美少女の選択
「あの、、でも、初めてで、此処で会っただけなのに、、。お話しても、、本当にいいんですか?」
「ええ、意外に知らない人の方が話しやすいかもしれないわよ。私は詩織、このカフェで物を書く仕事をしているの。」
「はじめまして、私は 涼夏と言います。高校2年生です。」
「とっても悲しそうにみえたので、、ちょっと気になっちゃって、、。無理にでなくて良いのよ。話せる事だけでも話してみて。」
「ありがとうございます。今、、進路の事で悩んでいて、、。」
「大学?」
「はい、私、音楽の道へ進みたいんです、フルート専門で!でも、、。」
「ご両親に反対されてるの?」
「いえ、あの、、音楽に進むのは賛成してくれてるんですけど、、家から通える地元の短大に行きなさいって、、。でもそこはちょっと、、。」
「それは涼夏ちゃんが女の子だから心配という事かしら?」
「はい、それが一番の理由だと思います。でもそれだけじゃなくて、、。」
彼女はそこで一旦言葉を切って、大きくため息をついた。
「私が行きたいところは、4年制の音楽大学で、それも東京にあるんです。そこに行くとなると、、入学金も授業料もかなり高くて、、家には弟もいますし、、無理なんだと思います、、。勿論家からは通えないから寮とか下宿になるし、、。練習があるのでアルバイトもなかなか出来ないから、、。」
「涼夏ちゃんは優しいのね。ご両親や弟さんの事をちゃんと考えてるもの。」経済的な理由であるなら、やはりそれは難しいだろう。詩織はそう思いながらも、
「短大では出来ない勉強もあるの?」
「専門の深さがやはり違います。でも、、仕方ないですね。」
「奨学金とかは?それも難しい?」
「あるにはあります。ただ、かなり大変で、、1パーセントに満たないので、、。」
「そうなんだ、、。」
詩織は話を聞く事で、彼女を余計辛くさせているのでは?と心配になった。
「涼夏ちゃんはどうしたいと思うの?」
「本当は、やっぱり東京に行きたいです。でも現実には、、無理かなと、、。」
「それで悲しくなっちゃったのね。」
「はい、、、。」少し笑って答える。
「経済的な事は確かに仕方が無いけれど、、でも、どうしても4年間勉強したいなら、、先ず、ご両親の薦める短大に行って、そこを卒業してから自分の力でまた希望の4年制音楽大学に入る事も出来るんじゃないかしら?」詩織がそう言うと、、
「あ、、そういう風にも、、考えられますね、、。そっか、、。」
彼女はまた考え始めた様だった。
『私が思っている様に簡単にはいかないわよね、、。』
ふと見ると、、話していた間に、彼女のココアはすっかり冷めてしまっていた。
それで詩織は新たにココアを2つ頼んだ。
「ごめんね、何もお役に立てなくて、、でも折角だし、暖かいココアを一緒に飲みましょう~!」
そう言って彼女に笑いかけると、、
「あ、いえ、、そんな、、。すみません、いえ、ありがとうございます。あの、ココアの事もですけど、大学の話、、聞いて頂いて、、少しすっきりした気がします。泣いていても何も変わらないですよね?また、良く両親と話してみます。そしてちゃんと自分で決めて、それで納得してから進みます。」そう話す彼女の顔には、既に素敵な笑顔が宿っていた。
その後ふたりで他愛のない話を楽しんで、ゆっくりとココアを味わった。そして彼女は深くお辞儀をすると「カフェshion」を出ていった。
『きっとどんな選択をしても、彼女ならきっと大丈夫だろう。』っと詩織はそう思った。そしてこれからの彼女の道が明るい物であります様に、と心から祈らずにはいられなかった。