卒業式
「卒業おめでとう、本日を以って君達は勇者だ!」
桜舞う季節、レイド学園の講堂で学園長が生徒達に祝辞を述べる。
勇者学科、剣士学科、黒魔術学科、白魔術学科、その他各学科の生徒達数百人は席に着いて自分達の未来に心躍らせている。
子供達の立派な姿に、保護者や講師達も喜びのあまり涙を流す者までいた。
厳密な勇者は勇者学科の生徒だけだが、この世界では勇者パーティーのメンバーを便宜上、勇者と呼んでいる。
「では、主席卒業生エリス、壇上へ」
学園長が下がると、一人の少女が階段を上り、壇上に立って生徒達を見渡す。
艶のある髪は昼の太陽を浴びて黄金に輝き、サファイアのような瞳と雪のように白い肌はこの六年間、多くの男子生徒を魅了してきた。
だが彼女が手に取るのは素敵な彼氏の手ではなく、剣だけである。
凛とした空気を纏わせ、エリスの小さな唇が開く。
「みんな、重ねて、卒業おめでとう」
その涼やかな声には、生徒達だけでなく、保護者や講師の者まで思わず聞き入ってしまう。
エリスの声はそれほどに聞き心地が良い。
「初代勇者、レイドが世界を救ってから一〇年、ようやく勝ち得たこの平和を守るのは彼らの意思を継ぐ私達の義務だ」
美しくも力強い声質と上手な間の取り方でエリスは皆を引き込む。
「私達は世界の変わらぬ平和の為、この身を捧げると入学式で誓った。
今日、この日を迎えた皆の中にはあの日と変わらぬ気持ちが今でも生きづいているだろう」
生徒達が頷くのを確認して、エリスは握った拳を胸の前に上げる。
「だからこそ、私はここで私の夢を掲げる!
そして皆もついて来て欲しい、いや、これはこの場にいる全員が共有する夢であるはずなんだ!」
一際大きな声を張り上げ、エリスは拳を高く振り上げる。
その拳を講堂の全員が注視して、勇者エリスは声高らかに宣言した。
「勇者レイドが勝ち取った平和を乱すあの悪しき敵は私達の手で、私達の代で打ち倒す!
そう! あの邪神、黒騎士を!!」
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