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とある魔法少女のビデオレター

作者: SEA BLITZ


(目を腫らした少女がしゃがみながらビデオの操作をしている)


「……よし」


(操作が終わり壁が崩れた教室の教卓の手前に少女が立つ)


「えっと……えへへ。やっほー、私だよ」


(少女がカメラに向かって笑いかける)


「多分、今これを見てるのはーーくんだと思うんだけど、もし違う人だったらごめんなさい!」


(少女が手を合わせて数秒頭を下げる)


「これは、私、ーーーーがーーーーくんに向けて撮影してる……なんだろ、ビデオ、レター?かな?です」


「ーーくん、メッセージの意味、わかったかな。わかったから、そのカメラを見つけてくれたんだよね」


「直接カメラを渡さなかったのは……覚悟が揺らぎそうだったから。あのね、私、戦うことにしました」


「あんなに止めてくれたのに、勝手に決めて、怒ってるかな。でも私、みんなが、ーー君が少しでも長く生きられる可能性があるなら、諦めたくなかったの」


(少女がゆっくりと撮影地を見渡す)


「教室、ボロボロだね……机も椅子もめちゃくちゃ……でもね!私とーーくんの机はなんとか残ってたよ!」


「ねえねえ、覚えてる?初めて話しかけてくれた時のこと。転校してきてちょっと浮いてた私に気を遣って話しかけてくれたんだよね?私、本当に嬉しかった!実はあの時から……えっと」


(少女が落ち着かなさそうに髪を払う)


「……よし。じゃあ本題!この間の返事です!私、ーーーーは、ーーくんのことが、大好きです!本当は話しかけてくれた時からずっと好きでした!」


(少女が深呼吸をする)


「手が白くてスラッとしてて綺麗で、髪がサラサラしてて、いっつも寒がって夏服になるのが遅くて、たまーに私に甘えさせてくれて、授業なんかぜーんぜん聞いてなさそうなのにしれっといい成績取ってて、人前で歌うの嫌がるくせに歌がとっても上手で、文化祭の小物とかぱぱっと作っちゃって、色々できるくせにいっつもめんどくさがってて、でもいっつもみんなのことを考えてる世界一優しくてかっこいいーーくんの全部が、私は本当に本っ当に大好きです!」


「私を好きになってくれてありがとう!告白する勇気のなかった私に、想いを伝えてくれて、ありがとう!」


(少女が手で顔を扇ぐ)


「……ふー。言っちゃった。えへへ。あ、あともう一個!サプライズがあります!」


「ーーくん!6日後誕生日でしょ?だから、誕生日プレゼントを用意しました!ペアのネックレスです!」


「この教室の、私の机にーー君の分を入れてるので後で取っといてねー!それで、実は今つけています!」


(少女が首元のチェーンを引っ張り、服の中に入っていたネックレスの飾りを見せる)


「かわいいでしょー?でもこういうのなら男の子も付けれると思ったんだ!私のは月がモチーフ!ーーくんのは太陽だよ!」


「ーーくんに照らされたから私は幸せだから……ちょっとクサいかな。えへへ。このネックレスと太陽がーーくんを守ってくれたらって思ってます!」


「えっと……それでね?本当は、私のことは忘れて幸せに生きて、とか言った方がいいんだけどね?ーーくんも知っての通り、私はわがままです!」


「私は最後までーーくんのことを大好きでい続けるから、ーーくんもずーっと私のことを好きでいてください。そのネックレスを大事にしてください。それが私たちを繋ぐ絆、だよ」


「じゃあ……えっと、2度目になるけど、告白してくれてありがとう。こんな形でお返事することになってごめんなさい……グスッ、ごめん、笑顔で終わりたかったんだけど……」


(少女がしばらく鼻を啜る音が続く)


「……はー。じゃあ、行ってきます!どうか、できるだけ長く、生き続けて。多分、学校より西側で戦うことになると思う。だから、逃げて。お願い」


(少女がカメラの目の前まで歩いてきてしゃがみ込む)


「……ばいばい」


(映像はここで終了している)

 当映像は一般に普及しているビデオカメラ(ーー社製AG-O60376)に保存されていたものである。ビデオカメラは、ーー県ーー市で意識を失っていたーーーーと見られる少年が所持していた。少年は現在も意識は回復していないが、栄養失調と疲労が原因と見られており、数日以内に意識が戻る見込みだ。

 撮影地は、少年の発見された場所から西に20km程離れたーー高等学校であると思われる。映像からは、撮影地の学校が半壊していることが確認できる。

また撮影時刻は第三襲撃の約15時間前となっている。撮影者とみられるーーーーの行方はわかっておらず、現在も捜索を継続中。

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