明日、世界が終わります。
初投稿です。かなり読みにくいですが。
朝、目を覚まし階段を降りると、珍しくテレビが付いていた。テレビの中にはアナウンサーがいる。
彼は穏やかな口調でこういった。「明日の23時59分59秒を過ぎると、世界が終わります。」と。
またいつもの終わる終わる詐欺か、そう思い支度を済ませ、学校に向かった。
学校では既に、その話題で持ちきりだった。世界最後の日になにをしたいかとか、世界を終わらせないとか、口々に好きなことを言っていた。そして何より、3分の2ほどの人が学校に来てなかった。あぁ、俺もそうすりゃよかったかな。少し後悔した。まあいい、明日は、休むか。授業は、いつもと違い、討論や、意見交換などが主だった。昼休みに、俺の数少ない友人が話しかけてきた。
「明日1日、なにするんだ?お前。」
「自分のしたいように生きる。したいと思ったことは何でもするさ。」
当たり障りのない、いかにもな答えを返す。彼は、やっぱりか、というふうに頷いた。
周りを見渡すと、いろんな奴がいた。世界の終わりを楽しんでそうなやつ、いままでの人生を後悔してるやつ、ひたすら神頼みをしてるやつ、なにも考えてないやつ。だが、大抵のやつは、明日なにをしようか考えてるようだった。
六時間目のチャイムが鳴る。今日の授業は終わりだ。HRが始まる。明日は自由登校らしい。自由登校と言われて行くようなドM野郎はいるのだろうか。
家に着くと、その日はすぐに寝床についた。たまにはこういうこともしてみたかったんだ。そんなことが、今日は許される日らしい。
気がつくと、朝になっていた。時計を見る。時間は4時25分。かなり早い。そういえば、今日は世界最後の日だったっけな。しなきゃいけないこともないし、したいことも特にない。どうせ世界なんて終わらないだろうけど、カウントダウンでもしようか。いや、気が遠くなりそうだ。残り一時間からでいいかな、やっぱり。普段ならしたいことなんていくらでもあるんだけど、いざ、何でもしていいとなると、したいことなんてなくなる。本当に暇だな、外に出るのも面倒だし、もう一度寝ようか。
再び目をさますと、太陽は、かなり昇っていた。時計を見る。12時を回っていた。そういえば、お腹がすいたな。こんな日ぐらい好きなものを食べるか。そういえば、店ってやってるのかな。そう思いつつ、近くにあるうなぎ屋に行く。ここのうなぎは天然ものらしく、値段もそれ相応だが、美味い。いつもなら、普通はいかないのだが、今日は、金ならいくらでもある。幸運にも店は開いてるみたいだ。さらに嬉しいことに、何と無料で食べれるらしい。無料で、天然のウナギを食える。明日、世界が終わっても何も問題ないな。さて、腹一杯になるまで食ってやる。
こういう時って案外食えないものなんだな。いつもなら10杯は余裕でいけそうなのに、たったの3杯でお腹がいっぱいになった。
本当にすることないんだな。テレビはニュースばかりだし、誰も電話に出ない。友達が少ないってのもあるけど。少し落ち着いてから動こう。それから、あそこに行こう。
日も落ち始めた頃。17時35分。俺はあそこにいた。誰も知らない。俺しか知らない場所。ってわけじゃあないけど、この場所にはそれなりの思い入れがある。せっかくこういう日なんだから有効活用しなくちゃ。そこには、大きな店も、活気あふれる商店街もない。そこにあるのは、広場。そして、少しの屋台。予想通り、人の数も屋台の数もいつもより少ないが、それでいい。いつものようにベンチに腰掛ける。ここは、学校以外で唯一社交的、機械的でない会話をできる場所だ。少なくとも俺にとっては。ここには、友人もいる。……と思う。少し辺りを見渡すとそいつはすぐに見つかった。相手も俺のことを見かけたみたいで、こっちに向かってくる。
そして、
「あと、6時間20分だ。本当に世界が終わるか、賭けをしようじゃないか。」という。
断る義理はない。
「じゃあ、俺は終わらないに賭ける。」
「俺も終わらない方に賭ける。」
「それだと賭けが成立しない。」
「それは困った。」
「他人事みたいに。ここにいる奴ら全員に聞くか。」
「それは無駄だ。同じ言葉が返ってくる。」
「終わるわけない、って?」
「正解。」
何故だろう。むかつく。
「お前さ、本気で思ってる?」
「いや、半々ぐらい。ただ、賭けをするなら終わらないに賭ける方が得だ。」
「確かにそうだ。」
「にしても、最後になるかもしれない日だってのに、余裕なやつが多すぎる。」
「最後になるかもしれない日だからこそ、余裕なんだろ。」
「そういうもんか。」
「あぁ、そういや、あと何時間で今日が終わる?」
「6時間ほど」そいつは時計を見て答える。
「まだまだだな。」
「お前はこれからどうすんだ。」
俺は答える。
「残り1時間、いや1分でいい。そのくらいになったらカウントダウンを始める。」
「暇だな。俺も人のことは言えねえけど」
「お前は何すんだ。」
「何もしねえよ。ただ、星の数を数えてる。」
「馬鹿だ。」
「煩いな。」
「そろそろ、日も沈んでる。憎たらしいほど綺麗な夜空だ。これなら終わっても不思議じゃないな。」
「もう夜か、俺は家に帰る。」
「ここにいればいいじゃないか。」
「それもいいけど。」
「そうか。じゃあ、良い最後を。」
「あぁ、お前もな。」
2人の笑い声が夜空に吸い込まれる。
のんびりしてられないので、急いで帰ることにした。電車もバスも相変わらず動いているが、これらを運転してるのは社畜に違いない。
家に着くと、辺りはすっかり闇に包まれていた。残り1時間。それなのに終わる気配はない。今日も平和に過ぎ去ろうとしている。世界なんて、やっぱり終わらなかったんだ。とりあえず、本でも読もう。
本を読んでいると、時間が経つのが早い。それに、少し眠たくなってくる。いつの間にか、残り1分になっていた。
そうこうしてる間に残り三十秒。
布団に入って、お気に入りの本を何冊が枕の横に置いておく。さっきから眠気がすごい。油断したら寝てしまいそうだ。あと10秒。どうせ終わらないんだろうなあと5秒。あと4、3、2、1。
ほら、やっぱり終わらなかったじゃないk……