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一日が終わったら

本棟1階西階段横の保健室



 SRが終わってほとんどの人が急いで部活へ向かう。

 残りの人達もゆったり帰宅するのを見送ったら、1日の役目を終えた教室でまず、最初の一呼吸。


 鞄を持って西日のさす2棟4階の教室を出る。

 

 教室すぐ横の西階段を降りたら、2階にある本棟に続く渡り廊下を足早に進む。


  ぱたぱたぱた

 静かになった校舎には自分の足音がよく響く。



 かすかに届く運動部の激しい声や吹奏楽部の演奏。

 少し離れたここで聞く力強い声は、眩しくて正直ちょっと羨ましい。

 なのに校内でしか聞けないこの喧騒が、何だか心地よくもある不思議。

 茜色の外を見ながらそんな風に考えて、ドクドクうるさい心臓を落ち着ける。


 本棟2階の西階段に着いたら踊り場にある鏡の前で止まって、2つ目の一呼吸。

 前髪を撫で制服を整える。


 それまでの早歩きとはうってかわって、音を出さずにじっくりと、時間をかけて階段を降りていく。




 中から見えない様、扉より2歩分手前で最後の一呼吸。

 ゆっくり進んで扉にそっと手を掛ける。


 ガラッと大きな音が出ないよう慎重に。

 あくまで普通の勢いで。

 古いこの引き戸は軽やかには滑らないのに、力が強すぎてもすごい勢いで開いてしまう。

 開けながら加減が出来ないから、最初の力加減で決まる。

 学校の中でどこよりも神経を使う扉。

 だけど、どこよりも開けたい扉。


 よし。


  ガラガラガラ


 あ、ちょっと強すぎた、かも。



 でももう引き返せない。


 声を出そうとして、無意識に息を止めてたことに気付く。


 音なく少しだけ咳払い。

 変な声、出ませんように。





「…こんにちは。先生。」




 よし、成功。





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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして! 目にとまったので読んでみました。 保健室の先生に会う主人公の、とても緊張した様子が詳しく伝わってきました。戸の開け方まで気にしているなんて、緊張しすぎですよ(笑) 続きが…
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