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辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~  作者: 紫月 由良
2章 辺境

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11. 森の騒めき

遅くなってすみません。投稿再開です。

今回は少し短めです。


 ――中央軍が森の外縁に展開


 その一報が入ったのはエーヴの片思いの話を聞いた翌日だった。

 辺境は一気に緊張感に包まれる。


 資源に恵まれる反面、魔獣の多い土地に住んではいるが、対人戦は経験が少ない。何より、三家の領地は国土の三分の一程度であり、人口は四分の一以下だ。当然、騎士や兵士の数も圧倒的な差があった。


 籠城側は攻城側より圧倒的有利だとはいえ油断はできない状況だ。

 中央側は短期決戦で勝利を決めなければ、勝ち筋が見えないというのは安心材料だろうか。

 仮に森が全焼し城壁が剥き出しになったところで、二重の砦の攻略は難しく、長期戦になったところで兵糧攻めにするのはほぼ不可能だ。


 なぜなら食料は豊富な上に、鉱物資源は産出量が少ないとはいえ鉄鉱山はマンティアルグ辺境伯領に、銀鉱山はフォートレル辺境伯領にある。何より中央の知らない隣国との繋がりがあるから、資源が枯渇する可能性は殆どないのだ。


「お兄様、どうして辺境(こちら)に軍を差し向けたのかしら? 勝つ見込みがあったと?」

「見誤ったのかもしれないね、我々には森以外ないのだと。領外に出していたのは確かに魔獣素材と薬草しかなったけどね」

 マンティアルグ辺境伯家も似たような感じだ。


「王都を引き払う前に鉱物資源を多量に購入したのは、もしかして誤認させるため?」

「そうだよ」

 お兄様は少し困ったような顔をする。


「こちらが自滅するのを待つと思ってたんだけどねえ。それでそのまま絶縁になれば良かったのに」

 こちらの資源が枯渇して困窮している筈だと、中央側が誤認するまではという意味だろう。


「冷却期間を空けての再構築ではなく?」

「マリエはそんな風に思っていたのか」


 少し驚いたように聞かれる。

 もしかして私は考えが甘かったのかしら?


「辺境だけでは魔獣素材も薬草も供給過多になってしまうでしょう? 資源の輸入などはなくてもなんとかなりますけど、でもやや供給不足気味になって値上がりするのはわかってましたから。隣国とのお付き合いといってもキエザ辺境伯領の産業はフォートレル辺境伯領と同じですから、経済効果は見込めません」


「そうなんだけどね、全く同じとまでは言えないから、そこまで駄目ということはないよ」

 悲観するほどでもないけど楽観的にいられないと思っていた。厳しく考えすぎていたのかしら?

 もう少し深く聞いてみたかったけど、だけど今はそんな時間は取れそうもなかった。



 * * *



「ジャック、あなたをここに置いておけなくなったの」

「そうですか……」


 かつてジョルジュという名で私の婚約者だった男は諦念を浮かべた。

 そこにはどこまであっても中央人の、国王に近しい血を持つ自分は辺境と相容れないのだという絶望が伝わってくる。


「あなたに非がある訳ではないの。それと中央に戻そうとか、駒として利用しようとかそういうものでもないわ」

「それではどういう……?」

 既に諦めの境地に至っているけど、私たちにそういう心算は微塵もない。


「間もなく戦争が始まるわ。もう気付いているでしょうけど。それで万が一、国王軍があなたを見つけたら厄介な事になるから、住む場所を移動しないかってこと。直ぐに終息するか、落ち着くまでに数年掛かるかわからないけど、その時に戻ってきたければこの村に戻れるように手配する。もし移動先が気に入ればそのまま定住しても構わない」

 私の提案は思ってもいなかったようで訝し気な表情を浮かべた。


「あなたは既にオリオール伯爵家の領民でしょう? 領主(わたし)が守るべき人になったの。もっとも移動先はフォートレル辺境伯領だけど、それほど変わらないわ」


 初代領主が兄妹であり、その後も兄妹や従兄妹のような関係のまま今日まで続いている二つの家は、自分の治める土地のように二つの領地を大切に慈しんでいるし、領民も二つの別の領地という意識はなく一つの領地として認識していた。


「王都に帰りたいと言わない限り辺境に住み続けられるわ。此処に骨を埋める気だと言うならそれも良いと思ってる」

 本当は王都に戻った方が良いと思っている。多少といったところだけど。私たちが王都を去ってから何があったかしらないけど、家族仲は悪くなかったから。


 決して出来が良いとはいえなかったけど、御父上である公爵も嫡子のお兄様も彼を可愛がっていた。溺愛ではなかったけど。頭が軽い方が駒として使い勝手が良いからというのもあったとは思うけど、それ以上の何か、絆みたいなものは確かにあったのだ。


 だから本人が言うような状況だとは思えないところがある。

 とはいえ一度、話し合ってみればなんて安易に言えないけど。一度、王都に戻ってしまえば二度と辺境の地は踏めないだろう。御父上か伯父である国王が決めた結婚までは実家に軟禁され、結婚後は婚家に軟禁されて。


 彼自身には大きな価値があるとは言い難くても、彼に流れている血は王都において絶対的な権力を生む。


 現国王には王子が三人と王女が一人。そのうち結婚しているのは王太子ただ一人で子供はいない。王の子の次に王位継承権が高いのは異母弟であるミラボー公爵、そして長男。ジャックは王位継承権七位なのだ。何処に住み誰と結婚するとしても、王家のあずかり知らぬ場所に住むのは決して許さないだろう。


「そういうことなら仕方ない」

 溜息を吐いたジャックは、しかし先ほどまでの諦念を浮かべてはいなかった。


「セザールが今、引受先に話を通しているの。受け入れが決まったら来るから、それまでに荷作りをして挨拶を済ませておいて」


 用件だけを伝えると私は村を後にする。

 開戦前の今、やるべきことはまだいくつも残っていた。

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