2.自称花の女子高生1年生香奈恵の日曜日
※2024.06.09 早紀の一人称が間違っていたので修正
感嘆符が2つがくっついた全角文字が絵文字って知らなかったので修正
部屋のデジタル時計兼温湿計が、9時半を示している。
窓の外からは、鳥の鳴き声やたまに車の通る音が聞こえてきている。
近所の人たちの話し声と思われる音も入っているように思える。
そんな音がしている部屋の主、香奈恵はまだ寝ている。昨晩は深夜遅くまでチーム対戦型のゲームを、ランダムに選定されたチーム同士で戦い続けていた、未だ起床する気配を見せない部屋の主だ。
スマホが振動を繰り返して、着信を伝えようとしているが、その努力は実を結ばない。
しばらくすると、階下から足音が聞こえてくる。その音は徐々に大きくなり、とどめとばかりに大きく「ガチャッ!」と音がした。
「香奈恵!いい加減に起きなさい!」
普通に起こしたところで、起きないことがわかっている香奈恵の母親である静恵は、初めから大きな声で起こしにかかった。
「あぁもう、またこんなに散らかして。あっ、脱いだ服ぐらい掛けるか洗濯かごに入れなさいよね……。とにかく、あんたが起きないといつまでも朝ご飯片付けられないから早く起きて頂戴」
そう言うと静恵はカーテンと窓を開け、香奈恵から布団を剥ぎ取った。
「ひぃいい!?」
香奈恵は冬以外、寝る際には半袖でしっかりと布団を被って寝ていた。ことしかしまだ4月、その状態で上半身が半袖肌着のみという姿はさすがに寒い。
「お、おふとん、どこ」
「今朝のおふとんは営業終了、早く下行って顔洗ってちゃっちゃとご飯食べてきてよ。全く、昨日は起きて出かけてたじゃない」
そう言われた香奈恵はベッドから下半身を転がり落ちるように身体を起こし、ながら反論した。
「昨日は出かける予定あったしさ、……今日は何も無いもん」
「あんたに予定がなくても家の中はいつも同じ予定で動いてんのよ。はい、立って歩く!」
香奈恵は立ち上がるなり、母親に押しだされながら部屋を出ることになり、さらに階段へと押されていった。
「ちょ、ちょ、もう自分で歩くって。階段だから!危ないから!」
静恵は階下へ向かう香奈恵をしばらく見た後、香奈恵の部屋へ戻っていった。部屋をある程度片してから降りるという。香奈恵はそう言った母親へ感謝を述べると、すでに起きているであろう残りの家族へ挨拶をいいながら降りていく。
「おそよう。朝飯はパンとご飯どっちだ?」
「パンで」
ちょうどキッチンにいた父親、隆康が香奈恵に挨拶を返してきた。
「トースターつけといたから、あとは自分でやりなさい。お父さんはこれから仕事だから……」
「またあ?」
香奈恵がそう問いかけると返事は別のところから来た。
「今日は先週とは違うところでトラブルらしいよ。俺は絶対システム保守の仕事だけはしたくないな」
「うわあ。ほんと大変なんだね、お父さんの仕事」
「どんな仕事も一長一短だろう。まあ二人共まだ高校生なんだから、将来の事はゆっくり決めると良い」
自分の仕事について、自分の子供にそれぞれの所感を述べられて我が子の成長を感じながらそう答えると、隆康は家を出ていった。
「カナはまたデートに失敗したのか」
「うるさいなあ。じゃあお兄ちゃんの友達紹介してよ」
「お前を女の子としてはちょっと紹介できないな……。俺の信用問題に関わる」
そう言った香奈恵の兄、広隆はやれやれといった仕草を見せながらリビングのソファへと体を沈めていった。
「やっぱり兄弟には私の魅力がわからにくいのかなあ。ならしかたないよね」
「そうだな、ガキは紹介できねえわ」
「ひどい!」
香奈恵が反論をしようとしたところに、チーンとトースターが音を立てた。パンを取り出し、テーブルにあるいくつかのおかずの乗った皿へとパンを置き「いただきます」と言ってから話を続けた。
「でも次どうしようかなあ、高校生になったばかりで、校内には知ってる人そんなにいないしなあ。そうだ、外で遊んでたら誰か話しかけてこないかな」
この話は打ち切ったつもりでリビングへと移った広隆だったが、耳に入ってきた言葉に口を挟まずにはいられなかった。
「カナが遊びに行って、ナンパ待ちとか無理だろ……。今どきナンパするやつ自体少ないだろうし、居てもチャラいんじゃ」
「それは偏見でしょ。んー、どこ行こうかなー。やっぱゲーセンかなあ」
「ゲーセンで声かけられるか?しかもお前がゲーセン行ったらどうせ対戦台に張り付いてるんだろ?」
「他に何するの?」
そんな事していて、誰がゲームの話題をする以外で話しかけるんだと広隆は思ったが、言ったところで考えが変わることも無いだろうと、伝えはしなかった。代わりに提案をすることにした。
「他に行くところないのか?こう、モールとかでウィンドウショッピングとか、なんとなく街中歩くとか」
「う~ん。まぁ考えてみる」
そう言い、香奈恵は朝食に集中した。
「香奈恵ー、昼ご飯どうするのー?」
階下から静恵の声が部屋に届く。昼になり、香奈恵は未だ家にいた。朝食後からずっと別途の上でマンガを読み続けており、気がつけば昼時となっていた。時計は十一時半を示しているが、香奈恵は出かけるつもりであったことをすっかり忘れている。
読んでいたのは少年漫画のラブコメものだった。香奈恵はあまり少女マンガを読まない。
「後で自分でやるから私の分はいらないよー!」
香奈恵はさっと返答したが、半分嘘である。マンガを読むのを中断したくないだけで、後で自分でやる気なんて全く無い。最悪、食べなくてもいいと考えている。
読むことを再開したマンガの物語の中では、ヒロイン達が主人公を奪い合っていた。
「いいなぁ、憧れるなあ」
香奈恵はマンガを読むたびにそれら男女の光景に憧れを持っていた。特にどちらかに自分の身を置き換えて、というわけではなく、ただその光景自体に憧れていた。
「でもやっぱり、ちゃんと恋人関係の方がいいなあ」
一冊読み終わったところで、別のシリーズのマンガを手に取り表紙を見ながら呟く。
そのマンガでも、ただなんとなくその男女のやり取りの光景を、なんとなく良いなと思っていた。そしてそのマンガを開き読み始める。1巻、2巻……順に読んでいき6巻を読み終えたあたりで香奈恵は体に異変を感じた。
「そういえば昼ご飯たべてないや」
まるで主人が気づくのを待っていましたとばかりにお腹が音を立てた。
香奈恵はキッチンへ行き、何かすぐに食べられるものはないかと漁りに行った。するとシンク台の上には「これくらいは食べなさい」という静恵の字で書かれたメモ書きとともに菓子パンが3つ置かれていた。香奈恵は、母に感謝をしつつ菓子パン全部を持って上がり、マンガの続きを読みながらそれを平らげた。飲み物を持って上がるのを忘れた上に、惣菜パンばかりだった。口の中はパサパサな上にのどが渇いていたが、香奈恵はまた降りるのを面倒に感じ、そのまま読み続けた。
全巻読み終えた頃には日が沈んできており、電気をつけないとマンガを読むには辛いと感じた香奈恵はリモコンでTVを点け、コントローラーでゲーム機の電源を入れてなんとなくゲームを始めた。
そして気がついた頃には夕食だと声がかかり、結局外に出ることもなく香奈恵は日曜日を終ることになりそうだった。
「で、結局いつもどおりだったと」
スピーカーから音か出る状態のスマートフォンからの早紀の声が、責めるように発せられる。
それを「うん、そう」などと適当に聞き流しつつ、香奈恵はゲームをしていた。
「本当は適当に出かけて恋人候補を発掘する予定だったんだけどね」
「それはどうかと思う。努力の方向がずれてるよ……」
香奈恵としては、とにかくマンガの中のように恋人関係の相手と過ごすことが目的であるため、その相手については深く考えていなかった。
「何度も言ってるんだけど、恋人なんてものは好きな相手となるものだよ?手当たり次第知り合いとデート……、そう呼べるかも怪しいけど、遊びに行ってるだけの相手となるものじゃなくてさあ」
早紀は、中学時代からこの奇行を繰り返している友人に、もう何度目かわからないという事を伝えるも、いつも香奈恵にはそれが受け入れられていなかった。
「そんなの、順番が逆になるかもしれないし?マンガじゃ知らない相手と道端でぶつかって、恋人になったりもするしさ」
「ここは現実だよ」
「事実は小説より奇なりっていうし……」
「限界があると思うよ。……あとあたしと電話してるのにゲームするのやめない?」
「えっ、なんで分かるの!エスパー?」
と、いいつつその手を止めない香奈恵。
「いやー。フツーに音聞こえてるよお?カチャカチャとさ……」
「あ、ゴメーン」
……と、いいつつ香奈恵はその手を止めない。
「まぁそういうあたしも雑誌みながら電話してるんだけどさ」
「えっ、雑誌?なんか面白いマンガあった?」
雑誌という単語に、思わずゲームを中断して話に食いつく香奈恵。それに対し早紀はため息をはいた。
「いや、ゲーム中断できるかい」
「えへへ」
「似合わない返しやめてよ。それに雑誌って言ってもあれだよ、ファッション誌。香奈恵もこういうの読んだら良いのに、恋がしたいならいろいろ参考になること書いてあるよお?」
「なあんだ、私はそういうの読むと眠くなるからいらないかな」
「そうだね。香奈恵の場合は恋がしたいっていうか。もう恋愛に恋してるもんね」
早紀は話相手を軽く揶揄したが、本人には「なんのこと?」と、伝わらなかったようだ。
「あ、そうだ。デート相手なんだけどさ。あたしのアニキとしてみるのも言ったけど、相手をクラスで大々的に募集したら良いんじゃない?とりあえず数人くらいみつかるんじゃない、まだお互い知らない中学から来たりで知らない男子もいるだろうし」
同中の男子はたぶん手を挙げないだろうなと、早紀は内心思いつつ提案する。
相手を取っ替え引っ変えデートを繰り返している香奈恵は、あまり男子に恋愛対象にはされていない。敬遠されているのか、高嶺の花と思われているのかは定かではない。しかし容姿や、男子のような趣味をしている割にはそう言った声を聞かなかったのは確かだった。
「いいねそれ!彼氏募集って大きく書いて掲示板にでも貼っておけばいいかな?」
「……やり方は、もう少し考えよっか」
明日が楽しみでならなくなった香奈恵と、不安でいっぱいになった早紀はそこで会話を終えた。
文章として書いてると、少し考えてたこととズレてきて、タイトルを変えたほうが良い気がしている。




