7話 すまん、出来心や。
ついに日常の7日目です。
7日もあればセミは結婚し童貞を捨て次の世代に託します。
対して僕は20年生きて未だに童貞。
セミ以下なのでしょう。きっと。
あれからスクロール欄をめくりながら、どんなスキルを使おうか悩んでいた。
“ポンコツ”のようなスキルもままあったが、果てしなくくだらない為に使わないことにする。というか誰がこんなスキルに需要を見出し、作り上げたのか。同じ種族として恥ずかしい。
「まぁ、リッカに毎日買い出しに行かせるのも申し訳ないし、少なくとも自給自足できるくらいに、設備整えてみるか」
「そんな、私のために何かするより、アルト様にとってためになることをする方が......」
「リッカが快適に過ごせる事が俺のためになるんだ、それなら文句ないだろ?」
「お心遣いありがとうございます。今日のご飯、張り切っちゃいますねっ」
「ああ、ありがとう」
俺は生産カテゴリにあるスキルを覗く。
パラパラとめくると”開墾”と書かれたスキルがあった。
「丁度いいな......だがこの山はレベットのおっさんのだ、黙って使っちゃまた怒鳴られちまう」
「なに、またあのクソジジイに会いに行くのか!?」
「あぁそうだ、土地使っていいか聞いてくる。お前はそこにいろ、面倒を起こしたくない」
「言われても付いていかないし!誰が好き好んでクソジジイと会うか!」
「はいはいわぁったよ、じゃあ留守番と世話頼むぞ、”リッカ”」
「ちょっと!!私は!?」
「お気をつけてっ」
ひらひらと手を振るリッカと、挑発するように舌を出して見送るミレアを後に、アルトは山を下っていった。
コンコンッ
「開いておるぞ」
「邪魔するぞ」
「やっぱ閉めろ」
「もう入った」
「はぁ......」
俺を見るや否や、レベットはまた面倒ごとを......と言わんばかりのため息を吐く。
「なぁレベット、土地を借りていいか?」
「はぁ?何に使うんじゃ?」
「家庭菜園って奴だ、開墾して自給自足したい」
「それは構わん、土地なんか腐るほどあるしの。じゃがお前らに野菜を育てる事が出来るとは思えん」
「どんだけバカだと思ってるんだ?種まいて水まきゃ自然とできるだろ」
「ほらな」
「はぁ?」
レベットはまた大きなため息を吐きつつ、色々と説明してくれた。土を耕す必要がある事、栄養の取り合いをしないよう少しずつ離して栽培すること、土に沢山栄養を含ませるために工夫する事を教えてもらった。
「それにお前、虫けらに野菜食われる悲痛さも知らんじゃろ」
「んな事しやがったら絶滅させる」
「もう向いてないぞ?家庭菜園。シンプルに諦めて買え」
「まぁその辺は他に使えそうなスキルで何とかしてみるよ、とにかくおっさんには土地を借りること以外迷惑はかけねぇよ」
「お前はいいんじゃがあのゴスロリババァがのぉ......」
「ところでおっさん、まだあの仕事続けてるのか?」
「当たり前じゃろ。それが生き甲斐でもある」
「......あんま首突っ込んでるとヤベェぞ?」
「んな事は知っておる。じゃが奴らは......」
「......まぁいいや、とりあえず忠告はした。助力が必要なら声かけろ、あんたの頼みなら動く。土地のことサンキューな」
「あぁ、これ以上厄介ごとを増やすんじゃないぞ」
「ミレアに伝えとく」
土地を借りる許可を得た俺はそのまま家に戻った。
今日は少し長めに○
レベットはある危険な多能さをしているのです。ジジィなら休めよ、隠居しとけ。