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犬との戦闘

 仮眠を取ったのが裏目に出てしまった。


 そう気が付いたのはアッシュが睡眠が取ってしばらく過ぎたころ特殊な音が前後左右から感じ取った時である。


 無論、それはアッシュの非常に発達した聴覚によってはじめてとらえられるものであったが。


 次にアッシュは傍で寝息を立てているエリフィーレに気が付く。


 彼女が見張りをしていたはずだ。


 そう思いつつも脳裏に押しやる。


 そんなことしても状況は良くならないからである。


「おい、起きろ」


 アッシュはエリフィーレの頬をはたいて目を覚まさせる。


「痛っ。何?ああ、眠っちゃって」


「囲まれてる」


「えっ」


「4匹ほどの何かに囲まれてる」


 アッシュは早々に荷物をまとめながら言う。


「どうするの?」


 寝起き特有の鈍い思考のため余裕のないアッシュは彼女の何げない言葉にイラつく。


「逃げる。4匹なんて相手してられるか」


 そう言ってエリフィーレの手を取り、足跡がつづいている方向走り出す。


 しかし4匹は二人のスピードに合わせ同方向に走り、2人を中心と見立てたときの円状に囲む状態を維持して、逃げ切れるように思えなかった。


 しばらく走っていると対角に並んだ2匹がかけて2人に襲い掛かる。


 暗闇で、音もなく近寄る存在はとても恐ろしいのである。


「しゃがめ!」


 アッシュはエリフィーレの肩を抱きながらしゃがみ、その二匹を頭上でやり過ごす。


 首を上に傾け見たのは犬のような生き物であった。


 襲い掛かった2匹はそのままかけて元の囲んだ状況を維持する。


「逃げれそう?」


 エリフィーレがアッシュに尋ねる。


 見張りをやってたのはお前だろと言ってやりたい気持ちを抑え、「無理だろうな」と呟く。


「どうするの?」


「お前も考えろって前俺に言っただろ。それをそっくりそのままお返ししたい」


 少し辛辣になっても許されるよな。


 自分で自分に言い訳してしまった。


「そうね、ごめんなさい」


「探してもいなかったのに、なんで突然襲ってきたんだ?」


 アッシュは、考えを巡らせ思いついた疑問を彼女に投げかけ、解決策の糸口を探る。


 聡明な彼女が最も協力できる分野であるからである。


「血の匂いじゃない?」


「血……か」


「倒せそう?」


「出来なくはないだろうけど……ケガをしかねんな」


「魔法を使えないのか?」


「時間がかかるわ。短時間でできるのは火をつけるとか光を放つとかそのレベルよ。あなたが想像してるような魔法はできないわ」


「そうか」


 アッシュは一匹の犬の方向に石を投げるが見事にかわされる。


「クソッ」


 犬は同様に2人に襲いかかる。


 その際避けるためエリフィーレを突き放したために、2人は分断される。


 そこへ好機とばかりにエリフィーレにまた2匹が群がる。


 アッシュは駆け寄り、一匹の横っ腹をうまく蹴り上げることに成功するが、もう一匹がエリフィーレに噛み付いたように見えた。


 アッシュは自分の心拍数が跳ね上がったのを感じた。


 アッシュはしかし思考は冷静にもう一匹も殴って撃退する。


「大丈夫か!」


 アッシュは叫ぶ。


「ええ」


 エリフィーレから聞こえたのは想像と反対のものであった。


「そうか。よかった」


 アッシュは安堵する。


「でも」


「どうした?」


「せっかくの食料が……」


 彼女のほうを見ると頭から噛みちぎられたモグラがあった。


 そのさまを見ると確実に噛まれたら致命傷になるだろう。


「お前が無事ならいい。そんなことよりなんか思いつかないか?」


「ひとつだけ」


 エリフィーレはなるべくアッシュに引っ付きながら頭と口を動かす。


「教えてくれ」


「あいつらはこの暗闇で貴方と同じように周囲を認識できる。つまり貴方と同じように周囲を把握してると思うの」


「ああ、それで」


 それについては間違いないだろうな。


「貴方が周囲を認識できなくなるのはどんな時?」


 アッシュは少し考え答える。


「大きな音を出された時だな。だがその場合俺も周囲を見渡せなくなるぞ」


「音と光を同時に出すわ、そうすれば貴方は見えるでしょ」


「ああ、確かにそれなら大丈夫だ。それを俺の合図でやってくれ」


「任せるわよ」


 アッシュはすぐに投げれるよう石を用意する。


「今だ!」


 アッシュの合図でまばゆい光と、大音響が響く。


 犬はひるみ周囲の状況を知ることができないが、アッシュは光によってしっかりそれらをとらえた。


 アッシュはまずひるんだ一匹の頭部を石で正確に射抜き、その後転じて、もう一方を同様にしとめる。


 その隙を見て一匹がアッシュにとびかかるがそれを首根っこを掴み地面に叩きつけ、右足で思いっきり首を叩き折る。


 もう一匹は逃げだした。


 二人は追わず、しかし警戒は解かずしばらく周囲を警戒した。


「やったわ!」


 エリフィーレは手をあげて喜ぶ。


「ああ、そうだな」


 アッシュはこぶしをエリフィーレに向ける。


「何、これ?」


「ああ?こぶしとこぶしをぶつけ合うんだよ。お互いに喜びを分かち合うためにな」


 アッシュは微笑んで言う。


「へぇ、そんなものがあるのね」


 エリフィーレはそのこぶしに向かってこぶしを合わせた。


「さて、でも俺は言いたいことがある。見張りはお前の役割だったはずだよな」


 アッシュは勝利を喜んだが、しっかり引き締めるべきところは引き締めなければと意気込み真剣な顔で言った。


「あ、ええ。ごめんなさい」


 エリフィーレはばつが悪そうに顔をしかめる。


「まぁ、疲れているのは分かるからこれ以上言わないが今度はするなよ。皮膚をつねってでも起きてろよ。頼むからさ」


「ごめんなさい」


 アッシュは悪態をつきながら、先ほど助けてもらったことを思い出す。


 が、今更謝っても恰好がが悪い。


 こんな時レントならどうするかな。


「なぁ」


「なに?」


「豚」


 アッシュは自らの鼻を上にあげて面白い顔をしてみた。


 昔、幼少期のレントが爆笑必須のギャグだと教えてくれたものである。


「えっと、どう反応していいか分からないわ」


 エリフィーレは困惑しているようである。


 やはりキャラじゃないことをすべきではないな。


 アッシュはごまかすように、取ってつけたように言葉を発する。


「まぁ、でも食料が増えたんだから喜ばしいことじゃないか。結果的には良かったな」


「ええっと、ごめんなさい。なんといっていいか分からないわ」


 エリフィーレはさらに落ち込んだように見える。


 アッシュは失敗したと心の中で思った。


「喜んでおけばいいだろ。別に遺恨を残すつもりはないし」


「ばんざーい」


 エリフィーレは両手を挙げて喜びを表現するが顔は笑っているように思えない。


「……いや……うん。俺のほうこそごめん。さっき助けてもらった俺が言えることじゃないことに気が付いて、その。お前にあたる権利は俺にないな。ごめん」


 アッシュは自分のメンツを心配するほうがよっぽどかっこ悪いだろと自らを正当化しながら謝った。


「えっ。謝ってほしいわけじゃなくて。その自分の失敗したことが悔しいだけだから」


 エリフィーレは変顔以上に困惑しながら手を振って言う。


「そうなのか?」


「ええ、そうよ。……フフッ。それじゃぁ。お互い様ということで」


 エリフィーレは笑う。


「ああ、そうしてくれると俺も助かるよ」


 二人は、荷物を持って牢屋に戻った。

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