幸せになってほしいな
今度は亜里沙が景子や日向を誘います。亜里沙の相談とは‥‥
今度は亜里沙から、
「次の土曜日にランチできない? 相談したいことがある」
といったメールが日向と景子に届いた。
「亜里沙ったら何かしらね、私はオッケーよ」と景子が言いながら返信する。
日向が怜に言う。
「怜さん! 土曜日に亜里沙と景子さんとランチしてくるね」
「そうか」
「ん‥‥? 亜里沙が、怜さんもご都合よろしければ来ていただけると助かりますって‥‥」
「えっ俺も行くのか? まぁ大丈夫だが‥‥」
そういうわけで、指定されたお店に亜里沙、景子、日向、怜が集合した。
「うわぁーここのランチ行きたかったのよね! ちょっとお高いんだけど天井も高くて‥‥ゆったり過ごせるわ♪ ねぇ怜さん♪」と景子。
「怜さん、来てくださってありがとうございます♪ こんな店なかなか来れなくて」と亜里沙。
「おい、この流れは‥‥」怜は以前も3人に高級チョコレート店に連れて行かれ、奢ったことを思い出した。
「怜さん‥‥僕‥‥ここの一番おすすめの料理食べたいなぁ‥‥」と日向まで可愛く言うので、
「わかったよ‥‥ご馳走する」と怜は言った。
前菜から始まり、ゆったりとランチコースのメニューを味わう4人。しかもプラス料金でデザートワゴンから食べ放題、というものも選ぶので、怜はため息をついていた。
‥‥またやられたか。まぁ、ひなが喜ぶからいいか。
「それで亜里沙、相談って何なのよ」と景子が切り出す。
「あのさ‥‥プロポーズされた」
3人が吹き出しそうになる。
「プ‥‥プロポーズ‥‥!」日向はその言葉を聞いただけで‥‥顔が真っ赤になりそうであった。
「すごい! おめでとう! 亜里沙! いい話じゃないの」と景子も言う。
「ありがとう。そうなんだけど‥‥不安になっちゃって」と亜里沙が言う。
「もうマリッジブルーになってるの?」と景子が不思議そうに言う。
「あたしはもう少し先でもいいかなって思ってたんだけど、意外と早かったというか‥‥」
「学生時代からそのサークルの先輩と付き合ってるんでしょう? もうすぐ5年ぐらいだと考えたら‥‥全然早くないと思うけど」と景子。
「だってまだ入社して3年だもの。もう少し‥‥せめて5年ぐらいでって‥‥」
「3年も5年も大きく考えたらそんなに変わらないわよ、それよりも‥‥プロポーズされることが奇跡なのよ? いま逃すと結婚できないかもよ?」
景子と亜里沙が話しているのを聞きながら、日向は考えていた。自分達は結婚はできないんだろうな‥‥そういう話ができるの‥‥羨ましいな。
もちろん結婚という形にとらわれずに怜と一緒にいられたら‥‥それで良いのだが。
「あの‥‥怜さんは‥‥どう思われますか?」と亜里沙が怜に尋ねる。
もしかすると自分にも聞きたかったんだろうか。そう思いながら怜は話す。
「せめて入社5年ぐらいまではって言ってたよな? 結婚式を挙げるとして準備していたら‥‥今から最低でも1年ぐらいはかかるぞ?」
「え? 結婚式ってそんなに準備がかかるんですか?」と亜里沙。
「そうよ‥‥両親に挨拶して、結納して結婚式の招待客決めて、住む場所決めていたら‥‥入籍するのまぁまぁ先になるわよ? 今、プロポーズ受け入れておいてゆっくり準備すればいいじゃないの」と景子が言う。
「そうなんだ‥‥何となく時間かかりそうって思ってたけど‥‥それもそうか‥‥」と亜里沙。
「あとは‥‥君にとっては突然のことかもしれないが、彼はここまで伝えるのに心の準備もしていただろうし‥‥色々と考えてくれていたと思う。5年ぐらい付き合っているなら、彼は覚悟を持ってくれていると思うよ。付き合っているとはいえ、プロポーズは‥‥特別なものだからな。一生に一度だ。頑張ってくれている彼のことも‥‥見てほしいなって俺は思う」
今の怜さん‥‥格好いい‥‥男の覚悟って‥‥格好いい‥‥と思いながら怜をじっと見つめる日向。
「僕も‥‥タイミングって大事だと思うな‥‥あの先輩なら亜里沙のこと幸せにしてくれるよ」と日向。怜が格好いいことを言った後に、自分がこう言うのが少し恥ずかしかったが、亜里沙には幸せになってほしいと思うのだった。
「景子‥‥怜さん‥‥日向‥‥ありがとう。あたし、プロポーズ受け入れる。けど‥‥うまくやっていけるのかしら」
「そういう心配事も彼に相談すればいい。完璧になろうと思わなくていいんだ。2人で一緒に乗り越えていくものさ」と怜が言う。
やっぱり‥‥今の言い方も格好いい‥‥怜さん‥‥格好いい‥‥僕にもそう言ってほしいなぁ‥‥と思いながら、またしても憧れの眼差しで怜を見つめる日向。
「フフ‥‥さっきからいちいち日向くんが怜さん見てて面白いんだけど」と景子。
「え? 気づいた?」と日向。
「‥‥バレバレだよ、ひな‥‥」と怜にも気づかれていた。
「あ‥‥つい‥‥亜里沙の話なのに‥‥」
「いいわね日向。こんなに頼りになる怜さんと一緒にいられて」と亜里沙も言う。
「うん‥‥!」
※※※
帰り道、日向が怜に話す。
「いいなぁ亜里沙、きっと幸せなんだろうなって思ってたけど‥‥結婚に向けて色々考えないといけないこともあるんだね」
「そうだな、結婚式終わったら‥‥現実世界だ」
「怜さん‥‥」
怜さんは‥‥僕達のこと、何か考えてくれているのかな‥‥結婚はできないけど‥‥パートナーになれる何かがあったような‥‥
でも‥‥今のままでいいんだよね‥‥?
僕はどうしたいのだろう‥‥?
学生時代はただただ怜さんと一緒にいるだけで幸せで、その先のことまで考えていなかった。社会人になってもこの関係は変わらないままで‥‥
本当にそれで‥‥いいのかな‥‥
「ひな? どうかしたか?」
「ううん‥‥何でもない‥‥」
日向はそう言いながら怜と腕をぎゅっと組んだ。
「僕達は‥‥このまま一緒にいられる?」
「一緒にいられるに‥‥決まってるだろう?」
「うん‥‥」
家に帰ってキッチンで夕食の支度をする2人。同棲していなかったらこういう風に一緒に料理をすることもなさそう‥‥だとしたら、亜里沙が最初は少し不安になるのも分かるかも。そう思いながら日向は怜に言う。
「一緒に住んでるって‥‥いいね」
「ん? 改めて考えてたのか?」
「うん‥‥亜里沙達はこれから一緒に住むでしょう? 僕達は‥‥もう長いから」
「ひなは‥‥俺に飽きてないか? フフ‥‥」
「飽きてない‥‥今のところは。ハハ‥‥」
「今のところは、ねぇ‥‥」
「怜さんも‥‥こんな僕で飽きてない?」
「ひなは見ていて飽きないよ」
「怜さん‥‥」
ああ‥‥僕のこと飽きないって‥‥
やっぱり‥‥怜さんが好き‥‥何年経ってもこう思っている僕って‥‥変じゃないよね?
「ひな、手が止まってるよ」
「あ‥‥つい‥‥怜さんのことを考えてしまいました」
「フフ‥‥俺もひなのことを考えてたから、大丈夫だ」
「本当?」日向がぱぁっと笑顔になった。
「いちいち喜んでるの‥‥可愛い過ぎるって‥‥」
何年経ってもこんな僕だけど‥‥いつだって怜さんがそれに応えてくれるから嬉しいな。
「怜さん‥‥いつもありがとう」
「こちらこそ」




