電話ってたまに変な偶然おきるよね
「お名前を確認させてください、極太チ〇ポの太に田舎因習村ドスケベセッ〇スの田で太田様でよろしいでしょうか」
「アヤメちゃん、もう休んだ方がいいぞ……」
「ワン……」
シスタンク到来の翌日昼。俺はアヤメちゃんの部屋を訪れていた。が、そこにいたのは虚ろな目でコンピューターに向かい複数モニターで何やら操作を続ける少女。そしてそのアヤメちゃんの椅子になっている人型エルゴヒュー〇ンこと全裸四つん這い女。
なんか出番が少ないしアピールもないなと思ったら何が起きていたかはシンプル。リモートワークに追われそれどころではなくなっていたというわけである。哀れアヤメちゃん。インターネットの発達はこういうところで困るよな……。
しかも恐らくであるがアヤメちゃんが能力ありすぎるせいで猶更仕事が集中している模様。可哀そうとしか言いようがない。
「例の件ですね、おじさまとパラソルの下で汗と磯の匂いが混ざり合う性行為を、ええ、暗黒街7号区画方面には第3部隊を送り込んでください。対機動戦車戦を準備しておくように」
「もう頭が壊れちゃってるよ」
と、そんな風に俺の相手をする暇もなくひたすらモニターにかじりついて仕事を進めているいる。そのせいか願望とまじめな仕事の話がスムーズに混ざり合ってしまっているんだが。電話先も今頃困惑してるだろ。
「ええ、精力剤とロケットランチャー系武装の手配をよろしくお願いいたします」
「会話がスムーズに繋がっているだと……!?」
「あなたとアヤメ様の蜜月は誰もが知っていることだワン」
「何でだよ」
「牙統組共有ファイルに記録がついているワン」
「き、聞きたくなかった……」
最悪すぎて眩暈がする。が、そんなことをしている理由の一つは、ドエムアサルト曰く『龍』を御せていることをアピールするためらしい。
確かに本拠地爆破した奴ときちんと交流を取り、むしろ仕事の種にできているわけだからそりゃあ内にも対外的にも示しがつくのではあるが。問題は俺の黒歴史まで含めて記載されている可能性があるということだ。下手すれば懐かしのターボチ〇ポ事件も記録されたままかもしれない。これは巨大なリスクだ、後で問い詰めておこう。
とはいっても今の忙しそうな彼女を見ているとあまり喜ばしくない状況でもあるが。
「嬉しい悲鳴ではあるワン。デスア〇メサイバードラゴンとの一戦のせいで離脱した組員の補充は終わりつつあり、仕事も以前同様に来つつあるワン。この忙しさも一過性、あと数年を乗り越えられれば牙統組の立ち位置は再びゆるぎないものになるワン」
「反社の成長を喜ぶべきではない気もするけど、まあ立ちなおるならいいか……あとその呼び名やめろ」
アヤメちゃんの実家が落ちぶれてるのを見るのは可哀そうだし、まあ反社であるという点は見なかったことにして喜ぶことにしよう。あと牙統組という窓口が無くなるとアホが直接突っ込んでくる可能性が大いに上がるから勘弁してほしいという実利的な理由もある。メス堕ち世襲議員メーカーの事件の際、ハヤサカが一人で交渉に来てたら破談になってもっと状況が滅茶苦茶になっていた可能性あるもんな。ヤクザを必要悪と呼ばざるを得ない世界、最悪である。
それはそうと、と言いながら四つん這い全裸変態人型エ〇ゴヒューマン女ことドエムアサルトは、どこから出したのかタブレットを床に置き、キリっとした表情に切り替わる。アヤメちゃんの尻の下で。
「漁船捜索の件、話が進んだから共有するワン」
「そういえばそういう話だったな、デスアクメ宮本武蔵とふたなり与謝野晶子のせいで頭から抜け落ちるところだった……」
そう、昨日「旦那様を助けて」などと自称妹(血のつながりなし)(というか血液が流れていない)が言っていたが、急に出てきた自称妹のお願いを無償で請け負う必要などないわけで。あくまで他人、本来の自分の目的こそが最優先。
すなわち漁船を救出し、安定した鮮魚の入荷を再開させることである。
ドエムアサルトは全裸四つん這いでアヤメちゃんの尻に敷かれたまま語り始める。因みにアヤメちゃんはずーっと通話しっぱなしなので放っておくとしよう。頑張っている子を止めるのは申し訳ないし。体だけは大事にね。
「まずこちらの地図を見てほしいワン」
タブレットにはダークワカヤマ海岸の超高解像度の衛星写真が映し出される。数多の小島が描かれているが、それらに手書きで書きこまれた赤のチェックがいくつもついていた。
「アヤメ様が仕事やバカンスのふりをした仕事や食事しながらの仕事をこなしている隙にこちらで幾つもの小島を探ったワン」
「全部仕事じゃねえか……まあ表向きバカンスという名目で来ているわけだからふりをしなければいけないのはわかるけどさ」
「まずは大雑把にあたりをつけて大きな島を10点、次にそれらを元に可能性のある島を東から順に虱潰しに調査したワン」
「……この短期間でか」
「当然です、おじさまの性癖開発と牙統組の勢力回復は急務ですから。はい、ですので太田の暗殺計画について進行を──」
ドエムアサルトの提示するデータには数多の写真や熱源・電磁波測定などの結果が添付されており、それぞれ可能性の高低を分かりやすく資料化されている。なんでこいつこんなに有能なんだよ。性癖さえなければ完璧なのに。
衛星写真に書き込まれたメモの多くはチェックマーク、すなわちオールグリーン。何もなかったことを意味する。が、その隙間を縫うように何点かハテナマークが刻まれた地点があった。ドエムアサルトはハテナマークを顎で指す。
「結果としては現時点で漁船およびサノア博士の拠点は見つかっていないワン。ただ気になる点はあったワン」
「気になる点?」
「マグロマンの死骸が大量に浮いていたワン。しかも下半身だけ」
「ええ、おじ様の下半身調教用のブラギ〇ス及びトーキョーバイオケミカル社離反兵尋問用の器具についても納期を最短調整してください。はい、この工程をずらしてもらって──」
マグロマン。もともとはこいつを狩るという話だったのに蓋を開けてみれば一体たりとも見ることは無かった存在。そういえばこいつらがどうなったのかについて、あまり思考を巡らせてはいなかった。だが、下半身だけ残っているということは一つ説明できることがある。すなわち。
「恐らく捕食だな」
「同意だワン」
「同意です、次期当主が私、旦那兼調教済オスブタがおじ様で」
「俺と違い通常の生命体は再生や巨大化に食事を必要とする。マグロマンは上半身魚で下半身人間。恐らく食べやすい上半身だけを食べて、エネルギーを蓄えているのだろうな。だからマグロマンは海岸に居なかったわけだ」
「昨日そっちから貰った『統合構想』とやらの報告書の情報と合わせると、『鉄菌竜樹』が機械と融合するためのエネルギー源と思われるワン。菌糸を伸ばすだけじゃなく、肉を広げて一体の生命体となろうとしている、そう考えられるワン」
「証拠はあるのか?」
「こちらの調べでダークワカヤマ社および武器商人から裏ルートで武装が多数流れていたことが発覚したワン。レールガンからバイオ兵器、果ては核兵器まで」
「核か……」
最悪な話であった。現在の情報を統合すると、『鉄菌竜樹』は核を発射しバイオ兵器を巻き散らす広範囲マップ兵器と化している。というかこいつそのものがバイオ兵器みたいなもんだしな。しかもそれだけじゃなく、俺が見た『鉄菌竜樹』は生身の体があった。恐らく培養細胞などを取り込み巨大化している。仮に培養細胞が単なる人間の物だけではなく他生物のものまで混ざっているとすれば。
アポトーシス制御によりありとあらゆる細胞を制御し、環境に合わせ体の組成を変える。全てに適応する生命体。数多の最先端兵器と一体化し、それらを同時に使いこなす。核爆弾の輸送起立発射機としての機能を備え、自らの意志で核のスイッチを押す『不死計画』の落とし子。『統合構想』が、そのような生命体を完成させるものだとすれば、なるほどダークワカヤマ社を敵に回す説明がつく。
「おとぎ話のような存在、『竜』か」
なるほど厄介な存在である。そして同時にこいつを止める手段は一つしかない。すなわち。
「早期の拠点発見が必須だな。恐らくそこに進化を続ける『鉄菌竜樹』と人質たちがいる。完成体になる前に倒せれば被害は少なく済む」
「だけれど敵の隠ぺいは完ぺきだワン。仮に見つけても、今の話を聞く限り無数の迎撃兵器と『鉄菌竜樹』が人質を盾に待ち構えているワン。元アルファアサルト隊長の技術をもってしても苦しい戦いになるワン」
「ええ、おじ様の調教はじっくり時間をかける必要があります。中々手ごわいですから」
俺たちは3人揃ってはぁとため息をつく。色々情報が分かったところで所詮はそれだけ。事件解決の糸口が見つかるわけではない。世の中ままならないものだなぁ。
◇◇◇◇
なおその日の晩の出来事である。
「というわけで逃げてきたべ! いやー、海底洞窟で迎撃兵器の監視の目をかいくぐるのは結構面白かったべ!」
「お前が一番おとぎ話のような存在だよ……」




