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汚物男

 しばらく高笑いを続けた茶色い人型は突然倒れこむとゆっくりのそのそとした動きで座り込んだ。


「何なの、いったい」


 あまりの混沌っぷりにマリアが頭を抱える。


「どーも↓初めまして↓」


 今度は低い声で話し始める。


「何者だ、お前」


「あー↓。囚人番号213番↓。服役2043年目のカイトでーす↓」


「囚人?というか服役2043年ってあり得ないだろ」


「フフフ↓その通り普通はあり得ない↓でもぉ→俺は新人類だからあり得るのさぁあ!↑」


「はぁ、新人類って何かしら」


 マリアはめんどくさそうに訪ねる。


「よく聞いてくれた↑俺は不老と悪食を得た進化した人類なのさ↑」


「……ねぇ、ちょっと待って。あなた今不老といったわよね。ならもしかして不死についても分かるのかしら」


 マリアは突然眼光鋭く、カイトを睨みつけた。


「え↓、いや知らないです↓」


 その豹変ぶりにカイトは焦りの色を見せる。


「おい、こいつが言ってることは与太話だろ、本気にするなよ」


 アッシュはマリアをなだめる。


「そんなことは無いわ、だって……」


「だって、なんだよ」


 マリアはアッシュを一瞥するとため息を漏らしながら語り始める。


「……そうね。もう上には登れないでしょうから教えてあげるわ」


 マリアは一呼吸開け、また話し始める。


「彼の言っていることに準ずる人達がいるわ。いま私たちが住んでいるグレン王国と敵対していて、今度戦争をすることになったローナ帝国軍の要となる軍隊。不死隊と言われる軍隊。名前の通り死なない兵士で構成された軍隊よ」


「そんな馬鹿な」


 アッシュは茶化すように肩をすくめる。


「事実よ」


 しかしマリアは力強く断言する。


「でもそれが本当ならもっと噂になっていてもいいじゃないか」


「いいえ、国民が知って、統制が利かなくなるのを恐れて、国民には知らされないように箝口令が敷かれているから、噂になんてならないわ」


「じゃぁ、なんでお前はそれを知ってるんだよ」


「それは。私がこの国の現国王の9番目の娘カンダ・エリフィーレだからよ」


「嘘だ。王女がこんなことするわけない。王女が出歩いていたら国の大事件じゃないか」


「気づかないようにしてきたし、父はいまそんなことを気にしている暇なんてないわ。私がいないことぐらいで騒ぎを起こせばローナ帝国に背をさらすことになる。だから今国では事件なんて起こってないの」


 マリア改めエリフィーレは真剣な表情で言った。


 エリフィーレの話は全く受け入れられるものではなかったが、彼女の淡々とした言葉が真実味を演出させた。


「だからカイトさんあなたの言い分は信じられる。だから情報をください」


 エリフィーレは丁寧な口調でカイトに話しかける。


「いや、本当に知らないのだが?↓そもそも俺は被験者の囚人であって、実験者じゃないんだ↓」


「実験者?どういうこと」


「俺は単に収監され体をいじられただけだ↓あんたの疑問に答えられるのは研究者だけだ↓」


「ねぇ、ほかにもこのような施設はあるのかしら」


「知らない↓だが、あってもおかしくはないだろうな↓」


「そう、ありがとう」


 そう言って、エリフィーレはアッシュのほうを向く。


「ありがとうアッシュ。あなたのおかげで遺跡が見つかったわ。私だけだったらこの穴に入るなんて発想できなかったし。ただもっとスマートなやり方で見つけてほしかったわね」


「えーっと、おう。いや。ありがたき幸せです」


 アッシュは彼女が本当のことを言っているのか分からなかった。


 彼女の普段の姿を見て、王女なんて思えないからだ。


「そんなかしこまる必要はないわよ。フフフ」


「なにが面白いんでしょうか?」


「いえ、その話し方だと疎外感があって寂しいわ。今までみたいに話してよ。でも動いてみるものね、ただこの国が亡びるまで、そして私が死ぬまでの暇つぶしのつもりだったのに。本当に見つかるなんて。奇跡ってあるものなのね。願わくばもっと準備してきたかったけど」


 エリフィーレは満面の笑みで笑った。


「お前がいいならそうするけど」


 アッシュはポリポリと頭をかく。


「おい!俺の前でいきなりイチャイチャするんじゃねぇ↑衝撃の真実の話は終わったか!↑そんなことより大事なことがあるんだ!↑」


 カイトが自分の身の上話をさえぎられて。若干怒っているようであった。


「なんだよ」


 アッシュは自分の中の常識が壊れていくのにつかれ生返事をする。


「今自分たちがこの世で一番不幸とか言いやがっただろ!↑」


「ええ、言ったわ」


「じゃぁ、一つ話をしよう→俺の話さ↓」


「264年うんこを食べて生きてきた↓俺はそう改造されていたからだ↓でも改造されたのはおなかだ↑舌は改造されていなかった↑分かるか意味が↑」


「えーっと、大変でしたね」


 マリアはめんどくさそうに返答をした。


 その言葉を聞きカイトは声のボリュームを上げていく。


「フフフ↑そんな言葉に表せられるんのじゃ無い↑あの臭い↑あの生暖かさ↑そして味↑それが分かるわけがないんだ↓それ何の分かった口を聞くな!↑」


「すいません」


「まぁいい↓でもそれはむしろここ2000年間で幸福な時間であった↓なんせうんこの味でこれはパンからできたうんこ↓これは肉↓これは魚↓と遊べたんだから↓うんこの中を泳ぎ回ることだってできた↓」


「えーっと、そのすごい気持ち悪い、やめてくれ」


 アッシュの言葉を無視してカイトは続ける。


「本当の地獄はその前、1778年間ずーっとずーっとずーっと!↑動かないようにしていた時だ↓死なないためにずーと停止し続ける。誰とも話さず、何も考えず↓それがどれだけつらいか解るか!↑」


「分かりません」


「そうだろう!↑それなのによう!↑ちょっとうんこに浸かっただけのカップルが世界で一番不幸だと!↑ぬかしやがってよぉ!↑」


 そう言ってカイトはアッシュに襲い掛かる。


 まだしっかりと自分の中で話を整理できていないのに襲われたアッシュはまるでその鬱憤をぶつけるようにその泥に手を突っ込み中身を直接強打する。


「あぁぁぁぁぁぁ!」


 カイトはすぐに倒された。


「うんこしか食ってないのに強いわけないじゃん!↑手加減してよ!↑カップルがにくぃんだよぉぉぉ!↑〇×▽△◇〇〇◇!――――」


 カイトは意味不明な言葉を大声で叫び続け、しばらく阿鼻叫喚が続いた。




 カイトが疲れて、を取り戻すとカイトは自身についた汚物のベールを脱いだ。


 そこから現れたのはまるで骸骨のようにやせこけた男であった。


「ねぇ。あなたは長いことこの場所にいるんでしょう」


 エリフィーレはカイトに尋ねる。


「まぁね↓」


 強打された腰をさすりながらカイトは返答する。


「ここの出口を知らないかしら」


「知ってたらもう出てると思うんですけど↓」


「まぁ、そうね」


 エリフィーレは苦笑する。


「なぁ、普通にあの穴から助けを呼べばいいんじゃないか?」


 アッシュは素直に思ったことを聞いてみる。


「無理だ↓ちょっと考えればわからんか?↓俺がうんこを食べるだけしかしてこなかったわけないだろう↓当然助けを呼んだりもしたさ↓、でも264年間ここにいるってことは?↓」


「無理だったてことか」


「うむ↓」


 エリフィーレは座り込みこめかみに指をあてる。


「せっかく希望が見えたのに、それを上に伝える手段がないなんてね」


「なぁ、どうしようか」


 アッシュがそうマリアに訪ねるとマリアはアッシュの頭をはたきながら「あんたも考えなさいよ!」と怒られる。


「えーと、じゃぁ。この鉄格子の向こう側に行くしか思いつかないけど……。ああでもこの鉄格子を外すことができないのか」


「いや、できないこともないぞ↓僕が昔、鉄格子のそばの壁を削って隙間を作ったことがある↓問題はその奥にある↓」


「問題?説明をお願いできるかしら」


「ああ、構わないぞ↓その奥には醜い見た目の謎の生物が闊歩してるんだ↓あと洞窟の中なのだから光を出す方法が必要で、太古の昔にあった設備は壊れている↓だから魔法使う必要があるが当然使えばその分消耗してしまうわけだ↓そのせいでうろつきまわるだけも一苦労↓そこで水や食料を手に入れるためにはその生物を狩る必要があるが無理だ↓そうなると魔法で消費し続けいずれ死ぬ↓だから僕はずっとここにいる↓」


「ふーん」


 エリフィーレはにやりと笑う。


「なぁ、暗いだけなら俺が……」


 アッシュが口を開こうとするのをエリフィーレが遮る。


「ねぇ、絶対に無理かしら」


「ああ、無理だね↓」


「なら、私たちが何か食料を狩ってこれば仲間になってくれるかしら?」


「もしできればな!↑」


 カイトはまるで二人を信用してないようである。


「今の言葉忘れないでね」


「なんでこんな奴仲間にしようとするんだ」


 アッシュはエリフィーレに耳打ちする。


「彼は魔法が使えると言ったわ。魔法を使える人材は希少なのだから多少性格に難があっても仲間に入れたいのよ」


 マリアもアッシュに耳打ちする。


「なんだ!↑内緒話か!↑どうせ俺の悪口言ってるんだろう↑」


 難があるってレベルじゃないだろうとアッシュは思った。


 うるさいカイトを無視してエリフィーレはアッシュを連れて鉄格子を越える。


「本当に行くのか?」


 カイトは鉄格子を握って言う。


 その言葉に「当り前でしょう」と答え、エリフィーレ達は歩き出した。

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