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私の存在証明

作者: 虚月



 私は一体誰なんでしょう。



 名前は思い出せます。もちろん。私が行っている学校も、友だち……と言えると思う人も。家族も、私の思い出も。全部全部。私のものです。


 でも、今の私は一体誰なのでしょう。何なのでしょう。


 周りの人に合わせているだけで、全く中身がない、空っぽなんです。


 全てに流されて、私はその中で、言われるままに、流されるままに、ただ、いるだけなんです。


 周りの人はみんな、『自分』を持ってます。


 何があっても、変わりません。自分を貫き通します。こんなこと、考えたこともないでしょう。


 そこで、私、考えてみたんです。私が私であると、証明する方法を。


 まず、性格ですかね。私の性格は正直、分かりませんでした。暗い時もあるし、明るい時もある。よく、わからないんです。何かきっかけがあるでもなく、ふらふらと、不安定なんです。


 友だちに聞いてみました。そしたら、皆一様に『よくわからないけど…。普通、じゃないかな?』と、同じようなことを答えてくれました。


 普通とは一体何でしょう。普通とは、その人の価値観によって変わるものです。だから、普通は曖昧なんです。平凡も、平均も、とてもつまらないものです。人間、普通なんてなかなかいません。どこかしら、何か違うものがあるものです。勉強ができるとか、スポーツができるとか。おそらく私にはそれが一つもないんです。


 じゃあ、学校では、どんな感じでしょう。


 基本的に中立です。係決めだって、別に、友だちと一緒がいい、とか、絶対こうじゃないとやだとかもないです。本当に、自己主張しないんですね。というより、自己主張って何ですか?


 まあ、いいです。自分からやるなんて、ないです。だから、私は自分から何かを作り出したり、生みだしたり、そういう事が出来る人に憧れました。でも、テレビに出ているような人にはあまり惹かれませんでした。たぶん、かけ離れているからでしょう。


 とにかく、私は何もないです。……あ、そういえば、私には趣味があります。少数派です。でも、最近はよく目立ちますね。オタクってやつをやってます。アニメとか、動画サイトに投稿されている曲を聴いたり、とくにボカロとか、歌い手とか。


 オタクと言うだけでも、空っぽではないじゃないか、という人もいるかもしれません。確かに、そうでしょう。


 ―――でも、私は違うんです。私は、空っぽの心の中に憧れたものを注ぎ込んでいるだけなんです。それで、自分は満足した気になっているのです。そうしないと、あまりの虚無感に押しつぶれそうになるから。


 だから、私はそれらを際限なく注ぎ込みます。それでも、いつまでたっても心の空間は埋まりません。まるで、穴でもあいているかのように。


 そして、私はその穴の正体に気がつきました。それは、『私』です。私だったんです。私がいないから、ふたがなければたまっても、いずれ、蒸発して消えてしまう。器が不完全だったら、そもそも、たまりません。私の場合は、一つ欠けていたんです。心に必要なものが、一つ。それが、『私』だったんです。


 それでも、私は、私だと、証明するものがありません。証明することも出来ません。そもそも、私の事がわからないので、自己主張なんて出来るわけありません。


 ―――だから、私は、自分を作りました。こうありたい、こうだったらいいな、と。


 でも、自分を作ると、今度は私の平凡さに、飽きてしまいました。だから、自分は人とは違いたい、周りの人とは違うようにしたいと、思うようになりました。


 だから、永遠に消えない記録を残したいと思いました。私が、ここにいたという。


 永遠に消えない記録を残すには、ネットは便利です。インターネットという、情報あふれる大海原に何かを残せればと思って、私はこれを書く。


 


 ―――だからこれが、私の存在証明





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