11:ナンパはつきもの
案内されたラグジュアリースイートは、とんでもなく素敵なものだった。
5つのベッドルームに二つのバスルーム、書斎、リビングルーム、ダイニングルーム、広いバルコニー、勿論オーシャンビュー。
昼食は広場まで戻り、通称“グルメアベニュー”と呼ばれる飲食店が立ち並ぶ通りへ行き、そこでシーフード料理を満喫した。そして浜辺まで行き、白い砂浜と青い海を、レイとメイと共に散策。
童心に返り、砂でお城を作ったり、波打ち際で濡れるか濡れないかで遊んだり。
この世界でも、海にナンパはつきもののようだったが、レイがすべて撃退してくれた。
一応、私、もしものアバンチュールも考えていたのよね。
でも流石に海でナンパは軽いノリで、体目当てなイメージが強い。ゆえにレイが撃退してくれて……正解かな。
そういえば自身はナンパしていないのに、撃退するレイを見て、ビビった感じの令息がいたわね。
高身長なぽっちゃり令息。
周囲に護衛の騎士が数名いたから、高位貴族だと思う。
海風になびくシルバーブロンドは、シルクのように美しく、海に負けないぐらい綺麗な碧眼をしていた。一瞬、私と目が合うと、慌てて視線を逸らしていたっけ。
そんなことを思いながら、ホテルに戻り、部屋に入った私は、まずは入浴。海風を浴び、髪はパサパサしていたし、ワンピースや手足にも砂がついていたからだ。
その後は、バルコニーに向かった。
バルコニーに用意されていたロッキングチェアに身を預けた私は、もう完全にリラックスタイム。目の前に広がる美しい海を、ただただぼーっと眺めていた。
用意されたレモネードを飲み、ジャンプしたら届きそうな気がするターコイズブルーの海を眺め、ぼーっとするのは至福の一時だった。この時の私は、すべて忘れている。自分が悪役令嬢であることも。断罪回避のことも。なぜここへ来たのかも。全部。
「お嬢様」
「お嬢様」
「お嬢様」
「お嬢様!」
「はいっ!」
ぼーっとした私に、レイが声を掛けた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「え、ええ。ぼんやりしていただけよ」
レイはそのシルバーアイを細め、私を見る。
とても心配そうな表情をしていた。
「お嬢様はこの旅を終えたら、どこに行くおつもりですか?」
「えっ……」
「何度も申し上げていますが、僕は……何があっても、お嬢様のおそばを離れるつもりはありません。例え何があっても、何が起きようとも。僕のすべてはお嬢様と共にありますから」
レイの銀髪が風を受け、サラサラと揺れている。
そしてそのシルバーアイには、涙さえ浮かんでいた。
あんな風に部屋の片づけを命じてしまったから、気が付いているのかもしれない。でもこの後、私が婚約破棄され、断罪され、砂漠を彷徨うことになるなんて、レイは知らないはずだ。それでもこんな風に言ってくれると、嬉しくなる。
嬉しいけれど、もし、ネイサンが私を断罪したと知ったら……。
レイは……ネイサンを手に掛けるかもしれない。
それはダメだわ。腐ってもネイサンは王族なのだから。手に掛けたら最後、レイが断頭台送りになってしまう! それにそんなことをすれば逆賊扱いとなり、両親や兄だって大変なことになる。
それだったら共に砂漠へ……。
いや、レイを巻き込むわけにはいかないわ。
「ありがとう、レイ。旅が終わったら、何か変化があるかもしれないわ。……もしかすると、砂漠で人探しをすることになるかもしれない。だから砂漠でのサバイバル術を調べておくといいかもしれないわ」
「砂漠……ですか? サバイバル術? 人探し……」
レイはその美しい顔で、真剣に私の言葉について考えている。ホント、長く一緒にいるのに、レイのこの綺麗な顔を見慣れることはない。いつ見ても眼福。
「かしこまりました。お嬢様」と素直に返事をしたレイは、改めて告げる。
「サハリア様からディナーの招待状と、プレゼントが届けられています」
お読みいただき、ありがとうございます!
【週末サプライズ】
『ざまぁは後からついてくる
~悪役令嬢は失って断罪回避に成功する~』
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本作のSSを公開しています。
気になる読者様はページ下部のイラストリンクバナーから
遊びに来てくださいませヾ(≧▽≦)ノ
『悪役令嬢は徹底して悪女を演じる
~おーほっほっ!は卒業したい!~』
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追加SSの後書きに書いた通り、さらにカルヴィンについて書き下ろしています!
もしよければご覧くださいませ~
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