5. わたしのなか
でも、知ってるんだ。変わったのはわたしの方だって。
わたしがみんなから置いてきぼりになったんだって。
わたしがおじいちゃんの言うこと聞かないで、おじいちゃんの部屋に入って、勝手に本を触ったから。
だから、みんなに会えなくなっちゃった、って。
だって、あんまりきれいな本だったから。
お母さんが読んでくれた、わたしがいちばん好きだった、勇者の伝説の絵本。
その絵本の、勇者を助けるために天使さんがやってくる絵とそっくりに、窓から光のカーテンがきらきら降りて、紺色の本を照らしていた。
ちょっとだけとおもって、どんな本だろうと気になって、触っちゃいけないって言われてた本を開いたから。
そんな悪い子は、ずっと本を読んでいなさいって。
部屋の外に出たら誰もいなくって、黒いのだけがいっぱいで、なんかいっぱい近づいて来て、来ないでって言ったのにもっと近づいてきて。
部屋にもどって鍵をかけたら扉がドンドン叩かれて、お父さん、お母さんを呼んだらもっとドタドタと音が聞こえて、おじいちゃんのベットの中に潜り込んで、ずっと泣いてた。
夜になって、そっとドアを開けたら廊下が真っ暗で、黒いのもいなかった。
そのあと、真っ暗な中、おじいちゃんたちを探したけど、誰も見つからなかった。
無性に泣きたくなって、我慢できなくて、黒いのが来るってわかってたけど、泣きながらお母さんたちを呼んでたら、また黒いのがきた。
何回も転びながら、元の部屋に戻って、もう誰にも会えないのかなって悲しくて、不安で、怖くてずっとベットの中で泣いてた。
それから、ずっとおじいちゃんの部屋にいる。
部屋にくるのは、手袋さんくらい。
お母さんにも、お父さんにも、おじいちゃんにも会っていない。
だから、ヴァリパラがやって来たとき、言葉にできないくらいうれしかった。
いつもだったら本を読んでいるのに、ヴァリパラとおしゃべりしているのが楽しくてしかたないの。
窓から外の杉林を眺めていることもあるけど、ヴァリパラのお話に出てくる景色のほうが何倍もきれい。
一人で飲むと、つめたい紅茶はおいしくないけど、いっしょに飲むとつめたくてもおいしいわ。
ヴァリパラにもらったろうそくを眺めていると、次に会うのが楽しみになるの。
そう、ヴァリパラにもらったピンクのろうそく。
ところどころに黄色や赤の星がちりばめられていた。
わたしが喜んではしゃいでいたら、たぶんヴァリパラも笑ってたと思う。
わたしのもうひとりの友達も大好き。
ずっとわたしと一緒にいてくれた。
でも、レントゥッカはおしゃべりをしない。
笑うのはわたし一人。
おしゃべりするのもわたしひとり。
だから、いっしょにお話できるヴァリパラが来ると、わたしはとってもうれしかった。
帰るときにはとってもさびしかった。
ヴァリパラの持って来てくれたかわいいろうそくよりも、ヴァリパラとお話できるほうがずっといい。
ううん、おしゃべりできなくてもいいわ。
ヴァリパラに会いたい。
いっしょにお話したい。いっしょにいたいの。
外にいけばヴァリパラに会える。
わたしはヴァリパラを探しにいくんだ。
読んでくださりありがとうございます。