ブートキャンプ!
ややこしいけど話が繋がる回です。
デスア〇メ宮本武蔵襲撃の翌日。21世紀のころと変わらない、美しい青い空の下で俺は叫んだ。
「さあ皆、客寄せデスア〇メ宮本武蔵だよ──!」
「マスターも随分23世紀に染まってきたのじゃ……」
隣でぼそりと呟くメイド服(夏服仕様)メス堕ち世襲議員の言葉には断固として抗議する。失礼な、ただ単に妥当解だからだぞ。その証拠に、居酒屋『郷』ダークワカヤマ海岸支店周辺にはそこそこの数の観光客が集まっていた。
そして観光客の中心で、ぼそりと呟く男がいた。
「戦闘描写が省略された……だと……」
「そりゃ一方的に負けたからな」
昨日、警備員から話を聞いた後デスア〇メ宮本武蔵が勝負を仕掛けてきたわけだが。結果としては当然の如く俺の勝利。気絶したデスア〇メ宮本武蔵を空いている個室に放り込んで夜が明けたという訳である。
ちなみに決め手は再生速度。斬撃技しかもたないデスア〇メ宮本武蔵では切断より早く再生できる俺に叶うはずもなく、対戦車ボディフック一発でお星さま(比喩)になったのであった。なお一日で回復してる当たり、相当の技量だ。受け流すタイプの技なんだろうな、感触が軽かったし。
それだけの技量を持ち、そして例のドキュメンタリーにも出ているデスア〇メ宮本武蔵を見て、観光客たちは遠巻きに彼を囲んで話始める。
「ねえ、あの人って」
「間違いない、本物のデスア〇メ宮本武蔵よ!」
それらの目は好奇心に満ちている。23世紀の、ネットが発達した世界だからこそ有名人というのは非常に大きな価値を持つ。現在進行形で放映中の大人気ドキュメンタリー番組の主人公ならなおさらだ。
そしてその名声こそ、俺が利用したいものであった。俺は項垂れるデスア〇メ宮本武蔵の耳元でささやく。
「決闘挑んできてノーリスクはないだろ。最低限俺のために労働すべきだ。人の時間を取っているという自覚はないのか?」
「瞬殺したのに何を言ってるのじゃ……」
「……『龍』、会社員みたいなことを言うな、貴様は会社破壊員だろう」
「上手く言ったみたいな顔するんじゃねえ。とりあえず対価として俺の店の宣伝手伝ってくれよ」
つまり俺の目的は、客の少なすぎる居酒屋『郷』ダークワカヤマ海岸支店の改善。その中でもひと際大きな問題は、居酒屋『郷』の名前が知られていなさすぎることである。恐らく多くの客は、そもそもここに店があることを知らない。
……まあ知ってもらったところで差別化できるか、という問題はあるが、それは後回しにするとしよう。とにかくまずは客に店の存在を知ってもらうことである。
「デスア〇メは孤独に行うもの、エアドロップで共有するようなものではない」
「何言ってるか分からないけど、お前にできることが何かあるだろ。格好いい演武とか、体操みたいなのとか」
「……分かった。敗者の儂には反論する権利などないからな」
しばらく項垂れていたデスア〇メ宮本武蔵は、少し息を吐いて観光客の前で叫ぶのであった。
「デスア〇メブートキャンプその一、まずは体を前に倒して強者に慈悲を請う運動!」
「それはデスア〇メなのか……?」
◇◇◇◇
「さあ疲れた体に居酒屋『郷』印のスポドリはいかがなのじゃ?」
「「「「1、2、3,4,デスア〇メ!」」」」
「アル〇ックみたいに言うんじゃねえ!」
2時間後。シゲヒラ議員と俺は瓶の入った籠をもって海岸を歩き回っていた。居酒屋『郷』の前にいるデスア〇メ宮本武蔵の周りには多数の観光客が始まり、運動をしている。奇怪な動作を何度も繰り返している姿はさながら宗教団体かのようであるが、実態はチームデスア〇メに他ならない。
そしてそれこそが商機。居酒屋『郷』のロゴと地図が記載されたドリンクを配布することで知名度アップを狙うという作戦であった。因みに印刷技術の進歩のおかげでこういった製品の作成は超高速でできる。名デザイナーメス堕ち世襲議員によりデザインされた色鮮やかなラベルを人々は興味深そうに見ていた。更にデスア〇メ宮本武蔵の着るシャツにも居酒屋『郷』の名前が描かれており、少しは名前を覚えてもらえたはずだ。これで一人でも客が増えるとよいのだが。
しかしそれにしても、と思う。
「というかダイエットって人気なんだな」
俺のぽつりと口から飛び出た疑問に、隣で歩いている銀髪犯罪者が答える。
「薬や電気運動でやるとどうしても脂肪の減り方がいびつになったりしますから。健康的に痩せるには運動はやはり効果的みたいです……ってネットに書いてました!」
「最後の一文で急速に信頼性が落ちたな。というかそもそもこの段階で運動しても意味ないだろ、普通は海に来る前に運動して痩せるもんだろ?」
「逆です、このホテルの料理美味しいですから、食べ過ぎて翌日に焦る人も多いんです。また、単純にビーチは23世紀の娯楽としては若干コンテンツ不足、そこにあんなのが来たらみんなハマりますよ! いよっ、策士!」
「デスア〇メ宮本武蔵に変なことさせる以外、何も考えていなかったぜ……」
隣で歩きながらそう言っているのはノウミだ。対デスア〇メ宮本武蔵戦の審判を務めた人物であり、ダークワカヤマ社社員、そしてレターパックをばらまいた女である。というかこいつは結局何なんだよ、と俺は突っ込む。
「で、お前は何してるんだレターパック運送女」
「ちょっとだけ違法なお薬の運搬です!」
「違法は違法だろ! ちょっととかねえよ!」
「先っちょだけですから!」
「それで先っぽだけで済んだ試しがねえだろうが!」
相も変わらずの最悪っぷりである。というかこいつなんでこんな元気ハツラツ犯罪者やってるんだよ。暗黒街でもここまでナチュラルに犯罪する奴……はそこそこいるけど、間違っても普通の場所にいていい存在じゃねえだろ。
アヤメちゃんとかは立場があって犯罪してるけどこいつはシンプルにやりたくて犯罪してるからな。多分ダークカオスに分類される存在なのは確実だよ。因みに俺はニュートラル。
「デスア〇メ宮本武蔵と一緒なのはなんでだよ」
「そこで道を聞かれまして。サイバーデスア〇メドラコンの場所を知らないかって」
「それふたなり与謝野晶子以外も使うワードなの!?」
「誰のことか確認したら店長さんのことみたいだったので。すごい性癖ですね!」
「違うからな! 絶対に違うからな!」
勘違いに対して断固拒否する。サイバーデスア〇メ趣味とか絶対嫌だからな。メス堕ち世襲議員の500倍くらいキャラが濃くなってしまうじゃねえか。こちとら一般市民だぞ。それはそうと、一点だけ聞いておくか、ということで確認することにする。
「そういやお前、レターパックは誰から頼まれた? 中身を知っているのか? 変わったことは?」
老婆心ではあるが、立て続けに聞いてしまう。こいつは恐らく何も知らない運び屋。だから『不死計画』の残骸に巻き込まれるのは忍びないと思ってしまうのだ。
それにレターパックの流通経路が分かれば、そこからふたなり与謝野晶子の潜伏位置や生産ラインが分かるかもしれない。事件の鍵となる可能性すらある。
だが彼女は何でもないことかのように言った。
「何か起きたらしいですよね、でも仕方ないです! 私知りませんでしたから! 依頼主のことも、何を運ばされているかも!」
俺は固まった。予想外過ぎた。彼女の言葉はあまりにもあっけらかんとしていて、何なら頬が少し赤らんでいる。それは俺が今まで直視したことがない感情であった。何かの間違いではないか、確認するかのように俺は問いかける。
「……お前、それ銃口の前でも言えるのか?」
「言えます!」
「……」
「だって怖くて冷たくて、でも何か良いじゃないですか! 死を目の前にするなんて!」
◇◇◇◇
ノウミが去った後、俺はしばらく沈黙していた。想定外にもほどがあり、対応に迷ってしまう。彼女が暗黒街など悪しきものに興味を持っていることは知っていた。だが、それにしてもである。そして何より、彼女の反応にピンときてしまうものがあった。対応する事象を俺は知っている。だから、黙ってしまう。
太陽は少しづつ傾きだし始めている。居酒屋『郷』ダークワカヤマ海岸支店付近に設置されているベンチで、俺は静かに考え込んでいた。
そこに現れたのは少し汗をかいたデスア〇メ宮本武蔵だった。しっかり客寄せデスア〇メブートキャンプをやりきってくれたらしい。俺はよっと声をかける。
「ようフェイクデスア〇メ宮本武蔵」
「……これで負けの分は返したということでいいな」
「夜は客寄せマイクロビキニフェイクデスア〇メ宮本武蔵で頼む」
「まだやるのか……! というかフェイクではない!」
デスア〇メ宮本武蔵は顔を顰める。額には皺がいくつも刻まれており、重ねた年と研鑽と犯罪行為を想像させる。本来ならもっと敬うべきなんだろうけど、決闘しかけてくるようなやつだしタメでいいや。敬老精神は今回だけ端に置いておくことにしよう。
「年齢、何歳くらいだ?」
「今年で61だ」
「……じゃあノウミは本当に3か月ってとこか」
「何の話だ?」
「人に歴史あり、ってやつだよ。まあこっちはどうでもいい予想の話だからさ。それより聞きたい話があったんだろ?」
俺はデスア〇メ宮本武蔵に問いかける。そう、今日の真の本題。それはデスア〇メ宮本武蔵が何故決闘を挑んできたか、何故こんな場所にいたかである。そもそも、ふたなり与謝野晶子が実在したのが意味分からないし、しかもデスア〇メ宮本武蔵がレターパックの際に急に現れるのも理解不能である。『龍』のことを知っていたし。
決闘のお駄賃として働いてもらったが、それはそれとしてこいつからはきちんと話を聞いておかないといけない。こいつの立ち位置はどこなのか、動機は何なのか。
デスア〇メ宮本武蔵は一呼吸おいて、聞いてくる。
「……『龍』、何故お前は決闘で私を殺さなかった。お前は儂の敵、『不死計画』を手伝っていたものの一人だぞ」
「そうだったの!?」
「覚えてすらいないのか!?」
いやだって人いっぱいいたんだもん。同じ部門の博士と他数人くらいしか覚えてねえよ。ふたなり与謝野晶子も見たことなかったし。驚愕してうろたえるデスア〇メ宮本武蔵は、早口で俺に説明する。
「儂だ、オーサカ・テクノウェポン社から派遣された、超大口径レールガンと単分子ブレードを使いこなす傭兵……!」
「いやマジで覚えてない。どうせワンパンだっただろ」
「……はい……」
ということで早速大きな疑問の一つが解決した。なるほど、それなら俺のことを知っていて当然だ。緘口令が敷かれても実体験をなかったことにはできない。
俺が本当に自分のことを全く覚えていないと理解したらしいデスア〇メ宮本武蔵は一息吐いて、話を始める。
「儂はオーサカ・テクノウェポン社のエリートとして人生を歩んだ。そしてサノア博士の護衛として、暗黒街にて暗躍し様々な敵対組織を殺し、実験の手助けをした。そんなある日お前に叩き潰された」
そして始まるのは割と興味のない話であった。まああの実験、結構人いたからそりゃそんな奴もいるわな。でも俺と直接かかわってないモブなんてあまり覚えてないわ。
それに、博士みたいに再度人体実験フィーバータイムを夢見る犯罪者や俺の周囲で実験体を玩具のように弄んだカスはともかく、完全に普通の社員に戻った人間にまで恨みが残っているわけではない。ましてやデスア〇メ宮本武蔵なんていう変なルートを突き進んでいる奴ならなおさらだ。だから俺は気のない返事を返す。
「せやな~」
「茶化すな! 儂は負けたあの日から忘れられなくなった! 圧倒的な力に押しつぶされる快楽が! 自分が何もできず、死という恐怖に飲み込まれていく無力感を! 頭の中で何度もその光景がリフレインするんだ! だからデスア◯メを求め戦場を渡り歩く羽目になった!」
「ほーん」
「何がおかしい!」
怒鳴るデスア〇メ宮本武蔵に、俺は変わらずどうでもいいという様子をあえて見せる。怒りが頂点に達したのか、彼の顔が赤く染まり、瞬間腰から刃が抜き放たれる。
いや、正確には抜き放たれた、である。俺が見えたのは刀を抜いた瞬間ではなく、斬撃が俺の首元に到達した瞬間のみ。すなわち初動が何一つ存在していない、正面からの不意打ちを可能とする絶技。事前に対斬撃仕様に変質させた皮膚は、なんの変哲もない刀によりいともたやすく切断され、肉と骨に刃を突き立てる。そして強化された肉も骨も、刀はあっさりと切断してしまう。
だがそれでも、刀を振り抜いた瞬間には俺の首は完全に元通りに接合していたのであった。俺は何事もなかったようにベンチに座ったまま、手をひらひらとふる。
銃とは異なり、綺麗な斬撃は肉を削らない。隙間を通し、断つのみである。故に元々ある材料を変質させ修復すればよく、再生は遥かに容易である。だがこの速度で再生できるのはやはり斬撃自体が洗練されすぎているからに他ならない。
血の一滴すら流さない俺を見て、デスア〇メ宮本武蔵は刀をしまってため息をつく。
「やはり無理か……」
「無理か、じゃねえんだよ」
そんなデスア〇メ宮本武蔵を俺は少し腹立たしい目で見る。予想外の反応だったのだろう、不思議そうな顔をするデスア〇メ宮本武蔵に俺は説明する。
「この技が凄いのは素人目でもわかる。毎秒960fpsで見ても軌道が一ミリもずれていない」
「素人目ではなくスローモーションカメラでは……?」
「俺の強化皮膚に垂直に入り込み、隙間をついて切断した。鎧通しとは違うが、ようは相手より先に、完全な切断を叩き込む技だよな。名前は?」
「……菊払い三の太刀」
「そこはデスア〇メブレイドとか言えよ」
「技に感情はいらぬ。ただ敵を斬る術理であるべきだ」
そう、デスア〇メ宮本武蔵の斬撃は完璧だった。俺にすら通用する(すぐに再生できちゃうけど)、正真正銘彼がたどり着いた術理の極致だった。だからこそ俺は決闘があまりにも茶番に見えたのだ。
「切られる傍から再生されるから無理? なら無理やり斬撃の軌道を歪めて衝撃による首と胴体の分離を試みろよ。無理なら再生できなくなるまで斬撃を試みてみろよ。あるいは切断と打撃を同時に行ってみろよ」
「何を分かった口を……!」
「やれることをやりきらず、自分から負けに行っている。だからフェイクなんだよな」
俺は親指で海岸を指す。そこではノウミが岩の裏で明らかに怪しい白い粉の小袋を観光客とやりとりしている。きっと塩か味の素である。そうに違いない。そうだと信じよう。
「あのノウミの方が、遥かに死に引き寄せられている。そもそもお前が俺に挑んできた方がおかしいんだよ。だって俺が人をそうそう殺さないのを知っているだろ、『不死計画』の参加者なら。行動と目的がずれているんだよ。ならお前の目的はデスア〇メなんかじゃなくて、自身の負けを正当化──」
「……それ以上はやめろ」
そう、俺が腹立たしかったのはそこなのだ。『不死計画』関係者が、自分の気持ちにけりをつけるためだけに俺に因縁をつけてくる状況。ましてやわざと負けて「ああ仕方なかったな~」なんて勝手に納得して自身の洗練された技を卑下する、そんな茶番に巻き込まれる身になってほしい。許さねえからなアルタード研究員。
そしてその怒りに近しいものを、俺はサノア博士にも抱いている。だからこの件を一刻も早く解決したくて仕方がないのだ。たって俺が一番したいのは、まったりとした居酒屋生活なのだから。間違ってもデスア〇メ剣劇アクションではない。
「お前の目的はなんだ? ふたなり与謝野晶子といいフェイクデスア〇メ宮本武蔵といい、変な奴多すぎなんだよこのビーチ。まだ水着回やってないのにこの濃さ、読者はもう辟易としているぞ」
俺がそう吐き捨てると、デスア〇メ宮本武蔵は深く息を吐き、俺の隣に座る。背中を丸めて地面を見つめ、そしてぽつりぽつりと語りだした。
「まずデスア〇メは真だ。貴様相手では興奮しきれないだけで。あるだろう、R18動画の年上ものを見ている時にリアルの姉が思い浮かんできて苦しくなる的な」
「絶妙に分かる話をやめろ」
「……儂の現状の目的は、ふたなり与謝野晶子、サノア。あいつをとめることだ。サノアの研究は、本当に可能性があるものだった。サノアが作ったものの多くは人の命と心を救うものだった。それが一時的だとしても」
思い出す。確かにサノア博士として発表されたものはそういった方向性のものが多かったと記憶している。ウミガメの奴は酷かったけど、あれも兵士の精神状態を保つため、みたいな感じだったもんな。
「……特にサノア増鉄菌とやらは、マジの平和利用だったもんな」
「ああ。だが長い年月と、『不死計画』の失敗を経て本来の目的を見失い、行動を誤っている。かつてのサノアなら絶対にやってはならない行為だ」
そう言ってデスア〇メは自身の服のすそを捲る。その先にあったものに俺は見覚えがあった。型式や効果は大きく違うが、それはまさしく同系統の物である。すなわち。
「その菌糸の跡……!」
「儂がまだ幼い頃だ。戦火に巻き込まれ、足が千切れて落ちて、親は金も無く儂の改造費も払えない。働きにも出れないのなら、バラシて臓器を売るかなんて言われていた。でもサノアの技術が儂を救ってくれた。サイボーグ化する資金をためることができ、オーサカ・テクノウェポン社に就職することまでできた」
「連続ドキュメンタリーデスア〇メ宮本武蔵でも、なんかいい感じだったもんな……」
俺は頷く。ようやくこいつの立ち位置に納得がいった。つまり現在の状態は
①よく分らん化け物を生み出そうとしている陣営……サノア博士、フルアーマーの男
②サノア博士の暴走を止めたい陣営……デスア〇メ宮本武蔵、ダークワカヤマ社?
③漁船を取り戻したい陣営……一般通過ドラゴンと愉快な仲間たち
という状態なわけである。そして仮にサノア博士の計画が成功すると、他の大企業も参入してくるリスクがあるということだ。なんか一陣営だけ目的と戦力がおかしいのは置いておくとしよう。悪いのは人の漁船を奪ったサノア博士だしな。
とりあえず今回の件についてはデスア〇メ宮本武蔵は味方と思ってもよい。サノア博士と仲が良かったのであれば、彼女がよく使う手法を聞き出して包囲網をさらに狭めることもできるはずだ。俺が頷くと、デスア〇メ宮本武蔵もまた頷く。
「あいつを止める。それが儂の目的だ。人を壊す研究は、サノアの本意ではない。目的を見失い迷走し、走った後に死体しか残らない結末だけは、何としても変えて見せる」
「おお……」
彼の熱い心意気が伝わってくる。彼となら、今回の事件を解決に導けるかもしれない。心強い味方ができたことに、俺はぐっと手を握り締めた。宮本武蔵も俺の心意気に答えるかのように真っすぐ俺の目を見つめてくる。
「だから、こいつを貴様に預けようと思う」
「ここで話終わった方が良くない?」
めちゃくちゃ嫌な予感がする。せっかくここまで感動のストーリーが語られたはずだし、できればこのまま終わってほしいのだけれど。だがその思いは届かないらしかった。
「こいつこそもう一つの鍵。お前の妹にして、一つの完成体だ」
ガタガタガタガタと地面が鳴り響く。周囲の観光客たちが何事だとそちらを見渡す。砂埃の中からは、美しい砲塔が見えた。その先には黒いマイクロビキニがぶら下がっており一部異常性癖者の性欲を掻き立てる。
そういえばこんなやついたわ。でもこんな奴が主要人物でいいのかよ……と俺は頭を抱えるのであった。
「おにいちゃーん~!!!!!!!」
「妹系社会派人権保有人妻戦車!?」




