3.普通の高校での奇抜な噂
「ちょっとそこの君、私とデートしてみない?」
「えっ?…………いえ、ちょっと嫌です」
「あ、そこの先輩!私と――」
翌日、門から校内に入ったすぐの広がった空間では、男子を見かけるとひたすら声を掛けている香奈恵の姿があった。
「ええー!なにしてんのよおお」
丁度登校してきた早紀がその姿を目撃し、慌てて駆け寄った。一方の香奈恵は、何を咎められているのかとキョトンとしている。
「昨日電話でやり方はもう少し考えようって、あたし言ったよねえ?」
「考えたよ?だから募集ポスターは貼ってないしさ。あ、そこの男子ぃー!」
「だからそれをやめろ!!」
そう言われた香奈恵は納得していない顔を先に見せながら、声をかけるために伸ばしていた手をだらんと下ろした。なおもその評定を崩さずにらみ続けていると、早紀が口を開けた。
「まぁ、私も考えてきたからさ。とりあえず教室入ろうよ」
「……そうだね」
そういって2人は教室へ戻ったが、すでに予鈴がなるような時間であったため、話は昼休みに持ち越しとなった。
そして昼休みになり、二人は屋上のベンチに腰掛けて弁当を食べることにした。
「なんで屋上なの、いつも教室か食堂じゃない」
「あのねえ、わからないと思うけど、無差別にデート相手を求めるなんて、普通じゃないから。そんな話周りに人がいるとこでできないのよ」
「そうなんだ。それで、何を考えてきたって?」
香奈恵は、心底呆れた表情を浮かべながら言った早希をさらりと無視して、次を促した。
その後、早紀が言った内容は口伝だけで募集するというものだった。ポスターのような目に見えるものは論外だし、そもそも剥がされそうだ。本人が直接募集して回るのも考えたが、中学から香奈恵を知る者に、変わり者だからやめたほうが良いなど言われては困る。
「というわけでね、とりあえずあたしの友達から噂として広めてもらうから、しばらく待っていて。絶対、自分から誘ったり話しまわったりしないでよね。わかった?」
「でも、それじゃ私の魅力で惹きつけることができないんじゃ」
その言葉を聞いた早紀は鼻で笑った。
「魅力って、たぶんマイナスだから見せないほうが良いよ。まぁ、黙ってれば容姿は及第点だけど」
「酷い!私の魅力が何かも言ってないのに。マンガやゲームが好きなこととか、誰でもデートしてあげる優しさとか、色々あるんだから」
「1つ目はともかく、2つ目は単に尻軽女って思われるだけじゃないかなあ……。まぁとりあえず、わかってとは言わないわから、我慢していてくれるかなあ?」
そういわれた香奈恵は小さくうなずき、だし巻きを口へ運び咀嚼するが、咀嚼が急に激しくなっている。その様子を見た早紀は香奈恵が全然納得してないことを感じ取った。
「なんだか、納得言ってないみたいだけどさ、とりあえず待ってなよ。信じてみて……って言いたいところだけど、別に信じなくていいかからさあ」
「うーん、その間私は今まで通りにしていていいの?」
「あ、ダメ」
早紀はあわてて否定した。
香奈恵の言う今まで通りというのがここ最近の今まで通り、つまり手当たり次第可能性のあるまたは説得ができる相手にアプローチをかける事だというなら、そのことがこれから噂を広める相手の耳に入るとデメリットしかない。早紀はそう考え否定した。
一方で、あれもダメ、これもダメと言われている香奈恵には不満がつのる。
「私はいつまでまってれば良いわけ?」
「二週間くらいかなあ」
「長っ!」
「と、言うと思っていたので一週間でもオッケーでぇす☆」
「……そう。待てるかな……」
いまいち待てる自身がないと感じながら香奈恵は返事をする。
「まぁまかせてよ。一週間後の報告を楽しみにしてて!」
「……ありがとう」
とりあえず、まかせてみようかなと思う香奈恵だった。
「ねぇ、まだなにもないの?」
それは、それから4時間も経過した放課後のことだった。
「はやすぎるよね」
それは、あれから4時間が経っただけの放課後のことだった。
「授業中に少しはLINEで伝えたけど、これからだからね、話が伝わるのは」
「そっかあ……、じゃあやっぱり私が直接話しかけるべきじゃないの?」
早紀は友人のあまりのせっかちぶりにため息しか出なかった。
「あ、そうだ。直接言う子とかもいるからさ、今日は先に一人で帰っといてくれる?」
用事があるから、と早紀はそう宣言した。二人は、小学校の集団登校からほとんど共に登下校をしているために、揃って変えるほうが当たり前となっていた。
「私のためにありがとうね。早く報告ちょうだいね」
「そう思うなら、のんびり待っていてくれないかなあ」
「私の中の少年心がそうさせてくれなくて」
少年なら、いっそ恋に憧れなんか持たないで欲しいと早紀は思いながらも。
「できるだけ頑張るね」
と、心にも無い返答をし、早紀はその場を去っていった。
一人残された上、今日あれだけ言われた香奈恵は、仕方がないので大人しく帰路についた。
翌日以降も香奈恵が催促し、早紀が待つように返答をする日々が1週間続いた。そんな1週間後の朝。
「香奈恵、おまたせ」
後から登校してきた早紀が、教室に入るなり話しかけた。
「デート相手が見つかったよ。まさか本当に希望者がでるとは思わなかったけど、いるもんだねえ」
「えっ、ホント!?何人?何人?」
「3人も!」
「すくな……」
「見つかっただけでも褒めてほしいんだけど……」
香奈恵が不満そうに漏らすと、早紀がその反応に不満そうに言った。
「それに、見つかったと言っても応募とかじゃないからさ、噂を流したらそういう反応があったという話を聞いただけで」
「ええー!?じゃあいつデートできるのさ。もう待つの嫌だ」
ただでさえ一週間待ったというのに、まだ待てと言われて、香奈恵は更に不満を口にした。
口だけでは収まらず、早紀の体を掴んで大きく揺らし催促している。
早紀がされるがまま揺らされて、困った様子を見せていたところ、男子が一人そこに話しかけてきた。
「やあ、どっちかが進藤さんかな?」
「こ、こ……」
「こ?」
「ねえなんとかしてよ~!」
それに気付いた早紀とは違い、全く気づいていない香奈恵は引き続き相手を揺さぶっていた。
揺らされてる本人は返事をしようとしたものも、まともに話せる状態ではない。
「ふむ……。いいね。たぶん君が進藤さんだろう?」
そういいながら、香奈恵の後ろから両肩をぐっと抑えた。
「え、誰……?」
「僕は澤田。もう予鈴がなるから、また昼にでも屋上で」
戸惑う香奈恵に爽やかな笑みでえ答えて去っていった。
「知ってる?」
「たぶん、あの感じは3人のうちの誰かじゃないかなあ。でも今のは……結構有名な先輩っじゃないかなあ。女子の人気高いよ。めっちゃモテる先輩。香奈恵には勿体ないなあ」
ああ、でも。と早紀は続けた。
「もしその先輩だとしたら、モテるみたいなんだけど、彼女とかいたことないんだって。もしそうなら香奈恵に興味持つってのなんか不思議だなあ」
「それだけ私が魅力的ってことかあ!」
「それだけは違うかなあ」
そんな話をしていると予鈴が鳴った、続きは昼休みだ。
1つ前のときに、途中で一人称から三人称に変えたので、今回も三人称を継続した結果、すこぶる後悔中。




