お嬢様が婚約破棄されたので優しい言葉をかけたら、おかずが一品多くなりました。
「ベルク、ベルク! ちょっと来なさい!」
お嬢様の怒声のような呼びかけに小走りで駆けつけ、軽く2回ドアをノックします。
「お呼びでしょうか、お嬢様」
「早く入りなさい」
「失礼します」
扉を開け中に入ると、丸まった布を投げつけられました。
避ければ更に機嫌が悪くなるので、顔にあたり落ちたところを受け止めます。
「ちゃんと洗ったの? こんなものを身につけさせようなんて、私に恥をかかせるつもり?」
布を広げるとお嬢様のドロワーズ。つまり下着です。
「すいません。もう一度洗い直してきます」
「ちゃんと真っ白にするのよ!」
私は部屋を出て、小さくため息をつきました。
新しいものを買おうにもお金はなく、どうやってもお嬢様が望む色には戻らないでしょう。
貴族でありながらそのような暮らしを強いられるお嬢様に、私は心を痛めるのでした。
私が従者としてお仕えしてるのは、ブリガスタン子爵家の五女セシリア様。
男の従者である私がお嬢様の下着を洗うというのもおかしな話ですが、なにせお嬢様の従者は私1人だけ。
というのもお嬢様は離れの屋敷で1人生活してる為に、本邸に仕える従者がお嬢様の世話をする事がないのです。
離れに調理場がないので、唯一食事だけが本宅から提供されていますが、いわゆる使用人が食べる賄いの残り。
食べられるだけありがたいとしておきましょう。
お嬢様のお母上はブリガスタン家当主の2番目の妾で、お嬢様を産んだ後に亡くなりました。
五女とあって子爵様の愛情は薄く、今はただ幼き頃に婚約されたドットラン伯爵家に嫁ぐ日を待つだけの存在。
お嬢様は16歳なので、あと1年はこのような生活を続けなければなりません。
申し遅れましたが、私はベルクファスト。
11歳の時にこの家に買われた従者です。
私の出自は男爵家でしたが多大な借金で没落貴族に。
ブリガスタン家への借金のカタにってやつですね。
一応元貴族ですから、4歳になったお嬢様の教育係兼従者という立ち位置にピッタリだったのでしょう。
というのもお嬢様はブリガスタン家において、ぞんざいな扱いを受けておりました。
お母上はおらず、別腹の12人の御兄弟からは無視同然。
せめて子爵様の愛情があったらとは思いますが、正直お嬢様の顔立ちは比較的美形な他の御兄弟と比べるまでもなく、その、申し上げにくいのですが平凡といいますか。
赤毛の癖毛に吊り上がった細い目。
ふっくらとした下唇やそばかすは可愛いと思うのですよ。小さくもスラリとした体躯ですし。
私が可愛いと言ったところでどうしようもありませんが。
そんな環境でしたから、まともに話をするのは私1人。心根の優しかったお嬢様が、少しひねくれるのも無理はないでしょう。
最初は兄のように私を慕っていたお嬢様でしたが、それでは貴族としてままなりません。
熱心に従者と主人の関係を教え説き、学校に通い出す頃にはちゃんと私の立場を理解するようになりました。
学校に行き出せば友達もでき、お嬢様にも新しい居場所が出来ると思ったのですが、そううまく事は進みません。
お嬢様は貴族ですから上流階級が通う学校。
他の家の子と違い、質素でみすぼらしいドレスに、まだ当時13歳の子供の従者が1人。
一応子爵家の肩書きから露骨なイジメには合いませんでしたが、陰口を叩かれることはしばしばありました。
幸い私は幼い頃に剣術の手解きを受けていたので、ある程度お嬢様をお守りすることは出来ます。
貴族間で問題にならないレベルで、何度かは体を張らせて頂きました。
お嬢様が12歳になり新たな学校へと進むと、奇妙な命令を私に申し付けます。
お嬢様が学校に行っている間に、働いてお金を作れというのです。
理由を尋ねてもお嬢様は「命令が聞けないの!」と怒るばかりでした。
幸い私の仕事はお嬢様のお世話だけ。
多少は日中の洗濯、掃除がありますが、時間はあります。
子爵にバレると不味いですが、なにせお嬢様は好きなもの1つ買えない身。
私は早速ツテを使い家庭教師の仕事を始めました。
学校はお金がかかります。
授業料だけでなく身なりにもお金を使うからです。
学校には通えない多少裕福な家の子でも、剣術や勉強を習いたい子は大勢おり、私の仕事はすぐに埋まりました。
しかし不思議なことに、私が微々たるお金をお嬢様に渡しても使うことはありません。
買い物に行きましょうかと言っても首を横に振ります。
もしかしたら学校内でお金を巻き上げられているのかと心配になり、問い合わせます。
しかし学校からの返事は予想外の内容でした。
むしろお嬢様が自分より爵位の低い家の子をいじめていると言うのです。
お嬢様は悪役令嬢でした。
それとなくお嬢様に探りを入れ、行動を改めるように進言しましたが、逆に怒られてしまいます。
あくまで私は従者。それ以上は何もいえない立場なのです。
お嬢様はその悪名を持ったまま、新たな学校に入る歳になり今に至ります。
「ベルク、少し絞めすぎよ」
「お嬢様、貴族とはウエストがくびれる程に美しさを感じます。少々我慢してください」
私は両手を上げたお嬢様の後ろに立ち、コルセットのリボンを締め上げます。
元々幼女体型……いえ、スリムなお嬢様は締め上げたところでくびれは少なく、持ち上がるはずの胸も慎ましいものです。
まぁ、あの食事では十分な栄養は体に行き渡らないでしょう。
この日の為に本邸から支給された、白とピンクを基調としたドレスを纏ったお嬢様は嬉しそうです。
シンプルながらも赤い刺繍が施されたロングドレス。
手元は大きく開かれ、レースが編み込まれています。
「どう? 変じゃないかしら?」
「お似合いですよ」
お嬢様は微笑みながらクルリとターンします。
これほどの笑みを浮かべるお嬢様はいつ以来でしょうか。
本邸がドレスを用意したのには理由があります。
今日は婚約者であるドットラン伯爵家の次男、ダニエル様と初めてお会いする日なのです。
本邸から連絡があり、中庭に向かうと色とりどりの料理が用意されていました。
お嬢様も私も食べたこともない豪華な料理です。
子爵様がお嬢様に一言二言お声掛けされると、執事に案内されたダニエル様がやって来ました。
少々ずんぐりむっくりされた体型ですが、その顔つきには凛々しさが……あるようなないような。
おっと私とした事が、未来の仕えるべき旦那様に出過ぎた思いを。
子爵様と楽しく話されているのがドットラン伯爵様でしょう。
恰幅のよいお方です。
私がお嬢様の2歩後ろで控えていると、耳を疑う会話が聞こえてきます。
「ふーん、これが僕のお嫁さん? ブスとは言わないけど微妙だね。それにあの身体、本当に16歳なの?」
「ははっ、お坊ちゃんは中々に手厳しいですな」
「ダニエル、子さえ産めればよいではないか。それに他の女に飽きた時にあの小さな体は、よい気晴らしになるだろ?」
思わず拳を強く握っていました。
貴族にとって正妻とは家と家を繋ぐものでしかありません。
恋愛や欲求を満たすのは妾です。
分かっていてもいざそれがお嬢様に向けられると、これほどの怒りが湧くとは。
少し顔を青白くしたお嬢様は、精一杯の笑顔で頭を下げます。
ダニエル様はというと、お嬢様を無視するように他の御兄弟の所へと行ってしまいました。
1人残されたお嬢様の肩は震えていました。
何もして差し上げられない自分を、これほど恨んだこともありません。
ドットラン伯爵様とダニエル様が帰るときの言葉。
「ねぇ、パパ。あの子ハズレだよ。他の兄弟は美形なのに。今から変えれないの?」
「無理を言うなダニエル。我慢しろ。その代わりにお前の望む妾を3人は用意してやるから」
初めて殺意を覚えました。
悪役令嬢と呼ばれようと、お嬢様は私の大事な主人です。
それを……。
子爵様もお嬢様に「お前を今まで育てた恩に報いろよ」とだけ話して本邸へと入って行ってしまいました。
その日離れに戻ると、お嬢様が部屋に閉じこもってしまいます。
翌朝のお嬢様の目は腫れてました。
一晩中泣かれたのでしょう。
それでもお嬢様は自分の立場を鑑みて、受け入れようとしていました。
それから1ヶ月後の事です。
ダニエル様が本邸に乗り込んで来られたのです。
すぐに呼ばれたお嬢様のあとに続き本邸に向かうと、門前で声を荒げるダニエル様。
「どうなってるんだ! お前の娘は貴族学校で有名な悪女らしいじゃないか! 容姿はダメ、性格もダメとなれば結婚する僕はどうなる? 今すぐ婚約破棄だ!」
興奮して暴れに暴れたダニエル様がようやく落ち着いたのはドットラン伯爵家の執事が駆けつけて来てからです。
その場はなんとか収まり、ダニエル様はお嬢様を卑しい動物を見るような目で一瞥すると帰って行きました。
子爵様はドットラン家の執事と話をする為に本邸へと入って行きます。
私はお嬢様に「戻りましょう」と優しく声を掛けます。
お嬢様は不安げに頷き、やはり部屋に篭られました。
その日の夜、私の部屋にノック音が響きます。
扉の向こうにいたのは本邸の執事でした。
「子爵様がお呼びです。本邸まですぐに来るように」
お嬢様ではなく私ということに疑問を覚えましたが、すぐに本邸の子爵様の所へ。
「ベルク、セシリアの婚約はあっちが違約金を払うことで決着した。破談だ。すぐに他を探すが、学校には行かなくていい。せめてまともな性格になるように矯正しておけ」
それだけ話すと、さっさと出て行けと手を払う子爵様。
もはやお嬢様に直接話をするのも嫌だといった感じでしょうか。
しかし、他となると、せいぜいがどこかの大商人か豪農の後妻か妾。
子爵様は最後にせめて利になる相手を探すでしょう。
それがどれだけ歳のいった相手だろうと。
さすがにお伝えしない訳にはいかず、お嬢様の部屋をノックします。
「お嬢様、少しお話が」
返事がないので扉を開けると、お嬢様は部屋に置かれた粗末なベッドの上で背を向け足を抱え、顔を伏せていました。
「ベルク。私は眠たいのだけど」
顔をあげぬまま、虚勢を張るように声を出すお嬢様。
「先程、子爵様よりダニエル様との婚約は破棄されたと聞かされました。新たな相手が決まるまで離れで待てとの事です」
お嬢様は小さく「そう」と呟いた。
私が部屋から出ようとすると、お嬢様は顔を上げます。
「でも容姿もダメ、性格もダメな私を欲しがる相手なんているかしら? まっ、私の子供みたいな体つきが好きな変態爺いならいるかもね」
その卑下する言葉に、私は腹が立ちました。
振り返るとお嬢様の隣に腰を下ろし、頭に手を乗せます。
ずっと昔にそうしたように。
「婚約破棄、いいじゃないですか。あんな相手に嫁いでもお嬢様は幸せになれません。お嬢様の容姿が悪い? 目が曇ってるんですよ。多少細いですが整った目です。少し小さな鼻も、ぷっくりした唇も凄くいい。そばかすだって、その癖っ毛だってお嬢様の個性です。お嬢様の顔はちゃんと愛される顔です」
「……それって褒めてるの?」
お嬢様は小さくクスリと笑います。
「性格だってそうです。お嬢様はお優しい人です。私は知ってますよ、お嬢様の学校でのこと」
ピクリと体を震わせ、頭を伏せるお嬢様。
私はもう一度お嬢様の頭に手を乗せました。
「聞きました。私が働いたお金。学費を払えない子に渡していたそうですね。しかも外にバレないように厳重な口止めをして。いじめのことも調べました」
お嬢様の肩が震えています。
「もともとその子は他の上級階級の子息に虐められてたそうですね。お嬢様がいじめるふりをして被害が及ばないようにしたとか」
人は自分以上にいじめる姿を見れば、もうその子には手を出さない。やり過ぎた光景を目の当たりにすると、腰がひけてしまう。
「その子から聞きました。何度も何度もお嬢様に謝られたと。感謝してると」
もちろんお嬢様から口止めはされていました。
外にバレれば、またいじめられるかもしれないから。
私が従者ということで何とか聞き出せたのです。
お嬢様は嗚咽をあげて泣いてました。
主人と従者ですから抱きしめたりは出来ません。
ただ、ずっと頭を優しく撫でることだけは許して欲しいものです。
翌日から少し奇妙な事が起こりました。
本来食事は1人分より少し多い程度を本邸からもらいます。
お嬢様がまずは食べ、残った分を私が食べるのですが……いつもより残っている量が多いのです。
おかずが一品増えているとでもいいましょうか。
最初は心情的にあまり食べられないのかと思いましたが、昼も、夜も、翌日の朝も多いのです。
お嬢様の顔を見れば、むしろ憑物が落ちたように無邪気ですし。
着替えの時も、基本的には私がお召替えするのですが、顔を赤らめて自分ですると言い張ります。
散々お嬢様の裸は見てますし、下着も私が洗っているので今更という気もしますが。
お嬢様の愛くるしい姿を見ていると、私の中にある考えがグルグルとまわります。
いっそお嬢様を連れてここを出て行こうかと。
別にここを出たところで私は働けますし、お嬢様1人養うくらい何でもありません。
隣の国にでも行けば子爵様もわざわざ追っかけてこないでしょう。
やはりお嬢様には良い男性と幸せになって欲しいのです。
それを見届けるのが私の幸せに繋がるでしょう。
そうなると出来るだけ早く出ていくのが得策ですね。
相手が決まってしまうと子爵様もしつこそうですから。
私が最低限の旅費を作ろうと画策していると、その計画は無残に砕かれました。
「君がベルクファスト=イデオン君かね?」
お嬢様と一緒にいた私を訪ねて来たのは鎧を纏った衛兵。
「そうですがイデオンという名前はもう在りません」
「それは失礼した。少しブリガスタン子爵の館に来て頂きたい」
不安がるお嬢様に「大丈夫ですよ」と言い、衛兵について行こうとすると、袖を引っ張られます。
怯えるように私を見るお嬢様。
何故衛兵が私を呼ぶのかは分かりませんが、もし連行されればお嬢様は1人ぼっち。
最悪お嬢様を連れてそのまま逃げようかと思い、頷きました。
私の袖を離さないお嬢様と本邸に行くと、多数の衛兵を前に汗を垂れ流す子爵様。
その横には白いジレに黄褐色のジュストコールを纏った青年がいます。
その豪華な刺繍から察するに、かなり高貴なお方でしょう。
これはお嬢様を連れて逃げるのは無理そうです。
「やぁ、はじめましてベルクファスト=イデオン君。僕はミディアス。君に話があってね」
私が片膝をつくと、「いや、気楽にしてくれ」とミディアス様が言われます。
「いきなり突っ込んだ話で悪いが、君の叔父が危篤でね。困った事に跡継ぎがいないんだ。ほら12年前の君の家の没落でゴタゴタがあって、イデオン一族はかなりの方が亡くなったから。で、だ。君にイデオン男爵家を継いで貰いたい」
「申し訳ありません。少し理解が追いつきません」
「だろうね。聞くところによると、君はずっと従者をしてたんだろ? いきなり襲爵の話じゃビックリするよね」
ビックリといいますか、それは無理でしょ?
確かに11歳までは貴族の教育受けてましたが、そこで止まってますし。
「ミディアス様。恐れながらお尋ねしますが――」
「拒否権はないよ。だけど補佐できる人間はどうにか工面しよう」
私の質問より早く答えを言われてしまいました。
しかもフォロー付きです。
「分かりました。承ります」
どうやら一本道のルートだったようです。
逃げ場はありませんでした。
お嬢様の袖を握る手に力が入るのが分かります。
「うん。ありがとう。最悪どう説得しようか考えてたんだ。で、次は君に選択権がある話」
まだあるようです。
「まずは君に詫びよう。事件の解明に12年もかかってしまった。すまない」
頭を下げるミディアス様ですが、周りの衛兵達も戸惑っているので勘弁して下さい。
しかし12年前というと私がブリガスタン家に売られた事でしょうか?
「イデオン家の没落には陰謀があってね。そこのブリガスタン子爵や、まぁ、ドットラン伯爵、他の男爵家が画策していたんだ。君の両親は嵌められたってわけだ」
さすがに私もガバリと頭を上げました。
子爵様は這いつくばるように頭を下げて「許してくれ、許してくれ」と言葉を繰り返します。
「本来ならこちらでそれ相応の罰を与えるんだが、陛下は君の意思を反映させたいらしい。だから君の意見を聞きたい。もっとも完全に君の思い通りにはいかないかもしれないが、出来る限りのことは努力しよう」
ミディアス様はあえてどの程度の事が出来るかは言いませんでした。
私は自問自答します。
「では、関わった全ての家からイデオン家への謝罪を。そして当時イデオン家を陥れた借金の返却をして頂きたい。もちろん王国が肩代わりした分がありましたら差し引いて下さい。あとは……」
私はお嬢様をチラリと見ます。
なんかほんのり顔が赤いのですが。
「私が12年従者をした対価及び慰謝料として、セシリア=ブリガスタン様をブリガスタン家から絶縁し、イデオン家の養女として迎えたい。以上です」
「いいのかい? 君が望めばブリガスタン子爵家の取りつぶしも不可能ではないよ」
「私にとってセシリア=ブリガスタン様はそれ以上の対価かと」
ミディアス様は私を見て嬉しそうに頷きました。
「ブリガスタン子爵、異論はあるか?」
「ご、ございません」
「では正式な裁定は後日連絡するが、ベルクファスト=イデオンの意思を尊重するものとする」
ブリガスタン家の皆様がその場で平伏した時、立ち上がる人がいました。
お嬢様です。
「ミ、ミディアス様。わ、私にも選択権を頂きたいと思います」
ミディアス様がこちらを見るので頷きました。
「聞こう」
「わ、私はイデオン家への養女の件を拒否させて頂きたく思います。しかし、か、勝手ながら、つ、妻としてなら喜んで受けさせて頂きます」
何故か衛兵からどよめきが起こります。
視線はブリガスタン家の皆さんをほったらかしで私に釘付けです。
「だ、そうだベルクファスト君」
実に嬉しそうなミディアス様。
私は改めてお嬢様の前に片膝をつき、お嬢様の手を優しく取りました。
「ではお嬢様、私の妻としてイデオン家に来て頂けますか?」
「――――はい!」
くしゃくしゃの笑顔で私に抱きつくお嬢様。
周りの衛兵は歓声をあげています。
こうしてお嬢様は私の妻となるのでした。
早々に私とお嬢様は叔父であるイデオン男爵家に向かう事になったのですが、ミディアス様から「君達とは楽しくやれそうだ」と不思議な言葉を頂きました。
まぁ、まさかミディアス様がこの国の第3王子だなどと当時は知る由もなく、それを知ったのは、私が陛下から叙爵の儀を受けに王都に行った時だったのですが。
「ちょっとお嬢様。くっつき過ぎでは?」
私が執務室で慣れない仕事に手間取っていても、お嬢様が後ろから抱きつき離れません。
「あのねベルク。私はあなたの妻なのよ。お嬢様はおかしくない?」
「まぁ、そうですが、私にとって妻となってもお嬢様はお嬢様ですから」
優しく微笑むお嬢様。
お嬢様の幸せを見るのは、私の幸せだ。
お読み頂きありがとうございます。
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