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謎の騎士

 全身を黒い甲冑で覆った黒い騎士、魔王にも劣らぬ力で人々を襲う彼を、人々は新たな魔王だと騒いだ。


 だが、決して魔族を従えるわけではなく、あくまで単独で世界を滅ぼさんとするその黒騎士を人々は邪神と呼んだ。


 この一〇年で既に一〇〇万人以上の人が殺され、大小合わせて四つの国が滅んだ。


 そして悲しい事に、レイドの跡を継ぐと叫び挑んだ多くの勇者パーティーは、一人残らず殺された。


 そこで勇者レイドの故郷、アルベルドが取った作戦、それは大天使召喚である。


 霊脈の中心、グレモア盆地で選び抜かれた一〇〇人の術師達が行う秘術で精霊ではなく、天界の天使を召喚し、悪しき邪神を討ち払ってもらうのだ。


 王様は勇者の力を信じていないのかとエリスは不満だったが背に腹は代えられない。


 エリスとて今の自分が邪神に勝てるとは思っていないし、人々の苦しむ顔を見れば、そのうち自分が倒すからもう少し待ってくれとは言えなかった。


「いたぞ」


 茂みに隠れるエリスの視線の先には五体のドラゴン、中型だがそれでも人が住む民家ほどの大きさがある。


 当たり前だが、山と言っても上り坂ばかりではない、広大なグレモア山脈の中にあるグレモア盆地に行くには坂道の他、多くの平地や下り坂を進み、森を抜け、崖を登らなくてはならない。


 グレモア山はドラゴンの住処、一万の兵と三〇組の勇者パーティーがいれば恐れる事はないが、さすがに登り坂や、まして崖を登る最中に襲われればひとたまりも無い。


 エリス達はそういった事にならないよう、偵察に出たが、運よく登り坂にドラゴンの姿は無く、なだらかな平地にドラゴンを見つけた。


 五体のドラゴンは全員地面に横たわり寝ている。


 おそらくはここが巣だろうと判断して、エリスはドラゴンが見えないところまで後退するとアルアを剣の鞘でブチのめした。


「それで君はどうしてずっと私の胸を揉み続けていたのかな?」

「いや、物音立てちゃいけないあの状況ならエリスちゃんも抵抗できないと思って、いやはや予想通り揉みほうだいだったよ」


 悪びれる様子も無く笑うアルアに一言、


「ところで最近新しい必殺剣を覚えたんだが何か試し斬りにできるものは」

「すいませんでした! お願いだからアレだけはやめてー!」


 過去の記憶に恐怖し涙を流して両手を合わせるアルア、見た目が美少女だけにとことん残念な娘である。


「まったく、そろそろ他の人も戻っているだろう、私たちも早く」


 カサ

 そこまで言って、エリスは今出てきた茂みを振りかえった。


「どったのエリス?」

「いや、茂みに誰か入って行った気が」

「え? だってあっちはドラゴンの巣でしょ? ヤバくないっていうかそんな人いた?」

「それはそうだが……っ」

「あっ、エリスー!」


 それでもエリスは万が一の事を考え、また茂みの中に戻る。

 背後から止めようとするアルアの声が聞こえるが、もしもドラゴンの巣に誰かが迷い込んだらと思うと、いてもたってもいられなかった。


「!?」


 果たして、彼はそこにいた。

 眠るドラゴン達の間を、歩き慣れた故郷のように足を進め、白銀の鎧を着た男性の涼しげな顔は眉一つ動かない。


「ちょっとエリス、こんな山奥に人がいるわけ……」

「静かに、あれを見ろ」

「ほえ? どこ?」


 見直せばそこに人はいなかった。

 エリスは首を傾げる。

 だが確かにそこにいたはずなのだ。

 見間違いか、自分はそこまで疲れていたかと思い返しながらも、エリスはそんなはずは無いと被りを振った。


「悪いなアルア、でも私は確かに見たんだ」


 そう言ってエリスは魔力で足を強化すると近くの崖を一瞬で駆け上がり、高いところから彼の姿を探そうとした。


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