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この出逢いを俺は運命と呼ぶ

猫の日なので新連載始めます。

「ごめんね、本当はうちに連れて帰ってあげたいけど、……私にはもう時間がないの」


 雨音に紛れて微かに聞こえてきたその声に、気付けば急いでいたはずの足を止めていた。


 傘の隙間から見えたその頬に伝う一雫が何なのか、その時の俺には確認する勇気を持ち合わせてはいなくて。


 少女が気付かないであろうギリギリの距離で、事の成り行きを見守ることしかできなかった。


「あなたには素敵な人が現れますように。ううん、必ず現れるわ。だってこんなに可愛いんだもの」


 少女は優しく呟くと、びしょ濡れになった仔猫をゆっくりと抱き上げて、額に携えた模様に優しくキスを落とした。


 その光景がまるで物語のワンシーンのようで、目を逸らすことなどできなかった。


 一瞬で恋に落ちた。


 そのことを自覚した時には、少女はすでにその場から走り去っていた。


「また会えるかな……」


 雨に濡れないように、と残されたピンク色の傘を見て、自然とその言葉が溢れていた。


 それに応えるかのように、ダンボール箱の中で“みゃあみゃあ”と鳴く仔猫が他人とは思えなくて、俺は手を伸ばさずにはいられなかった。


 王城という箱庭の中で、外の世界に出たいと必死に踠いている俺と重なって。


 でも一番はきっと、この仔猫があの少女との唯一の繋がりのような気がしたからかもしれない。


「お前も彼女に会いたいよな?」

『みゃあ』

「……じゃあ、俺と一緒に来い」


 ピンク色の傘を手に取り優しく仔猫を抱きかかえると、真っ直ぐに王城へと連れ帰った。






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