ボクはみんなの流れ星 冬童話2022
ねぇねぇ、流れ星って知ってる?
お空をびゅーんと駆け抜けてる星だよ。
みんなは、流れ星を見た時に、
「あっ流れ星だ! 願い事をしなくちゃ!」
何て言って、流れ星を見るとお願い事をしているよね。
確かに流れ星は願いを叶える存在なんだけど、実際はちょーっと違うんだよね。
どう違うのか知りたいって?
仕方ないなぁ、じゃあ教えてあげる。だって私が流れ星だから。
私は流れ星のヒロ。これでも大人なんだよ。だってお仕事をしてるから。
私のお仕事って何だと思う?
とっても重要なお仕事なんだよ。
私はね、病気の人がいたり、怪我をした人がいたりした時に、応急処置をして光のごとく他の星まで連れていくのがお仕事なんだ。
地球でも似たようなお仕事があるよね。確か……救急車って言ったかな?
救急車じゃ間に合わない時とか、気づかれていない時とか、そんな時にお仕事をするのが私だから、救急車の救急車っていうのが正しいのかもしれないね。
今日もね、宇宙で怪我をしている人がいたから、そこから一番近い星まで私が連れて行ってあげたんだよ。その姿が、外から見ると流れ星の状態なんだ。
だからね、流れ星が見える時って言うのは、誰かがケガをしてたり、病気をしてたりしていて、その人を直すことのできる場所まで運んでいるってことなの。
知らなかったでしょ。
あっ!流星群!
どこかで大量に病気になった子たちがいたのかも。食中毒かもしれないね。大丈夫かなぁ?
それとも、交通事故かな?
私もお手伝いできることがあるかもしれないから、現場に行ってみよう。
びゅーん
びゅーん
びゅーん
あ!
あそこだ。
子どもたちが集団でお腹を抱えて痛がってる。
食中毒だったみたい。
みんな苦しそうにしているし、私も手助けしよう!
「ねぇねぇ、私も運ぶよ」
「ん? あぁ、もう大丈夫だよ。誰がどの子を運ぶのか、もう決まっているからね。ありがとう」
「でも……」
断られちゃったけど、すぐそこにまだ泣いている子がいるのに。
「あの子は……ほら、来た来た。あの流れ星さんが運んでくれるんだよ」
そう言われて見てみると、緑色に輝く流れ星さんがやってきた。
「ごめんごめん。他の子を運んでたら遅くなっちゃって」
「いいよ。君の担当の子は、その子だよ」
「わかった。すぐに運ぶね」
緑色に輝く流れ星さんはそう言って、泣いていた子に応急処置をしてから運んでいった。
「ね、大丈夫だったでしょ」
「うん。じゃあ、まだ泣いている子たちも、すぐに他の流れ星さんが迎えに来るんだね」
「そうだよ。だから君は、他の場所で待機しててね」
「わかったよ」
私は、まだそこに泣いている子たちがいるのに帰ってしまうのは気がひけたので、少しだけ離れたところで見守ることにしたよ。
確かに迎えは来ているみたいだけど、私がここにいるんだから、私に任せてくれればすぐに運べるのになぁ。
そう思っていたら、オレンジ色の流れ星さん、赤色の流れ星さん、青色の流れ星さんがやってきて、それぞれ泣いている子を連れて行っちゃった。
これでもう、ここには泣いている子は誰もいない。
「あれ? 君、まだいたのかい?」
「うん、やっぱり気になっちゃって」
「君は優しい子なんだね。でも、大丈夫だっただろ?」
「うん。でも、また何かあったら私を呼んでね。すぐにくるから」
「わかったよ。君のことも覚えておくね、黄色の流れ星さん」
私はそう言って、ようやくそこを離れたんだ。
怪我している子や病気の子がいても、集団の場合は顔見知りの流れ星さんから呼ばれるってこと覚えておかないと。
私も長い間、流れ星をしてきたつもりでいたけど、知らないことがまだまだあるみたい。でも、私は困っている人を助けたいから、今まで見たいにヘルプが聞こえたら誰よりも早く駆けつけるのは変わらないけどね。
「誰か~誰か助けて~! お母さんを助けて~! えーん」
あっ、誰かのヘルプが聞こえてきたよ。
今度は、あの星。地球から声が聞こえる。
地球には人が運転する救急車があるんだけど、救急車も気づいていないのかもしれない。
とにかく早く行ってみないと!
びゅーん
びゅーん
びゅーん
あっ!
いたいた。女の子が泣いてるよ。
その横には大人の女の人が倒れてる。
「大丈夫? どうしたの?」
「あなたはだぁれ?」
「私は流れ星のヒロだよ」
「流れ星さん?」
「うん、そうだよ。あなたのお名前は?」
「私はミナだよ」
「ミナちゃん。さっき助けを求めていたよね。どうしたの?」
「あ……えーんえーん。ママが、車にはねられて倒れちゃったの」
女の人を見ると、外傷はないみたいだけど、息をしていないみたい。これはとても危険な状態ね。
「わかった。私がお医者さんのところに連れて行ってあげるからね。その前に、応急処置をしなくっちゃ」
女の人の身体を、ゆっくり仰向けにしてから、もう一度外傷を確認。他の状態も確認してから、気道を確保。
うん、これは運ぶ前に心臓マッサージをしたほうが良さそう。
行くわよ~!
キラキラ~
キラキラ~
キラキラ~
「うわぁ~まぶしいよ~!!」
「ごめんね。ちょっとだけ我慢しててね。今、私がビリビリ状態になってるから」
私は自分の身体を光らせてもう一度心臓マッサージ。
キラキラ~
キラキラ~
キラキラ~
「うっ……」
「あっ、ママの意識が戻って来たみたい」
「え、本当? ママ~! ママ~!」
「待ってミナちゃん。今は手を握るだけにしようね」
「うん……わかった」
「ミナちゃんは良い子だね。それじゃあ、ママと一緒に病院に行くよ。私に捕まって」
「うん!」
びゅーん
びゅーん
びゅーん
救急病院に着いたわ。
「先生! 先生! ミナちゃんのママを診てあげて」
「おや、ヒロじゃないか。すぐに診よう」
「ありがとう、先生」
「ミナちゃんは、私と手を繋いでママを見守っていようね」
「うん!」
ママが救急室に運ばれて、先生と看護師さんが状態を見始める。
「どれどれ。ヒロが心臓マッサージをしてくれたんだね?」
「うん」
「さすがヒロだ。心臓マッサージをしていなかったら、危険な状態だっただろうけど、ヒロが応急処置をしてくれたおかげで、ミナちゃんのママを助けることが出来そうだよ」
「本当!」
「あぁ、だからヒロはミナちゃんと外で待っていてくれるかな? 後は先生の方で最善を尽くすから」
「うん、わかったわ。ミナちゃん、行こう」
「うん」
ママが応急室から手術室に運ばれて、30分。
先生が出てきたわ。
「ミナちゃんのママはもう大丈夫だよ。でも今は眠っているから静かにね」
私とミナちゃんが部屋の中に入ると、ママは点滴を付けていたけれどスヤスヤ眠っているみたい。
確かにもう大丈夫そうね。
「ママ眠ってる。でも、もう苦しそうじゃないね」
「えぇ、ママは助かったのよ。ミナちゃんが、私に助けを求めてくれたおかげでね」
「流れ星さん、ありがとう!」
「どういたしまして。じゃあ、私はもう行くわね」
「え、もう行っちゃうの?」
「うん、他にもミナちゃんみたいに助けを求めている人がいるかもしれないから」
「そっか……わかった。寂しいけど、ミナ一人でも大丈夫だよ」
「ミナちゃんは良い子ね。じゃあね、バイバイ」
ミナちゃんに手を振って、私は空の彼方へと飛んでいく。
びゅーん
びゅーん
びゅーん
さぁて、他にも私を呼ぶ声がないかどうか、耳を澄ましておかなくちゃね!