ただいま、お姫様
血に染った大地に身を沈ませ、雲一つない蒼天を仰ぐ。
目を瞑れば気持ちの良い風が暑くなった身体を冷ましていく感覚が身体中を伝う。
持ち主のいない武器や数多の死体、血臭が漂う戦場がこの戦争の悲惨さを物語り少しずつ高ぶっていた気持ちも治まりつつあった。
敵はまだ生きているのであろうか?
もはや右腕しか動かせない身体と剣や銃が無い状態では身を守る術がない。
俺はこの戦場で死ぬだろう。
悔いはないが、仲間や任務が無事成功したか気になる。
隊長は俺が勝手に死んだことを怒るだろうか。俺も戻りたかったが無理だ。みんな、無事に王都に帰還していることを祈る。
もし来世でも人として生まれ変わることが可能なら、陰ながら見守りたいものだ。
しかし、普通の生活というものも味わってみたい気もする。何せ平穏と正反対の人生を歩んできたのだ。次の人生くらい普通に過ごしたい...いや、俺のことだから落ち着かないな。
さて…。
「さようなら」