表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『デジタルデトックス・オンライン 〜SNS依存の皆様、強制的に「土」へ還っていただきます〜』  作者: 比呂石 凪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

第12話:水底のバグ・フィックス

浅草寺の本堂地下。そこは隅田川から引き込まれた濁流が唸りを上げる、巨大な水力機関室だった。 「いいかい、ジャンク屋。この『雷神』が止まれば、要塞中の熱気が抜けず、植物どもを呼び寄せるフェロモンを撒き散らすことになる。制限時間は三十分だ」  お登勢の言葉を背に、理久は命綱一本で激流のピットへと降りた。


 ピットの最深部には、巨大な真鍮製のインペラ(羽根車)が鎮座している。だが、その軸受けには、地上では見られない**「半透明の青い藻」**がびっしりと絡みついていた。


「……水中型変異体。光ファイバーを鱗代わりにしやがったか」  理久はバールを構えた。この藻は、水の流れから運動エネルギーを直接「電気」として吸い上げている。まさに生きた発電機だ。


 理久が藻を剥がそうとした瞬間、水面が爆発した。  藻の塊の中から、人間の背骨を模したような節を持つ、蛇状の植物が飛び出す。その先端には、かつての水中カメラがレンズを血走らせた「眼」として埋め込まれていた。


「リリカ! 上のバルブを締めろ! 水位を下げないとこいつに食われる!」


「む、無理だよ! これ、めちゃくちゃ重いもん! ……あ、でも、これって回せばいいだけだよね?」  リリカがハンドルに手をかける。本来、大人三人でも動かない錆びついたバルブが、なぜか彼女が触れた瞬間、抵抗を失ったかのように滑らかに回転し始めた。


「……リリカ?」  理久が驚愕する間もなく、水位が下がり、水中型変異体がコンクリートの底に叩きつけられる。 「シャアアア!」と電子ノイズの悲鳴を上げる怪物に対し、理久は迷わず予備工具の「高圧グリスガン」を向けた。


「デジタルに強いなら、物理的な『粘度』はどうだ!」  超高粘度の工業用グリスが、怪物のレンズと節々に叩き込まれる。微細な隙間を埋められた変異体は、放熱ができずに内部回路がショート。青い火花を散らして沈黙した。


「ふぅ……。お登勢さん、軸受けの清掃完了だ。これでもう一度回るぜ」


 理久が地上へ戻ると、お登勢はインペラではなく、リリカの手を凝視していた。 「……あんた。今、バルブの『固着データ』を無効化したね?」


「え? 私はただ、回しただけだけど……」  リリカは不思議そうに首を傾げる。だが理久には分かった。  デジタルを拒絶するリリカの体質は、逆説的に「物体に付着したデジタルの呪縛バグ」をリセットしているのではないか。


「……九条理久。この娘はあんたが思っている以上に、スカイツリーを落とすための『特効薬』になるかもしれないよ」  お登勢の目が、初めて理久を「取引相手」として認めた。


「合格だ。約束通り、スカイツリーへの最短ルートを教えよう。だが、そこを通るには、うちの『馬』以上の脚――**蒸気駆動の鉄馬バイク**が必要になる」


 お登勢が指差した先。そこには、ガソリンを一切使わず、石炭と水で走るよう改造された、無骨なスチームパンク・バイクが置かれていた。


(第12話 完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ