21:希望の光
「きっとイミル殿下が選んだ側妻の皆様であれば、素晴らしい方なのでしょう。そうであっても、やはりトータルで考え、私にハーレムという枠組みの中で、イミル殿下と結婚は……難しいと思います」
しばらくはイミルが私を説得しようとしたが、意見は平行線だ。
側妻はこれ以上迎えないと言われても、既に八人はいるわけで……。
非がない側妻とは離婚できない。よって私と結婚したら、側妻がいる離れには、月に一回しか向かわないという。でもそんなことをしたら、世間から正妻への非難が集まると思う。正妻だからと夫を独占するのは、ひどすぎると。
「どうしても、ダメか」
「申し訳ありません」
無念そうな顔をしたイミルだったが、それでも最後は「……分かった」と言ってくれた。
が。
ここからなのだ! 本題は。
「イミル殿下、本当に申し訳ありません」
「いや、ヴィクトリア公爵令嬢が謝ることではない。これは文化の違いなのだから。……もっと早く、そなたと出会うことができていればよかったのに……」
それは……どうなのだろう?
側妻を誰一人迎えていないイミルと出会い、正妻として結婚したとしても。
跡継ぎができなかったら、側妻を迎えることになっただろう。
結局はイミルがハーレムを持つのも、跡継ぎのためでもある。
四年に一度、国の代表に立つ必要があるのだから、跡継ぎは必須だった。
「結婚はできないとお断りした後に、こんなことを聞くのはとても心苦しいのですが……。もし私が婚約破棄され、サハリア国の砂漠を私が彷徨うことがあれば、助けていただくことは……」「勿論、助けるよ」
即答したイミルは、実に艶やかに微笑む。
「昨日、そなたに出会えたのも、何かの縁だったと思う。わたしと少しでも縁のあった女性が、他でもないヴィクトリア公爵令嬢が不幸になるのを、見過ごすことなどできぬ」
これには安堵し、胸を撫でおろすことになる。
やはりイミルは、ただの女好きの金持ちというわけではなかった。
「もし婚約破棄され、断罪されることがあれば、すぐに連絡をくれ。国境の砂漠を監視させるから」
「ありがとうございます、イミル殿下……!」
これで本当に助かるかは、分からない。
でも希望の光が心に灯ったのは確かだ。
終活のつもりで旅行に出たけど、断罪後の救いの可能性と出会えて、本当によかったわ……!
気持ちが晴れ晴れした私は、この日から一週間。
時にイミルと共に、さらに彼が実は同行していた側妻たち(!)と、リントン王国最大の港町アドルアルゼの観光を満喫した。


























































