2. 茶色いうさぎさん
図書館は元々は本の収集家だった貴族の館であった。
本は高価で貴重だ。
一冊ずつ手書きで書かれているため数が少なく手間もかかるのだ。
その貴族は本のために質素倹約につとめ、文字が読めなくなっても本の収集をやめなかった。
集めた本の数は王家をしのぐとも言われ、ほんの一部を売るだけで1世帯が一生贅沢に遊んで暮らせるほどであった。
だが、先代の死後、息子たちは膨大な蔵書と、古くはなったがしっかりとしたつくりの、貴族のにしては小振りな館を図書館とすることにしたのだ。
入館料は銀貨2枚。
本の貸し出しは不可であったから、ここは本を読み、または覚え書きに書き写していく、そんな場所であった。
また、そのような経緯でできた図書館のため、いわゆる”いわくつき”な建物ではない。
ないのだが、なにぶん古い館であるゆえ、様々な噂のある館であった。
2、3日おきに茶色いうさぎさんは現れた。
いつも2時頃にやってきて、いっしょにお菓子をたべてどこかに帰っていった。
うさぎさんはときどき外の物を持って来た。
リンゴ、黄色い小さな花、ポプリ、柊の葉っぱ、きれいなロウソク。
それらはアリスをひとしきり楽しませたあと、部屋の住人として少しずつ部屋に彩りを添えた。
ある日、うさぎさんは黒い板と白い石を持って来た。
白い石で黒い板にかりかり文字を書いていく。
ところどころ曲がっていて、すこしばかり汚い字ではあったが、そこには確かに”読める?”と書かれていた。
アリスは目を大きく見開き、歓声をあげながらうさぎさんに抱きついた。
うさぎさんの大きすぎる影は、照れたようにほほのあたりを掻いていた。
アリスはいつしかうさぎさんが来るのが待ち遠しくなっていた。
どこかから物音がすると、本を読むのを中断し、うさぎさんを探すようになった。
うさぎさんも少し早くやってきて、少し遅く帰るようになった。
うさぎさんとアリスはいろいろな話をした。
好きな色、好きなお菓子、好きな花、昨日みた夢、今日読んでいる本、そして、図書館の外の話。
アリスは特に外の人の話を聞きたがった。
おこりんぼトーマスやいたずら好きのカンナ、酔っぱらいジジや学校の先生の話。
特にアリスがお気に入りなのが、酔っぱらいジジの話。
ジジは目の下に大きなできものがあるひげを生やしたおじいさん。
いつもお酒を飲んで酔っぱらって、ドラゴンを倒したとか、妖精と友達になったとか、はたまた王子様に求婚されて急いで逃げたなどとホラをふいてみんなに笑われている。
うさぎさんは黒い板に愉快な話を書いていき、アリスが読んでくすくす笑う。
そんなアリスをレントゥッカは静かに見つめていた。
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