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4.ベルナデット

「よーっす! 元気してるかー!」

 元気なあいさつと一緒に現れたのは、ベルナデット・ヴォルペ。

 私よりも1つ年上の獣人族の女の子で、狐耳が特徴的な子だ。背が高く顔立ちも良いことから、女性人気も高いらしい。

 私とは違って観光二課の正規職員である。

「あ、ベルちゃんお疲れー。」

「観光二課でイベントやるんだろ? カジノ作ろうぜ!」

「作りませんー。イベントは劇に決定しましたー。」

 ベルは直ぐに賭けをしたがる性格だ。

「ちぇっ。で、台本書いてるのか?」

「そうなの。フィオって結構台本書くのうまいかも?」

「えへへ、褒められた。私は物書きの天才かもしれない!。」

「あまり褒めるなよ。こんな感じで、すぐに付け上がるぞ。」

「ひどいなー。個人的にも割といい線行ってる気がするんだけど!」


「あれ? 劇って司会なんてあったっけ?」

 ベルが台本を覗き込む。

「子供たち向けに、絵本の内容をもとにしてるから状況の説明に司会が居ると役者の口で説明しなくて良くなるのよ。」

「そういうものか。もう少し読んでみるか。」

「今は具体的な台本書きこんでるから、こっちのプロットなら読んでてもいいよ!」

「はいよ。」

 

『平和に過ごしていた王国に悪の魔王が現れ、お姫様をさらってしまいました!』


「って、ちょっと待て! ここの国民向けで『悪の魔王』は流石にダメだろ!」

「あっ!」「忘れてた!」

「お前ら……。」

「よし! 『悪の大王』に直そう! 魔王って言ってない!」

「勇者ジークフリートの時点で倒すの決まってるがな……。」

「勇者の名前も変える!」

「……。まあいいか。」

「ここの施設名も『魔王城』なんですけどね……。」

「というか、悪の大王ってだけじゃ味気ないから、名前をちゃんと付けようぜ。」

「確かにね。どうせなら、大元のジークフリート伝承に従ってファブニールとかはどうかな?」

「おー! リゼットちゃん、それかっこいいね! 悪の大王ファブニールに決定!」

 さっそく、台本の修正に取り掛かった。


 ――


『お姫様をさらわれてとても悲しんだ王様は勇者に「悪の大王ファブニール」を倒し、お姫様を救うように命じました。』

『勇者はそのファブニールの城に向かう途中で、魔物に襲われている人々と出会い、魔物を勇者の聖剣で倒し多くの人を救いました。』

『やがて、ファブニールの城にたどり着いた勇者は、悪の大王ファブニールとの対決に挑みます。』

『お姫様:勇者ジークフリート様来てくれたのですね! 私をファブニールから解放してくだい!』

『ジークフリート:姫様! 私が今助けます!』

『ファブニール:勇者よ、それはどうかな? 貴様に我を倒せるかな?』

『ジークフリート:姫様を捕らえ、多く人々を虐げる悪逆非道の大王ファブニールよ! 貴様は俺が倒す!』

『ファブニール:ふははは! ならば勇者ジークフリートよ、地獄の雷を食らうがよい! イビルサンダー!』

『演出:ファブニールが放った雷の魔法が勇者を襲う。』

『ジークフリート:ぐあー! なんて強力な魔法なんだ。だが、こんなものじゃあ俺は倒れない! 食らうがいい勇者の剣技を!』

『演出:勇者ジークフリートの剣撃の音を出す。』

『悪の大王:ぐっ! なかなかやるな勇者よ! 我が力に屈するがいい!』

『演出:ファブニールが放った雷の魔法が勇者を襲う』

『ジークフリート:ぐあああー!』

『勇者は膝をつくが、不屈の闘志で立ち上がる。』

『ファブニール:なぜその傷でまだ立ち上がれる!?』

『勇者:平和を愛する多くの人々の思い、願い、強い意志が俺を立ち上がらせる! 食らうがいい勇者の一撃を!』

『演出:聖剣から光の斬撃が放たれ、悪の大王を包み込み爆発する』

『悪の大王ファブニールは倒され、お姫様は救われ世界に平和が訪れたのでした。』


 ――


「おー! 確かにこれは熱い展開だ! ってか決戦部分やけに詳しくないか?」

「えへへ、そこはプロットの段階で筆が乗っちゃって、つい細かく書いちゃった!」

「でも確かにこれは、面白いかも」

「でしょー! もっと褒めたまえー。」

「元の『勇者ジークフリートの冒険』が良いからだろー!」

「ベルも『勇者ジークフリートの冒険』知っているの?!」

 リゼットが食いついた。本のことになるとテンションが上がる子だ。

「オレの地元でも結構流行ったんだぜ。小さいころに良く聞かされたよ。」

「ベルちゃんもソルテラ王国出身だっけ?」

「おう、田舎のだけどな。」

「やっぱり、どこでもこの物語は人気なのね!」

「なあ、劇の配役どうするんだ? ジークフリート役はオレがやるぜ!」

「そういえば、ベルは剣術が得意なんだよね?」

「まあな、地元にすげえ強い剣士が居て、習ってたんだ。今でも鍛錬は欠かせないぜ!」

「へー、剣術出来て羨ましいな。」

 私は剣術、弓術どれをそれなりに教えてもらったが芽が出なかった。

「結構スパルタで何回も死にかけたけどな!」

「前言撤回しまーす! でも、私も剣術とかちゃんと出来たら冒険者してみたかったな。」

「ハハ! 剣術が上手くても冒険者が出来るわけじゃないぜ! オレは今の仕事でも十分楽しいよ。」

「えー、私は窓口業務飽きたよー。」

「フィオちゃん、窓口対応上手なのに?」

「それと飽きたのは別ですー! 面白い仕事を続けるために今回の劇を成功させてやる!」

「で、他の役は誰がやるんだ?」


「面白そうな話をしている。ボクも混ぜて。」

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