どうして‥‥?
陽菜が怜の店に行きます。そして日向を見つけて‥‥
陽菜がベッドの上でスマホを見ている。日向さんと一緒に住んでいるプロのシェフ‥‥どんな人なのかが気になって仕方ない。
日向さんのお弁当の内容は何となく頭に入っている。ああいう料理を出すお店を探せば、ひょっとしたら日向さんの彼女‥‥いや彼女以上と言ってた人を見れるかもしれない。
確か日向さんはあの路線のあの駅が最寄り駅だと言っていた。その周辺で「ランチ おしゃれ」と検索してみる。うーん‥‥もう少し絞らなければ‥‥そういえばお惣菜もあって健康的な感じもした。「健康 女性向け」といったキーワードも入れてみる。するといくつか候補が出てきた。
「‥‥『ルパン』の健康ランチプレート。これ‥‥似てる‥‥夜はバーでこのプレートは昼だけ。しかも平日のみかぁ。ん? ちょっと待って‥‥」
陽菜はカレンダーを見る。たまに休日出勤があるため平日休みが来週にちょうど入っている‥‥よし、行ってみよう。
そんなわけで、平日休みの日に陽菜が「ルパン」のランチを狙って店にやって来た。うそ‥‥そこそこ行列だわ。入れるかな‥‥
店がオープンして陽菜はカウンターへ案内される。黒基調のお洒落なお店。夜もきっと雰囲気がいいんだろうな‥‥。
カウンターで怜が作業している。こういうお店って店員さんも皆洗練されているわね‥‥
メニューを見ると、日向のお弁当に入っていた豆腐ハンバーグのプレートがあった。
「いらっしゃいませ、豆腐ハンバーグのプレートですね」と裕子が注文を取りに来てくれた。
お店の中で女性はこの人だけだわ。ということは‥‥この人が日向さんと一緒に住んでいる「れいさん」かも。けっこう年上の人ね‥‥だけど優しそうでニコニコしていて日向さんのこと可愛いがってくれそう‥‥
陽菜が妄想に近い想像をしていると、ランチプレートが運ばれてきた。
「うわぁ‥‥美味しそう‥‥!」
陽菜は思わずスマホで写真を撮った。このお惣菜、日向さんのお弁当に入っていたのと似てる‥‥間違いないわ。ここに「れいさん」がいる‥‥
豆腐ハンバーグを一口食べて驚く。美味しい‥‥どうやって作っているのかしら。豆腐と鶏肉の割合が知りたい‥‥
あっという間に食べ終わり、裕子がお皿を下げに来てくれた。
「あ‥‥あの‥‥すごく美味しかったです。この豆腐ハンバーグ‥‥作り方って教えてもらえたりしますか?」と陽菜が言う。
「ありがとうございます。申し訳ないのですが、当店オリジナルのものでして、そういったことはお伝えできないんです」と裕子。
「ですよね‥‥すみません。あまりにも美味しかったもので」
「ありがとうございます」
そして陽菜が食後のコーヒーを飲んでいると、裕子が怜と親しげに話しているのを見た。さっきから思ってたけど‥‥ご夫婦でお店をやっているのかしら。
じゃあ日向さんと一緒に住んでいる「れいさん」は今日は来ていないのかな‥‥他に女性の従業員がいないし‥‥
陽菜は店を出て歩く。駅前にショッピングモールがあるから寄っていこうかな。日向さんの住む街‥‥いい所ね。
ショッピングモールで買い物をしてスイーツカフェにも寄ったため、気づいたら夕方となっていた。
この駅いいわね、半日過ごせるじゃないの、と思っていると雑貨売場に‥‥なんと日向がいることに気づいた。
「あ、日向さん!」と呼んだが遠かったのか日向は気づいていない。日向は腕時計を見て何かに気づいたのか、急いで別の方向へ向かって行った。
日向のことが気になった陽菜は後を追っていく。
※※※
以前に怜さんが公園で翼くんとそのお母さんと一緒に過ごしていたことがあった。僕は怜さんのことを信じているけど‥‥今でも公園で遊んでいるのだろうか。
明日の平日休みの時に公園まで見に行ってみようかな。いなければ安心できるし‥‥
そう思った日向は午後にショッピングモールで買い物をしつつ、夕方頃に公園へ向かった。
公園へ着くとそこには‥‥前と同じ、怜と翼、そして裕子がいた。
「うそ‥‥」
どうして一緒に過ごしているのだろう。翼くんのため? でも‥‥あのお母さん、前よりも幸せそうに見える。怜さんのこと‥‥気にかけてるような‥‥
「怜さん‥‥どうして‥‥?」
日向が苦しそうにそう呟いたのを‥‥後を追ってきた陽菜が聞いてしまった。今、確かに「れいさん」って言った‥‥ということはやっぱりあの女性が「れいさん」で、だけど彼女には夫がいて‥‥叶わない恋をしているってこと? それはいけないことだわ‥‥こうなったら‥‥私が‥‥
「日向さん!」
「え‥‥? 陽菜さん? どうしてここに?」
「用事があってこの駅に来たんです。さっきまでモールで買い物をしてこの辺りを散歩していたら、たまたま日向さんをお見かけして‥‥」
「そうなんだ‥‥」日向は元気がない。
「日向さん、大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」
「大丈夫‥‥」
日向さんがこんなに落ち込んでいる‥‥これはチャンスでは‥‥
「日向さん‥‥!」
陽菜は日向に抱きついた。
「え‥‥陽菜さん?」
「私は日向さんが心配です、会社にいる時と全然違うじゃないですか‥‥私で良ければ‥‥私であれば‥‥日向さんのそばにいますから‥‥!」
「ちょ‥‥ちょっと陽菜さん‥‥」
公園で遊んでいる翼と怜であったがもう帰る時間となったため、怜が公園の出口に向かう。するとそこに、日向と女性が抱き合っているのを見つけた。
ひな‥‥?
怜は驚いて声が出ない。
「どうかされましたか?」と裕子に言われる。
「あ‥‥いや‥‥何も‥‥」
「おじちゃんまたねー!!」
その翼の声にハッと日向が気づき振り返ると、怜と目が合った。
「‥‥」
怜はそのまま去ってしまった。
「怜さん‥‥待って! あ‥‥陽菜さん、ごめん。また明日ね」
日向が怜の後を追う。その場に残された陽菜は思う。日向さん‥‥そんなにれいさんのことが好きなの‥‥? 家庭のある人なのに‥‥どうして‥‥?
陽菜は仕方なく帰ることにした。まさか今日でこんなに色々とわかってしまうなんて。
今の私にできることは‥‥辛そうな日向さんの近くにいて、出来るなら話を聞いて‥‥そして彼が私の方に振り向いてくれるのであれば‥‥今度は私が日向さんを‥‥幸せにしてみせる‥‥!




