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2.マルグリット

 私は魔王城観光二課の窓口裏にある、分所で早速イベントの企画書作成を始めたのだが……。

「ダメだー。全然いい案の思い浮かばないよー。」

 大口叩いた割には、対して面白い案が思い浮かばなかった。

 

「なにやっているのフィオーレ。」

「あ、マルちゃん!」

「マルちゃん言うな!」


 この娘は、マルグリット・ポート。同い年ながらも、私の大先輩であり、魔王城を経営しているポート商会長の娘だ。

 なんでも、商人の修行の一環として観光二課でアルバイトをしているとかなんとか。


「改めて、なにをしてるのかしら? サボってないわよね?」

「いやいや、サボってないですよー。これには、海よりも高く、山よりも深い事情があるんですー。」

 そういいつつ、雛形だけの企画書をマルグリットに見せた。

「山と海が逆でしょ……。どれどれー? イベントの企画書?」

「グレゴリーさんから新しいイベントの企画作成の仕事を引き受けたんだー。」

「って、あんた全然白紙じゃない……。」

「えへへ、面白くてお客さんが来る企画って思うとなんかこうぱっとしたアイデアが出ないんだよねー。」

「こういうときはまずイベントのお客さんについて考えるのが一番よ。」

「そういえばグレゴリーさんも城下町の人にも来てもらえるようにするって言ってた。」

 今回のイベントはその城下町の人を呼び込むためのものだ。

「そうよ。城門前広場に新しくお店を数件と、子供向けの遊技施設と銭湯を作るらしいわ。」

「城門前広場ってのは聞いてたけど、銭湯とかは聞いてなかったなー。いいじゃん温泉!」

「うふふ、地底湖温泉の延線工事はすでに着工中よ。これは私も楽しみだわ!」

「え、マルグリットって地底湖温泉入り放題じゃないの?!」

 地底湖温泉も例にもれず入場料が高く、私は利用したことがない。

「そんな訳ないじゃない! 私は親のコネでどうこうするのはあまり好きじゃないのよ。」

「その割には、情報はちゃっかり仕入れてるじゃないですかー。」

「うっ……。ちょっと痛いところ突いてくるわね。夕食のときにどうしても聞かされちゃうのよ。」

 マルグリットは変なところでこだわる性格なようで、観光課のアルバイトもしっかり面接を受けて採用されたらしい。

「って話が脱線したわね。要するにどのお客さんに向けてイベントを企画するのかって話よ。」

「それなら、今度作られるお店の種類も確認して、具体的なお客さんのターゲットを考えないと。」

「ふふふ、私はもうその目星がついているわ!」

「お父さんに聞いたの?」

「違うわよ!」

「ごめん、ごめん、冗談だって!」

「まあいいわ、ずばり親子連れ家族よ!」

「ああ、家族かー。」


 私は魔族国家アンブルナとソルテラ王国の戦いで、両親を亡くし孤児院で育った。別に私たちの年の子には、そこまで珍しいものではないし、両親の記憶も無いころの話だし、特別さみしいとかじゃない。ただ、両親というものの感覚が少し違うんじゃないかなと思ってしまう。


「あっ、ごめん……。別にそういうつもりじゃなかったのよ。」

「んー? 別に気にしてはないよー。ちょっと考え事しただけ。」

「商人として相手の気持ちをもう少し考えられないとダメね……。」

「だから、大丈夫だってー。新しいお客さんに子供も含まれるのなら、そっちを軸に考えた方が良いかなー?」

「確かに、悪くない考えだって私も思うわ。子供にアピールして親に連れて行ってもらう。そこから家族層をうまく取り込む。うん、悪くないわね!」

「お、商人のお墨付きでました? いやー、私にも商人の才能があるかもなー!」

「調子に乗らないの!」

 

「子供向けのイベントとなると、孤児院のチビたちも呼べるかなー。」

「それは内容次第ね。お客さんのイベントの参加自体にお金がかからないものなら大丈夫じゃないかしら?」

「なるほど。となると、くじ引きとか射的みたいな祭りでの遊びは微妙かな。」

「そうね、イベントの参加自体は無料にしたほうが今回の客層的にもよさそうね。そういえば、予算はいくらなのかしら?」

「10万ルーメだって。グレゴリーさんが言ってたよ。私の1か月のバイト代より多い……。」

 学生だとそもそも長時間働けない為、どうしても給与は少ないのだ。

「あんたのバイト代はいいとして。」

「よくないよ!」

「……いいとして。10万ルーメだと、あまり派手なことはできないわね。」

「逆に、予算余らせたら私の懐に入ってこない?」

「それ横領だから!」

「ぐぬぬ……。」

「ある程度、予算を使い過ぎず子供たちに楽しんでもらえる案ねー。」

「あ、いいの思いついた。」

「あら何かしら?」

「ふふふ! ずばり劇よ!」

 幼いころにこの街にも劇団が訪れ、無料公演をしてくれたことがあったことを思い出した。


「ちょっと、さっきの私のマネしてない?」

「あ、ばれた?」

「あんたの口調じゃないわよ。」

「劇の台本どうしようかな? リゼットちゃんなら、本をよく読んでるし、詳しいかも?」

「いいんじゃない? 私ちょっと呼んでくるわね。」

「ありがとう! マルちゃん!」

「もう!」

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