14:訳あり?
「……成熟した大人の女性にしか見えないのに。一体、いくつなのだ?」
私が十八歳であると知ると、イミルは驚愕している。驚きつつも、ならばと注文してくれた飲み物は……ミントたっぷりのレモネード。用意されている料理は、脂っぽいものが多いため、このさっぱりな飲み物が実にあうという。
イミル自身は、砂漠の国から持参した蒸留酒を飲んでいる。それは見た目が前世でお馴染みの、甘酸っぱい乳飲料みたいに思えた。匂いをかがせてもらうと、白い色に反し、独特の香草の香りがする。なんだかアルコール度数がめちゃくちゃ高そうだ。
イミル曰く、用意されている食事によくあうし、少しずつ飲むので酔うことはないというのだけど……。多分、本人が酒豪なだけの気もする。
ともかく届いたドリンクとお酒をそれぞれ手に持ち、乾杯をした。
「学校を卒業し、学生生活最後のバカンスシーズンで、供を二人だけ連れ、旅行をするとは。しかも公爵家の令嬢であるのに。かなり破天荒に思える。だがリケッツ国には、そなたのような斬新な令嬢が多いのか?」
イミルはボイルした海老を、岩塩入りのオリーブオイルにつけながら、私に尋ねた。
「私のような旅行をする令嬢は、他にいないと思います。私には諸事情がありまして……」
「なんだ、訳ありなのか? 見るからに容姿や地位にも恵まれ、学業も優秀な成績を修めていそうだ。それに王族の婚約者なのであろう?」
そうなのである。本来、スーパーサラブレッド公爵令嬢のヴィクトリアは、乙女ゲームの世界なんかでなければ、問題なく婚儀を挙げ、王族の一員になっていたと思うのだ。
いや、そもそも乙女ゲームだからこそ、ヴィクトリアのような令嬢が存在しているのでは? 普通はこんなスーパーサラブレッド公爵令嬢は、いないのではないかしら?
でも前世の歴史を紐解けば、ヴィクトリアのような令嬢は、いたのではなくて?
「なるほど。その悩む姿。実に男心をくすぐる。そなたの悩み、わたしに打ち明けて見るがいい」
さりげなく手を伸ばしたイミルが私の手をとり、指を絡ませる。その上で甲へとキスを落とす。お酒を飲んでいるせいか、日中より、イミルの唇に熱を感じた。
昼間、一度経験していたので、ほんのわずかな耐性はついている。でもやはりこの手の甲へのキスは、心臓にくるものだ! 一気に全身が熱くなり、慌ててミントたっぷりのレモネードを飲み、そして悩みを打ち明けることになった。
それはもう、甲へのキスのおかげで、テンパっていたせいか、嘘をつけなかった。
前世や乙女ゲームの件をのぞき、かなり洗いざらいを話してしまった気がする。
「ほう。ヴィクトリア公爵令嬢のような婚約者がいながら、浮気をするとな。それは最低な奴だ。しかも相手の女は、してもいない嫌がらせをされたと解釈し、自ら嫌がらせを受けようと近づいてくると。面倒だな」
そこでイミルは、黒水晶のような切れ長の瞳で私を見る。
心臓がドクンと反応する。
「解決策がある」


























































