プロローグ
●プロローグ
煌びやかな室内。室内の美しさは内装の美しさだけでなく、豪華絢爛に着飾った人々によるものも大きい。財政難で苦しむ者たちもいる王国だが、今日の為だけに用意されたタキシードやドレスの人が一体何人いるのだろう。
左斜め前に立つ友人、ケリー伯爵令嬢であるグレタ・ケリーを盗み見る。彼女は今日もうっとりする程美しい。家宝の一つのブレスレッドに合わせたドレス。美しいブルネットを纏める飾りは初めて見るので、今日の為に用意したのかもしれない。
ダンスがメインのパーティーの筈なのに、こんなに美しいグレタが壁の花でいいはずがない。
自分の立場も、彼女の立場も理解している。――多分、この状況を誰よりも理解しているのは私。
楽団が最後の曲を終えると、グレタの婚約者であり、この王国の王位継承権第二位の王子であるエイトールが、ダンスパートナーの手を引いてホール奥の階段に進む。
何回も見た景色。見飽きたけど、これを見飽きた人間は私だけだ。
正式な卒業前の、モラトリアムの最終学年を迎える自分たちへの進級パーティー。私も含めた他の人たちにとっては初めてのことだから、初めての光景のはず。――でも、私は見飽きた。
エイトール王子がフローレス男爵令嬢と睦まじく微笑みあいながら踊り場まで進む。
パーティーのスタートと中間、終盤の生徒会メンバーや王家の方々の登場、スピーチで使われることが多いその場を使用する意味を、あの二人はわかっているのだろうか。
「クシランダー王国の第二王子、エイトールの名において宣言する!本日をもって、この私エイトールは、グレタ・ケリーとの婚約破棄を宣言する!!」
あの馬鹿王子による茶番に巻き込まれたグレタと、この後更に巻き込まれるメンバーの一人が私。
自分の紹介は後でするとして、とにかくこの場ではグレタを守らないと。