久々のバーにて
久々に怜のバーに行く日向、亜里沙、景子です。景子は和真を連れて来ます。
景子から、
「金曜日の夜、ルパンに行けそうだけど久々にどう? 後輩がいるから日向くんもよろしければ」
といったメールが亜里沙に来た。
そういえば怜さんがランチ営業メインで出勤することになってから、夜のバーには行ってないなと思った亜里沙。
「久しぶりのバーだね、私も行きたい」と返信して日向も誘うことにした。
ソファに座っていた日向が怜に言う。
「怜さん! 亜里沙と景子さんともう1人‥‥景子さんの後輩がバーに行くんだって。僕も行こうと思うんだけど‥‥怜さんは夜はもう来ないんだよね?」
「ああ、そうだな‥‥たまになら行ってもいいけど‥‥あの2人と後輩‥‥?」
誰なんだ。亜里沙と景子であればわかるがもう1人の謎の人物‥‥まさかとは思うが陽菜みたいな後輩じゃないだろうな?
男性からも女性からもロックオンされそうな日向である。しかも夜は余計に心配だ‥‥ちょっとだけ行くか。
「皆が来るならその日の夜‥‥少しだが出勤するよ」
「えっいいの? 怜さん無理しないでよ?」
「大丈夫だ」
大人しく待っている方が精神的に良くなさそうだからな。
「ありがとう! 久しぶりに怜さんのバーに行けるの楽しみだな♪」
日向が怜に抱きついて喜んでいる。
ひな‥‥可愛い。そんなに可愛い笑顔を見せてくれるならいつでもバーに行きます、と言いそうになってしまった。
「怜さん‥‥僕が飲んでたカクテルの作り方、覚えてる?」
「覚えてるよ」
「ふふ‥‥」
※※※
そして金曜日となり、日向は仕事終わりに怜のバーに向かった。
「いらっしゃいませ」と言われてカウンターへ案内される。黒基調のレトロなバーは夜の落ち着いた雰囲気で、日向は少し緊張したが徐々に懐かしさを感じた。
あの時から変わらないな‥‥
カウンターに行くと怜がいた。白シャツに黒のベスト、前髪を上げたバーテンダーの姿を久々に見た日向はやはり‥‥見惚れていた。ランチ営業の怜さんの方が格好いいなんて言ってたけど、もともとはバーテンダーの怜さん。素敵な怜さん‥‥
「いらっしゃい、ひな」
「‥‥」
「ひな?」
「あ‥‥つい‥‥怜さんのその格好が久々で‥‥ドキドキしちゃった‥‥」
「可愛いな、ひなは」
日向は何も飲んでいないのに、すでに顔を赤らめている。
そしてすぐに亜里沙がカウンターにやって来た。
「久しぶりね、日向。元気?」
「うん、何とかやってる」
「怜さんのバーっていうのも久々だわ」
「そうだね」
少しした後に景子が和真を連れてバーに入って来た。
「久しぶりね、あ‥‥怜さんいる!」と景子が言う。
「今日だけ夜の部、出勤だ」と怜が言う。
「日向くんのことが心配だったんでしょう?」と景子に言われ、
「まぁ‥‥せっかく皆が集まるしな」と怜が言いながらカクテルの準備をする。
「あ、こちら大学の後輩だった和真くんよ。和真くん、バーテンダーの怜さん。あとは友達」
「ちょっと景子ったら‥‥怜さん以外の私達の紹介が雑なんだけど」と亜里沙。
「ハハハ‥‥ごめん」
「はじめまして。景子先輩と同じ病棟の看護師です、和真です」と和真が挨拶する。
「いらっしゃい、来てくれて嬉しいよ。どうぞごゆっくり」と怜が言う。
男性1人になるのを避けて日向を呼んだのか、と怜が思う。見た感じ‥‥日向が狙われる可能性は低そうだな。
「さすが先輩‥‥こんなに大人っぽいバーに通っていらっしゃるなんて‥‥」
「いや、大学2年の途中ぐらいまでよ。それ以降バーに行くのは今日が初めて。怜さんも普段はランチ営業の時しかいないの」
「そうなのですね、怜さんの方が景子先輩のこと‥‥よく知ってたりして」と和真が言う。
「ハハ‥‥そんなことないぞ」と怜。
「和真くん、怜さんのおすすめカクテルとか美味しいよ」と日向が言う。
「じゃあ、それをお願いします」と和真が注文した。
和真がカクテルを飲みながら喋っている。
「景子先輩は本当に尊敬できるんですよ‥‥この前なんか‥‥」
「和真くんぐらいなのよ、褒めてくれる人」と景子が言う。
「景子、幸せそうね」と亜里沙はニヤリとした表情を見せた。
「まぁそうねぇ、今は友達以上にはなったかなぁって感じで‥‥」
「僕、景子さんに相応しい男性になれるよう頑張っております」と和真が照れながら言う。
「そうなんだ‥‥お似合いだと思うよ。体調悪くなったら2人に相談すればいいし」と日向。
「日向くん、私達は便利屋じゃないんだから。本当に体調悪くなったら近くの病院に行ってね?」と景子に言われる。
「俺も調子悪かったことがあるからな‥‥医者と看護師さんって聞くだけで頼りにしたくなる」と怜。
「怜さんのご相談ならいつでも!」と景子が言うので、
「景子さん‥‥怜さんばっかり‥‥」と日向が呆れていた。
「あ‥‥そういえば‥‥怜さんと日向くんはうまくいってる?」
景子はランチに来た時に怜と裕子の仲睦まじい様子を見ていたため、少し気になっていたようだ。
「そうだ‥‥景子さんが言ってくれたおかげだよ。怜さんは優しいんだけど、僕以外の人にも優しいからさぁ‥‥息子さんとも公園で遊んじゃうから僕びっくりしちゃった」と日向が言う。
「‥‥え? あの女性店員、子どもいたの? 怜さんと遊ばせるって‥‥何て人なのよ」と景子。
「いやいや‥‥俺が悪かったんだよ」と怜が言うが、
「怜さん、優しいのは良いことだけど、それはないわ‥‥」と景子が言う。
「そうね‥‥日向は大丈夫だった?」と亜里沙。
「大丈夫じゃなかったよーほんと辛かったんだからー」と日向が亜里沙と景子に言う。
「日向さん、わかります‥‥親子みたいに見えると複雑ですよね‥‥」と和真も言ってくれた。
「うん‥‥家族の雰囲気出来上がってたからさ‥‥ん? 和真くん‥‥僕と怜さんの関係知ってるの?」
あまりにも和真が自然に話に入ってくるので、日向は不思議に思った。
「え‥‥お付き合いされているような雰囲気でしたので‥‥違いました?」と和真。
「すごい‥‥初めてこっちから説明せずに理解してもらえた‥‥」
男性同士のカップルなんて何も言わなければまず気づかれない。これには怜も驚いていた。
「日向さん先ほどから怜さんの方を見る回数が‥‥何というか‥‥多いなとは思っていたのですが‥‥」と和真。
ひなが分かりやすいのもあるな、と思う怜である。
「さすが看護師さん‥‥じゃあこれから怜さんに関する相談も2人にしよっと」と日向。
「ひな、それはやめてくれ‥‥」
今以上に言われるのは‥‥もうこりごりである。
「それにしても良かったわねー景子♪ こんなにいい彼氏ができて」と亜里沙。
「か‥‥彼氏だなんて‥‥まだ‥‥ねぇ?」と景子が和真の方を見る。
「僕はそのつもりで、と思っているのですが」と言われて景子が恥ずかしそうにしている。
‥‥あの景子がこんな顔するんだ、と思う亜里沙。
‥‥あの景子さんが黙っている、と思う日向。
「景子のことを‥‥よろしくお願いします、和真くん」
「僕からも‥‥よろしくお願いします」
亜里沙と日向がまるで保護者のように言っている。
それを見ていた怜はクスっと笑っていた。あの景子のことだ、亜里沙や日向に和真のことを見てもらいたかったのだろう。大胆に見えて慎重な所がありそうだからな、彼女は‥‥
「僕が必ず‥‥景子さんを幸せにして見せますので‥‥」
「和真くんたら‥‥」
まるでこれから結婚するかのような言い方である。
「いいな‥‥あたしもそういうこと言ってもらいたい」と亜里沙。
「いいな‥‥僕もそういうこと言ってほしい、怜さん」と言う日向に対して、
「何でここで言うんだよ、フフ‥‥」と怜が笑う。
ただ‥‥将来のことって考えた方がいいのか‥‥?
怜はそう思いながらグラスを拭いていた。




