第1話 引っ越し先が異世界なんて聞いてない
小説初投稿です。よろしくお願いします。
コメディ要素をいれて楽しい小説になれるよう頑張ります。
田舎の祖母が亡くなった。布団の中で静かに眠りながらの穏やかな最期だったらしい。
田舎で一人暮らしだった祖母は、自分の最期が分かっていたのか、残された遺品・遺産の振り分けも墓守の指名も全て遺言書に記されていた。そしてなぜか、祖母が住んでいた田舎の大きな一軒家は俺が相続するように書かれていた。
『あんな田舎じゃ、売れんしもらってくれたほうがばあちゃんも喜ぶわ』
親戚一同にそう言われて俺、真下亘は先日、祖母より引き継いだ田舎の家にやってきた。この春大学卒業し、パチンコ店に就職したが、昼夜逆転生活と過重労働に耐えきれずわずか半年で辞めてしまいフリーターとしてダラダラとした日々を過ごしていた。そこに突然やってきた『家を管理しながらの田舎生活』は、自分を見つめなおす良いチャンスだとポジティブに捉えている。
決して親から『これを機に一度家を出なさい』と追いたてられたからじゃない。ここから真下亘の伝説が始まるんだ。
が、もう10年は来ていない田舎は昔の記憶以上に過疎っていた。すでに後悔している。
来る途中に見た商店街はシャッター街になっていたし、放棄された畑は草が延び放題になっている。もう、帰りたい。
祖母宅を前にして思ったのは、
『やばい。勢いで来すぎたぞこれは』
だった。
母屋の他に納屋が2つ、さらにビニールハウスが2つ。その他よく分からん倉庫が2つ。とにかく古いが広い。田舎の農家すげー。
え?ここに一人で?コンビニどころかご近所さんすらないじゃん。え?俺一人でここ住むの?
…そもそも、なぜ祖母は俺に家を任せたんだろう…
それは、遺言書に書かれた時からずっと考えていた疑問だった。祖母には3年前に従兄弟の結婚式で会ったきりだった。その時には家の事など微塵も話さなかった。そこから祖母が亡くなるまで交流もなかったが、そもそもが九州に住む祖母と愛知に住む俺とではなかなか会う機会もないのだが。
「考えてもしょうがないよな。とりあえず…荷物整理するか…」
事前に送っといた荷物整理の他に、元々ある祖母の物の把握と整理を考えると憂鬱になるが、これからを快適に過ごすには必要不可欠。疑問迷宮に入り込む前に、思考を無理矢理別方向にむけて体を動かす為に門を潜った。
その瞬間、どこからか聞こえるシャンシャンシャンという鈴の音と共に頭上を覆うほどの巨大な魔法陣。
魔法陣からの強烈な風圧と光の輝きに、目を開けるどころか立ってもいられなくなりその場に踞る。
どれくらいそうしていただろう
気づけばとっくに鈴の音も止み、風も感じない。そこでようやく亘は起き上がり周りを見渡した。
周りを見渡しても木しか見えない。その木も樹齢何年?ってくらいでかい。でかすぎる。そもそも比率がおかしい。母屋の奥に見えている木の幹が母屋の5倍ある。屋久島でもこんなでかいのさすがにないだろ。
見上げた先に空は見えない。木同様、育ちすぎた葉が日光を遮り視界は暗くて先に何があるのか分からない。
亘は絶望し、そして悟った。
ここは間違いなく、日本ではない。と。