37:暗い!
一人で屋内プールまで行くつもりだと、メイに告げると……。
「お嬢様を一人にするわけにはいきません!」と、当然だが反対されてしまう。だがレデリックも一人で来ると言っているのだ。フレデリックは王太子なのに! それなのにこちらが侍女や従者を連れて行くのは……。
遠くから見守るにも、屋内プールは通路を歩いて右手にある。隠れて見守るには、その通路に入る手前で待機するしかないだろう。
「それで構いません。もしもがあれば、そこからお嬢様のところへ駆けつけることができると思うので。それに告白の邪魔をするつもりもありません。遠くから見ているだけで、会話を盗み聞きするつもりはないですから」
「分かったわ。でもメイだけよ。レイまで連れて行くのはさすがに。フレデリック王太子殿下は、一人でいらっしゃるのだから。せめてこちらは、私とメイの二人にしないと」
これにはメイは、しばし黙り込んで考え込んだが「分かりました。仕方ないですね……」と、同意することになった。
こうして。
指定されている時間に、屋内プールまで向かうことになった。
フレデリックと私のいる部屋は、同じフロアであり、とても近い。ただ、待ち合わせとなる屋内プールは離れている場所なので、行き方は幾つかある。それにまだ舞踏会が行われている時間だった。フレデリックは、舞踏会が行われている大ホールから向かう可能性もある。
よってメイと一緒に歩いていても大丈夫……とも思ったが、かなり距離をとり、かつ少々遠回りになるルートで、屋内プールまで向かうことになった。
悪いことをしているわけではない。
でもなんだか周囲を気にして待ち合わせ場所へ向かうことが、スリリングに思えてしまう。ハラハラ・ドキドキしている。
「あ……」
プール施設につながる通路のところまで来たが、まずポールが立てられ、「Close」の札がかけられている。通路の明かりも消えており、真っ暗だった。
フレデリックはこの状態を知った上で、ここを待ち合わせ場所に選んだのかしら?
人気がない――という点では、間違いなかった。
ただ、ここまで暗く、営業時間外をアピールされると、本当にここで待ち合わせなの?と不安になる。
「!」
通路はそのまままっすぐ行くと、突き当りの通路に出るようになっている。こちらと同じように、突き当りのその先に、ポールがでているのが見えていた。そしてそちら側から、真っ暗な通路を歩く人の姿が、見えたように思えたのだ。
もう一度目を凝らすと、間違いない。
黒いシルエットが動いているように見えた。
大声でフレデリックの名前を呼ぶことも考えたが、明かりが灯ったのだ。通路ではなく、屋内プールの入口の明かりが灯った。ということは、先に着いたフレデリックが施設の中に入り、明かりをつけてくれたことになる。
そもそも「Close」の札とポールにより、屋内プールの入口まで、行けないようになっていた。当然施設の入口は、鍵がかかっていたはず。それを開けた上で中に入り、明かりもつけることができたというのなら……。許可をとったのだろう。フレデリックの立場であれば、それも可能だと思う。
というか既にフレデリックが到着しているなら、待たせることになってしまうわ。
通路の後ろを振り返り、メイがどうしているか確認するが、完全にバレないようにしているのだろう。
その姿はどこにも見えない。


























































