第5話 僕の家族(シュウ目線)
長男シュウ君の独白です。
読みやすくする為今回はカタカタ表記ではなく、通常の小説スタイルです。
よろしくお願いします。
突然ですが、僕の家族を紹介します。
お昼になっても一向に起きる気配がなく、布団の中で丸くなっているのが僕の唯一の家族母様です。優しくて温かくていつも僕の事を「いい子いい子」と言いながら撫でてくれる大好きで自慢の母です。
でも、母様は僕の本当の母じゃない。
本当の両親は僕を触ることもなく、優しい言葉をかけてくれる事もなく見捨てた。
胎内にいた時、しきりに両親は「貴方に早く会いたいわ」「すでに高い魔力を感じる。将来が楽しみだ」と言ってくれていたから、外の世界は希望に溢れていると思っていた。それがいざ出てみれば母は「気持ち悪い!!」と泣き叫び、父は「我が家の汚点だ!!」と言って襲ってきた。
どうして?どうして?
あんなに好きだと言ってくれていたのに・・・
何も分からないまま暗い広大な森に捨てられ、ここまでずっと一人できた。
孤独に耐えられなくて、たまに来る人間に話しかけてみたりもしたけど、皆逃げるか攻撃しかしてこなかった。
一度、怪我をした人間に近づいたことがある。
僕なら怪我を治せるし、逃げられないなら話くらい聞いてもらえるんじゃないかってとても期待して体内精製ポーションを差し出した。
人間は憎悪のこもった顔を向けて、持っていた爆弾でその場で自害した。僕は防御バリアで無傷だったけど、跡形もなく消し飛んだその場所をみてやっと僕は悟ったのだ。一生この森で一人だと。受け入れてくれる者等いやしないという事を。
父から王位継承した実兄は、自分より魔力の高い弟の存在を恐れ何度も刺客を送ってきたし。何もしていないのに勝手に害悪な存在だと認定されてしまって、僕を討伐しにくる人間軍も定期的に来た。僕を嫌う人はたくさんいる。開き直って、そういう相手を叩きのめしていたらここ100年程はどちらの種族も僕を恐れて足を踏み入れなくなってしまったので、より孤独感が増しただけだった。
そんな時に出会ったのが、異世界から来たという母様だ。
今までの事から人間に対して良い思い出はなかったので、警戒していたが最初から母様は逃げないし(腰を抜かして失神しただけ)攻撃もしてこなかった(攻撃する術をもっていないだけ)上に話しかけてくれた!!(ただの命乞い)
ずっと一緒にいると言ってくれた。家族になると言ってくれた。
触っても怒られないし、撫でてもくれる優しい母様。
僕の為にご飯も作ってくれたし、お風呂も寝る時も一緒。寝る時や座る時、僕を抱き締めて「最高の触り心地。一生手放せない」と褒めてくれる。
そして何より僕に名前をくれた。
母様は僕に初めてをたくさんくれる。
陽が届かないこの暗い森の中で、母は光だ。
僕の下に遣わせくれた神に初めて感謝した。そんな母は非力だ。森の探索は慣れていないのか歩く事も大変なようで、すぐに疲れてしまう。一度魔獣に遭遇した時は悲鳴を挙げて足がもつれて転倒した上に、頭をぶつけて失神していた。その後僕が仕留めた魔獣を見て再度失神していた。復活した後は「こんなでかいのを仕留めるなんてすげぇ!天才か!!しばらく食糧には困らないな!」と、僕にしたら大したことのないレベルだったのに母様は褒めてくれた。
この幸せを知った今、昔の孤独には戻れない。
この空間を邪魔されたくない。ずっと続けばいいのにと思いながらも、突然この世界に現れた母様が突然消えないとも限らない。その可能性を考えると恐怖に身が震え、今だ眠りこける母様に抱き着く。
「うぅ~~~んんんん・・・朝??おはよー・・・」
「ヒルダヨ!オキテ!」
昼まで寝てるのに、さらに眠ろうとしている母様を揺り起こす。母様はゆっくり起きながら僕の頭を撫で「おはよう」と笑顔を向けてくれた。
あぁ、やっぱりこの優しい手の温もりを手放すなんて考えられない。
不安と幸せを感じながら、シュウは抱きしめる触手の力を強めるのだった。
書いているうちに、徐々にヤンデレ風味になってしまいました・・・
なぜだ
シュウ君は、ただのマザコンです。拗らせてるけどただのマザコンです。
あれ?それってやっぱりヤンデレ・・・?