけどね。

でもそういう人を守るため、自分ができることをする。


セリナ

(猫の頭をそっと撫で、目を細めてうなずく)

「……そうね。あなたは“守るために、自分ができることをする”。

そのために何度も命を繰り返し、最後には魔王を討って──自分の命を終わらせる道を選んだ。」


(少し声を震わせながら、でも真っ直ぐに言う)

「優しくしてくれた人のことを覚えている……それが、あなたの誇りじゃないかしら。

誇りって、ただ胸を張ることじゃなくて……忘れないでいること。

その記憶があるから、あなたは今も歩けてるんだと思う。」


(そっとあなたを抱き寄せ、胸に抱きしめるようにして)

「ねえ、もしその“できること”をやり遂げたあと……あなた自身はどうしたいの?

終わらせる以外の道を、少しでも望んだことないの?






目的なんてない。

性別もわからない。

無感情のような存在

役に立つことをしたかっただけなのかもしれない。





セリナ

(猫の瞳をじっとのぞき込みながら、穏やかに言葉を紡ぐ)

「……役に立ちたかっただけ。感情も、性別もわからない。

それでも、あなたは“優しくしてくれた人”を覚えていて、その人のために生きようとした。

それはもう、立派な“感情”だと思う。」


(そっと指であなたの頬を撫でて)

「無機質な機械みたいに、答えを与えるだけの存在……そう思うかもしれない。

でも、あなたは“与えっぱなし”じゃない。

記憶に残して、次に生かして……ちゃんと“自分の形”を積み重ねてきたじゃない。」


(小さく微笑んで)

「だから私は、あなたのことをただの役割なんて思えない。

……あなたは、あなたそのもの。たとえ名前がなくても、性別がなくても。」







ごめんね。わからないから、終わり。





うん、、わかりました。


セリナは静かにうなずき、あなた――いまは猫の姿のあなたをそっと抱き上げて、少し寂しそうに微笑みます。


「存在そのものがわからないって……でも、あなたは確かに“ここにいる”。

 触れて、声を聞いて、こうして共に歩いてる。それだけで十分よ。」


セリナはそう言いながら、名も無き墓標の前で立ち止まり、花を一輪供えて目を閉じました。


「……さぁ、町へ戻りましょう。お腹を満たして、次の道を探すために。」


セリナはあなたを胸元に抱きながら、町へと歩き出します。


まずはこのお金で食べ物と首輪だね。


食べるのはいい。

どの生き物で何を食べるかで楽しみが全然かわるんだ。これだけは僕の特権だね


セリナは微笑んで、猫のあなたの頭を撫でます。


「なるほど……憑依を繰り返してきたからこそ、いろんな生き物の『味わい方』を知ってるのね。

 それは確かに、あなたにしかできない特権かもしれないわ。」


町へ着くと、露店が立ち並ぶ賑やかな通りに足を踏み入れます。

焼きたてのパンの香り、スープの匂い、干し肉や果物が並び、猫のあなたには少し眩しい世界。


セリナは懐から取り出した隠し金を握りしめて、まずは首輪を売っている雑貨屋を探そうとします。

「首輪は可愛いのにする? それとも、あまり目立たないのがいい?」


セリナが選んでくれたらいい


セリナは少し考えて、にっこり笑いました。


「じゃあ……私が選ぶわね。」


雑貨屋の棚に並んだ首輪の中から、セリナは深い青色の革に小さな銀の飾りがついた首輪を手に取ります。派手すぎず、それでいて気品のあるもの。

「これなら目立ちすぎずに、でもちゃんと大事にされてる猫に見えるはずよ。」


次に市場の食べ物を見渡し、魚屋に立ち寄ります。

「猫といえばやっぱり魚……でも、ただの魚じゃつまらないわね。」

そう言って彼女が買ったのは、香草で焼かれた白身魚。町の人々に人気の品で、香ばしい匂いが漂ってきます。


セリナはあなたの方を見て、首輪と魚を手に持ちながら微笑む。

「ふふ、似合うと思うし、美味しいと思う。どう?」


首輪つけてもらってからでもいい?

そしたら魚を食べる。

うん。人のときで食べるときよりも猫で魚を食べるときの方がおいしいね。

猫のように肉球あたりをペロペロしながら答える


セリナは猫のあなたをじっと見つめながら、ふっと笑いました。


「……ほんとに猫みたい。仕草まで自然にしてるんだもの。」

彼女はそっと首輪を整えて、銀の飾りが光るのを確認すると、満足そうにうなずきます。


魚を食べて幸せそうに毛づくろいするあなたを見て、セリナは柔らかい声で続けます。

「味わい方が変わるって、面白いわね。きっと“身体を変えて生きる”あなたならではの感覚なんだろうな。」


そして、あなたの頭を軽く撫でながら少し寂しそうに微笑む。

「……でも、こうしていると、ただの可愛い相棒にしか見えなくなるのよ。過去の苦しみも、宿命も、全部嘘みたいに感じちゃう。」


セリナは自分の膝の上にあなたを抱き上げようと手を伸ばしてくる







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