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知的生命体観察実験結果報告会

作者: 九里 睦

 音響施設が整えられた部屋には、老若男女問わず、様々な容姿の者たちがいた。ただ、彼らの服装は、まるで古代ギリシャのように、布をただ巻きつけたかのようなもので統一されている。


 そしてその中の、一番髭を蓄えた男が、会場の席が全て埋まったことを確認すると、席を立ち、壇上に着いた。


「あー。あー」


 彼が簡単にマイクテストを行うと、それまで騒ついていた会場から話し声が消えた。皆注目しているのだ。


「うゔん。えー、それではこれから、バビタブルゾーンにある惑星についての報告を行いたいと思います。

 えー、まずはじめに、今回の実験の概要を簡単に言うと、『生物が存在することのできる惑星に起こる文明は、恒星の色に左右されるか』というものでした。


 えー。長々と話をしても意味が無いので、まず実験の結果から。実験の結果は、『左右される』ということでした」


 男は反応を伺うかのように、一度会場を見渡した。

 席に着く者たちは、早く続けろ、といわんばかりに顔を顰める。


「ええ、わかっております。どのように影響されるかというと……。

 まずは青色超巨星である、『リゲル』の例からいきましょう。えー、『リゲル』では、バビタブルゾーンに位置する惑星に、文明が出来はしたのですが、星の住民たちが生活に不都合の無いところまで文明を発達させたところで、成長が止まりました。


 次に、白色矮星である『シリウス』です。『シリウス』のバビタブルゾーンでは、高度な文明が築かれました。便利な生活を手に入れるために文明を進め続ける住民たちが、便利な生活の、さらにその先にある幸せを目指して日夜協力を惜しまなかったからです。ちなみに現在も発展を続けております。


 次は、黄色巨星の『カペラ』。えー、『カペラ』は残念ながら、実験の間に色を変えてしまいましたが、文明の変化の傾向としては、ごく稀に戦争が起きることはありましたが、かなり遅いペースで発展していくというものでした。


 次の橙は飛ばして……赤色巨星の『ペテルギウス』は、戦争があまりにも頻繁に行われたため、文明は築かれませんでした。


 最後に、橙色の恒星、『サン』の報告を。えー、この星のバビタブルゾーンに入っている惑星は一つしかなかったわけですがその星が大変な成長を見せました。彼らは定期的に戦争を繰り返していたのですが、あまりにも破壊的な兵器を完成させてしまったため、恐怖による均衡が生まれ、ここ最近は戦争のない星となっています。それにより、文明はさらに進み……彼らは私どもの観察にまで、気付きました」


 そこまで彼が喋り終えたところで、会場の一人が静かに手を挙げた。


「はい、ガイアさん。何か質問が?」


「その最後の惑星は危険ではないのでしょうか?」


 壇上の男は落ち着いた態度を崩さずそれに応える。


「はい、確かにこのままですと危険です。彼らは、私どもが観察しているのに気付いた時点で、嬉々として戦争をする準備を進めていましたので。恐らく、暫く何も起こらなかったことにより、戦争に飢えているのでしょう」


「戦争ですって!? 冗談じゃないわよ!!」


 戦争という言葉に反応し、野次が飛んだ。


「落ち着いてください。アテナさん。実験を行う前の仮説を立てた時点で、このことは予想できていました。ですので、『サン』の核には、ボタン一つで大きさを二百倍まで膨らませる装置が挿入されています。その装置を起動させれば、『サン』のバビタブルゾーンにある惑星を排除できるようになってますので。あ、ボタンはこれです」


 男は、真ん中に、赤く丸い突起が付いた箱を掲げた。


「ゼウスさん! それは早く押したほうがいいだろう!」


「そうですねシヴァさん。では」


 彼は、ボタンを押した。



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