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【改稿中】バーテンダーのおじさんは僕の初恋  作者: 紅夜チャンプル
4. 社会人編 〜ふたりのこれから〜
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片想い 3

陽菜の片想い編その3、怜が対抗しています。

翌日の朝、

「おはようございます! 日向さん」

「おはようございます、陽菜さん。朝一でミーティングだったよね」

「はい! 準備は済んでます」

朝一でミーティングがあるので、日向さんが昨日のお弁当箱を返してくれるのは昼休みかしら、と陽菜が思う。


そして午前中の仕事も捗り、昼休みとなる。日向は陽菜にお弁当箱を返した。

「昨日はありがとう。これ返すね」

「あ‥‥ごめんなさい。洗ってもらっちゃって‥‥また‥‥作ってきてもいいでしょうか?」

「ううん、大丈夫。今日は僕もお弁当持ってきたんだ。やっぱり節約って大事だよね。陽菜さんに言われて気づいたよ」

「え?」


陽菜も自分の弁当を用意してきたので日向と一緒に休憩スペースへ向かった。日向が弁当箱を取り出し、蓋を開けると‥‥そこには数種類のお惣菜と豆腐ハンバーグ、スープジャーにはミネストローネだろうか。本格的な料理が詰められていた。

「すごい‥‥」と陽菜は驚く。自分の弁当の中身が恥ずかしくなってしまった。もちろん、陽菜も料理が得意なので上手に出来ているがクォリティが違う。手作りなのはわかるけどまるで‥‥お洒落なカフェで出てくるような内容だ。


そう、これは怜が気合いを入れて作ったもの。自分の店のランチ営業で作るようなメニューを綺麗に盛り付けた。

「向こうが弁当で勝負を仕掛けてきたんだ、こっちだって弁当で対抗してやる」

朝にそう言いながら日向の弁当を作っていた怜。

「え、勝負を仕掛けてきたのかな‥‥?」と日向は言っていたが、

「ひなは渡さん!」と怜が言いながら作業しているのを見て、それ以上は言わずに見ていた。



「あはは‥‥昨日陽菜さんのお弁当のことを話したら、『新人さんに作らせるのは悪い』って言われて‥‥作ってもらっちゃった」と日向が言う。怜が対抗していただなんて言えない。

「いえ、そんな‥‥でもこんなに素晴らしいお料理を作ってくださる方がいらっしゃるのに私ったら勝手なことをしてしまって‥‥すみません」

「ううん、僕も最近コンビニとか外で食べたりしていたから‥‥たまにお弁当作ってもらえるのっていいなと思って」


日向さんにお弁当を作ってくれる料理がものすごくうまい人って‥‥誰かしら。

そう思いながら陽菜は日向に聞いてみることとした。

「そのお弁当を作られたのは‥‥ご家族の方ですか?」

「家族というか‥‥それに近い人」

「近い人‥‥?」

「一緒に住んでいる人だよ。2人暮らし」

「え‥‥?」


陽菜は混乱する。家族みたいな人と2人暮らしって‥‥結婚前提の人と同棲しているってこと? だけど彼女はいないと皆が言っていた。いや、皆が勝手に言ってるだけで本当のことは‥‥本人に直接確かめるべきだ。今聞いておかないと。

「あの‥‥プライベートなご質問ですみませんが‥‥その方は彼女さんということでしょうか?」

「彼女‥‥?」

陽菜が緊張してその答えを待つ。


「彼女じゃなくて、彼女以上の存在」

「え‥‥」

彼女以上の存在‥‥そんな人がいたなんて。陽菜の動きが止まってしまった。

「あ‥‥ごめんね。実は彼女とか彼氏という言い方が苦手で‥‥社内でそういう話をすることも避けていたんだ。僕って不器用だから、その人のことばかり考えちゃって‥‥仕事ができないと困るからさ。まずはこの職場で一人前になるって決めた。その人がいつも僕の背中を押してくれるから、毎日頑張ることができるんだ」


日向は正直でまっすぐで仕事に対しても、そして「その人」に対しても誠実なのが伝わってくる。ますます日向は素敵な人だと思う陽菜。だけど今の彼がいるのは‥‥一緒に住んでいる「その人」のおかげなんだ‥‥陽菜は料理でも人間的にも「その人」には敵わないことがよくわかった。

「いいですね、そういう方がいらっしゃるなんて‥‥あ、もしかして私を送ってくださった時に電話されていた‥‥『れいさん』という方ですか?」


「怜さん‥‥」

普通に電話聞かれてたんだ‥‥そう思いながら日向の顔が徐々に赤くなっていく。

「日向さん‥‥そんな顔もされるのですね」

「恥ずかしくなってきちゃった‥‥怜さんのことを考えるとこうなっちゃうから、仕事の時は切り替えないとね」

「ふふ‥‥そうですね。お話していただきありがとうございました」

「いえいえ‥‥」


陽菜がふと思いつく。

「私、もっと料理の腕を磨きたくて‥‥もしよろしければ、その『れいさん』に弟子入りさせてもらえないでしょうか?」

「は?」

「あ‥‥すみません私としたことが‥‥」

料理の腕をあげたいのが半分、もう半分は‥‥日向の彼女を見てみたいという好奇心である。きっと『さん』付けで呼んでいるから年上の彼女だわ‥‥

「えーと‥‥多分無理だと思う。この料理は企業秘密だって言ってたから」

「そうですよね‥‥企業秘密って、本格的な料理人みたい」

「うん‥‥プロだから」

「そうなんですね、シェフさんとか?」

「まぁ‥‥そんな感じ」

「すごい‥‥」



※※※



「ただいま」

「おかえり、ひな」

「怜さん‥‥! 多分うまくいったよ!」

そう言って怜に飛びつく日向である。

「陽菜さん、撃退できたか」

「怜さん‥‥撃退って言い方‥‥ハハ」


ソファで今日の話をする日向。

「何だと? 弟子入りって‥‥お前の相手をこの目で確かめたいのだろうか‥‥」

「だけど料理の腕を磨きたいとも言ってたし‥‥断っておいたけどね」

「油断ならないな、おそらくもう大丈夫だと思うが‥‥ひな、気をつけるんだぞ?」

「うん!」

「それにしても‥‥俺のことばかり考えて仕事ができなくなるって‥‥うまいこと言ったな」

「それは‥‥本当のことだから‥‥」


日向が怜の顔を見つめる。

「僕がどれだけ怜さんのことが好きか‥‥知ってる?」

日向が怜に寄り添う。

「フフ‥‥甘えん坊だな‥‥俺だってひなのことしか考えていない時があるから、職場では注意しないとな、お互いに」

「うん‥‥あのお弁当食べている時も、怜さんで頭いっぱいだったんだから」

「そうなのか? じゃあこれからどうする? さすがに今日だけ作って終わりというわけにもいかないだろう?」

「怜さんも大変そうだし‥‥週1回ぐらいかな。怜さんのお弁当の日を作って‥‥その日の昼休みは怜さんで頭いっぱいにして‥‥午後から頑張るんだ」


ひな‥‥可愛い過ぎるのだが。お弁当作っただけでそこまで言ってくれるなんて‥‥可愛い‥‥可愛い‥‥ああ可愛い‥‥

「本当にひな、可愛い」

そう言って怜は日向をぎゅっと抱き締めた。

「ちょっと‥‥怜さん‥‥」

「じゃあ週一回お弁当の日にするか」

「ありがとう‥‥怜さん、大好き」

「ひな‥‥」

「怜さん‥‥」

キスをしてしばらくソファで戯れ合う2人であった。これでしばらく陽菜のことは大丈夫そうだ。

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