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【改稿中】バーテンダーのおじさんは僕の初恋  作者: 紅夜チャンプル
4. 社会人編 〜ふたりのこれから〜
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家族の姿

裕子や翼と公園で過ごす怜。それを日向が見てしまい‥‥

それからも週に1、2回程度、怜は裕子、翼と一緒に公園に行っていた。

「怜さん、ありがとうございます。ここまで親切にしていただけて‥‥恐れ入ります」

「いえ、自分も楽しいので」

「私、実は離婚して実家に戻って来たのです」

やはりそうだったか。そういう雰囲気があったので、怜は翼や裕子のことは気になっていた。怜自身も両親を早くになくし、親戚の家で育てられたので、その時の孤独な自分と翼が少し似ているような気がしたのだ。翼には母親がいるものの、おじちゃんと呼ばれて笑顔を向けられると何となく嬉しくなってしまう。自分は親戚の家でも可愛いそうだと言われていたため、翼が嬉しそうにしているとホッとする。


「色々あったんだな」

「父親がいなくなって翼はしばらく元気がなかったですし、実家に戻る途中でも疲れていた上に転けてしまったので‥‥あの時は本当に助かりました」

「翼くんが笑ってくれるのが、一番だよな」

「はい‥‥」


そこに、いつもより早く退社した日向が通りがかる。

あれは‥‥怜さん?

一緒にいるのは‥‥誰?

こっそり物陰から見つめる日向。



お父さんとお母さんと子どもに見える‥‥



あれは、僕が夢見た家族の姿。僕の父親は僕が生まれてすぐに事故でなくなり、母親は再婚したものの両親からは見放されていた。再婚相手との間に出来た子ども、つまり妹を可愛がり、僕はいないものとして扱われた。それを助けてくれたのが怜さんだった。

だから僕には‥‥小さい頃にああいう風に両親と遊んだことはない。あの子はとても楽しそうにしている。怜さんにすごく懐いている‥‥


確か、新しいアルバイトの人が幼稚園ぐらいの子どもがいるお母さんだと怜さんが言っていた。きっとその人だ。それなら普通に怜さんに話しかけに行けばいいのに‥‥僕はここから一歩も動けなくなってしまった。


「おじちゃん、もっと押してよ!」

「おっと大丈夫か? 落ちるなよ?」

翼がブランコに乗っており、怜が背中を押してあげている。

「すごーいおじちゃん! ママより上手!」

「あら‥‥翼ったら‥‥」


3人がブランコの所で笑っている。日向の気持ちはぐちゃぐちゃになる。

怜さんのところに行きたい‥‥だけど怜さんもお母さんも男の子も嬉しそう‥‥僕が邪魔してはいけないような気がするぐらいに、3人の世界が出来上がっているみたいだ‥‥

僕は怜さんが好きなはずなのに、あの男の子が怜さんに笑っているのを見ると、このままにしておいた方が良さそうだと考えてしまう。


そもそも怜さんは僕と一緒にいる限り、子どもに恵まれることがないのでは‥‥? 怜さんは子どもが欲しかったのかな‥‥?

日向は固まったように動かないまま、じっと3人を眺めていた。

その後すぐに3人は公園を出てそれぞれ帰って行ったが、日向はまだ動けずにいた。

「怜さん‥‥」


5分ぐらい経ってようやく日向はふらつきながら少しずつ歩き出した。いけない、僕ったら考え過ぎだ‥‥きっとたまたま帰りが一緒になって公園に寄っただけなんだ。もう、考えるのはやめよう‥‥



※※※



「ただいま」

「おかえり、ひな」

「‥‥」

日向が珍しくハグをせずに中に入って行ったので、怜は不思議に思った。何となく顔色も良くない。


「ひな? 大丈夫か?」

「あ‥‥うん、ちょっと疲れていて‥‥」

「食欲あるか?」

「うん‥‥」

今日の夕食は八宝菜。日向は少しずつしか食べられない。怜の顔を見ることもできなかった。

普通に聞けばいいのに‥‥アルバイトのお母さんのことを‥‥なのに‥‥どうやって聞けばいいの‥‥?


よっぽど疲れているのか? と思った怜。何も言わずに様子を伺っていた。


「‥‥ご馳走様でした」

日向は席を立って風呂場へ向かった。

「ひな‥‥?」

ソファにも座らずに風呂場に行くなんて‥‥


そしてお風呂上がりにようやくソファに座った日向。怜が隣に座る。

「ひな‥‥その‥‥今日は疲れたのか?」

「あ‥‥うん」

「お疲れ様」

「怜さんも‥‥お疲れ様」

明らかに泣き出しそうな顔をしている日向。相当辛いことがあったに違いない。

「何かあったのか‥‥?」

「‥‥」

いつもなら何でも話してくれる日向が何も話さない。

「‥‥そういう時もあるよな。いつでも話聞くから‥‥無理するなよ」

怜はそう言って風呂場に行った。


「怜さん‥‥ごめんなさい。今回は何て言えばいいのかわからないよ‥‥怜さんはこれからどうしたいの‥‥? 僕は怜さんと一緒にいていいの‥‥?」

考えれば考えるほど負のループにはまってしまう。駄目だ‥‥明日も仕事がある。切り替えなきゃ。僕はもう泣いてばかりじゃないんだから‥‥よし‥‥


怜がお風呂から上がると日向は既に寝室にいた。

スースー

「‥‥しっかり寝て元気になるんだぞ、ひな‥‥」

怜が日向の髪を撫でながら言った。



翌朝、珍しく怜よりも日向の方が早く起きていた。

「おはよう、怜さん。僕、早く出ないといけなくてさ。もう行くね」

そう言って日向は出発して行った。

「ひな‥‥本当にもう大丈夫なのか‥‥?」

これまで軽い喧嘩はしたことがあったが、その都度話し合ってすぐに仲直りをしていた。今回は喧嘩とは違うように見えるが、日向には怜に言えない何かがあるのかもしれない。かと言って無理矢理聞き出すのもどうかと思う。


「もう少しだけ‥‥様子を見るか」

怜はお茶を飲みながら呟いた。



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