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3.リゼット

 マルグリットが受付業務をしていたリゼットを呼んできてくれた。

「リゼ、代わりに私が受付やってくるからフィオーレの面倒よろしくね。」

「うん。受付よろしくね、リット。」

 誰の面倒を見るって?

「ありがとうねー。マルちゃん!」

「マルちゃん言うな!」


 この黒髪眼鏡の女の子は、リゼット・カーネリアン。

 私と同い年の人族の女の子で家の事情で、ソルテラ王都からこのアンブルナ属州に移り住んだらしい。

 学校でも同じクラスで、本好きの優等生である。

「観光二課で劇をやるって本当なの?」

「子供たち向けのイベントとして考えたんだけど、我ながらいいアイデアでは?」

「確かに、私たちでもなんとか出来そうな気はするけど、台本はどうするの?」

「それをリゼットちゃんに聞きたかったって訳ですよー。」

「なるほどね。私、物語の本ならたくさん読んだから知っているよ!」

「頼りになります! それで何か子供受けしそうな物語とか、劇の台本とかってない?」

 人に頼るのは私の特技の1つだ。

「そうねー。みんな知っていそうな物語だと『勇者ジークフリートの冒険』かな?」

「あー、学校の図書室でもあった! 確か絵本もあったよね!」

「そうなの! 子供たちも勇者ごっこするくらいには人気だし、ちょうど良いと思うよ。」

「ストーリーも結構シンプルだし、それ劇にアレンジした台本を作るのも難しくなさそう!」

「良かったー! 私も『勇者ジークフリートの冒険』は大好きな物語だから嬉しいな!」

「じゃあ、さっそく台本を書いてみよう! もう少し手伝ってくれる?」

「うん! 喜んで!」

 リゼットは本のことになるとテンションが高くなる。普段は物静かな子である。


 ――


 早速、台本を書き始めようとしたが少し気になることが。

「ねえ、そういえばこの『勇者ジークフリートの冒険』って、ソルテラ王国の勇者の話だよね?」

「実は、それは半分正解で半分ハズレなの。」

「どういうこと?」

「勇者ジークフリートは実は、神歴よりも前の時代の伝承で魔王討伐じゃなくて邪竜退治のお話しなの。」

 ちなみに現在は神歴1000年。

「1000年以上も前? でも、15年前に魔王を倒したのもジークフリートじゃないの?」

「そうなの、15年前に魔王を倒したのもジークフリートだけど、それはソルテラ王国が勇者に付けた呼称で本当の名前は違うのよ。」

「つまりソルテラ王国が古の伝承の勇者にあやかってアンブルナ王国の魔王を倒した勇者に付けたってこと?」

「そんな感じ。実際には、魔王討伐へ向かう際に呼ばれるようなったらしいの。」

「なるほどー。だから半分正解で半分ハズレなのねー。」

「結局のところは、ソルテラ王国が勇者を担ぎ上げるためのプロパガンダとその作戦の一環で作成された本ってこと。」

「そんなこと言っちゃっていいんですかい? 消されたりとかしません……?」

 政治とは怖い世界なのだ。

「もー、フィオたらこれくらい常識の範疇だよー。」

「ま、まあ、私はアンブルナ出身ですのでー。」

「でも、勇者の正体は誰も知らないんだよね。」

「15年前の勇者の方?」

「そう、なんでも凄腕の冒険者を取りたてて勇者にしたって噂だけど、それらしき冒険者は居ないんだー。」

「正体不明だと、偽物とか結構出たりしない?」

「最初は二流の冒険者が売名目的で勇者を騙っていたけど、実力が伴わずにすぐにバレたんだよ。」

「やっぱり出たんだ。」

 冒険者として依頼をこなすのであれば信用は大事だが、ダンジョン攻略をメインにする冒険者なら信頼と名声のどっちもいらないのだ。

「一流の冒険者ってなると信頼、信用、名声が大事だから、一流の冒険者なら名乗りを上げると思うんだけど、結局正体は不明ってわけなの。」

「私ならすぐに名乗り上げちゃいそう。」

「もしかしたら、魔王討伐の実績から貴族に取り立てられたりで冒険者らしく面白い冒険が出来なくなるかもって思ったのかもね。」

「なるほど! それなら納得。冒険者は冒険してことだよ。」

「私はなんでフィオが冒険者になっていないのか不思議だよ。」

「なんと私には、戦いも魔法の才能も、本当に全く全然なかったのでした!」

「もしあったら、冒険者になってたかも?」

「なってるねー。冒険者って絶対面白いよ。子供の頃は絶対冒険者になってやる!って思ってたもん。」

「やっぱり、そうなのね。才能無くても挑戦しそうとは思ってたけど。」

「この前も、孤児院のチビとチャンバラごっこで負けたんだよ……。」

「そ、そう、それは大変ね……。」

「5歳の子でも出来る簡単な魔法も2回に1回失敗するんだ……。」

「私、逆にフィオのことが心配になってきたよ……。」

 私も自分で言って情けなくなってしまった……。

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